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Fare la nina na/Christmas Music of the Italian Baroque
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Amaryllis Dieltiens(Sop)
Capriola Di Gioia
AEOLUS/AE-10073(hybrid SACD)




タイトル通り、「クリスマス音楽」という範疇のアルバムで、去年の11月にはリリースされていたものが、日本に入って来たのは春のお彼岸も過ぎた頃になってしまいました。まあ、クリスマスなんて毎年必ずやってくるものですから、今年のクリスマス・アイテムだと思えばいいのだ、などとひがんでみたくなります。
「ロ短調」「ヨハネ」で耳にしていたベルギーのソプラノ、アマリリス・ディールティエンスは、ただものではないと思っていたら、いつの間にかこんな風に自分のソロ・チームを立ち上げてブレイクしていました。すでにこのレーベルからも何枚かのアルバムをリリースしている「カプリオーラ・ディ・ジョイア」というのが、そのチームです。この「喜びの跳躍」という名前のバロック期の作品を演奏するためのユニットは、2007年にディールティエンスとオルガン、チェンバロ奏者のバート・ネセンスの二人によって創設されています。このソプラノと通奏低音が中心になって、その周りのミュージシャンを適宜加え、様々な編成のレパートリーに対応できるようになっています。こんな感じのユニットというと、少し前のイギリスの団体、「コンソート・オブ・ミュージック」を思い浮かべます。あちらもコアメンバーはエマ・カークビーとアンソニー・ルーリーというソプラノと低音(リュート)のペア、プライベートでもパートナーでしたね。こちらは、どうなのでしょう。
このアルバムのタイトルは「ニンナ・ナンナを歌いましょう」というもの、生まれたばかりの幼子イエスを寝かしつけるときの聖母マリアが歌った子守唄「ニンナ・ナンナ」にちなんだ作品が集められています。このジャケットは、まさにそんな情景を描いたものなのでしょうが、その裏側にあるディールティエンスのアー写を見ると、まさにその聖母と瓜二つ、という感じがしませんか?
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以前よりふくよかになった面立ちには、慈愛深さのオーラさえ漂ってはいないでしょうか。こんな「マリア様」に抱かれて、耳元で子守唄を歌ってもらったりしたら、さぞや幸せなことでしょう。
演奏の方も、いっそう磨きがかかって来ています。こういうジャンルのソプラノでは、どうしてもさっきのカークビーとの比較になってしまうのは仕方のないことですが、ディールティエンスののびのびとしたその声には、そのピリオド唱法の先達にはない華やかさと、そしてほのかな色気までもが感じられます。さらに、低音でのちょっとすごみのあるダイナミックな歌い方などは、とても新鮮な驚きを与えてくれます。
そんな、表現力の幅の広さが端的に味わえるのが、タルキーニョ・メールラの「子守歌による宗教的カンツォネッタ『さあ、おやすみ』」でしょう。低音のリコーダーの2音だけの単調なフレーズによるワン・コードの上に展開される一種の変奏曲で、静かな部分からダイナミックな部分まで、それぞれに異なる表現が現れて、魅了されます。ここでのリコーダーはちょっと変わった使い方でしたが、他の曲では本来の細かい音符で明るい色付けを行う技巧的な役割も存分に味わえます。そのメンバーの一人は、ヘレヴェッヘの「コンチェルト・ヴォカーレ」の常連、コーエン・ディールティエンスですが、この人はアマリリスの関係者なのでしょうか。
このアルバムは録音もとても素晴らしく、まさに、SACDならではの繊細で伸びのあるサウンドで楽しませてくれます。出色は、ネセンスのチェンバロ・ソロによる、ドメニコ・フランツァローリの「祝福されたクリスマスの夜のためのパストラーレ」でしょうか。この絶妙な音色と肌触りは、決してCDレイヤーでは味わうことはできません。
卓越した録音による、今やバロック・ソプラノのトップに躍り出たディールティエンスの歌う暖かなクリスマス・ソング、やはりこれは、外の寒さを思いながら聴きたいものです。

SACD Artwork © AEOLUS
by jurassic_oyaji | 2014-04-10 20:21 | 歌曲 | Comments(0)