Christoph Mac-Carty/
Dekoor Close Harmony
HÄNSSLER/CD 94.701
合唱コンクールのシーズン真っただ中ですね。日本で「合唱コンクール」と言えば、たいがい日本合唱連盟と朝日新聞が主催するもののことなのでしょうが、同じ時期に
NHKが主催する「
Nコン」も行われ、両方に出場する団体などもいたりしますから、ちょっとややこしくなってしまいます。しかし、どちらのコンクールも、朝日新聞といい、
NHKといい、全く別の意味での問題を抱えた組織のお世話になっているのですから、なんだか心配になってきますね。
世界に目を向けると、「
Interkultur」という組織が、全世界のアマチュア合唱団を集めて大規模なコンテストなどを行っているようですね。そんなコンテストで優勝した合唱団に、
CDを録音させて全世界で聴いてもらおうというプロジェクトが、「
The Choir Project」というもの、この
HÄNSSLERレーベルがそれに協力して
CDをリリースすることになったのだそうです。その第1弾として、2枚の
CDが紹介されました。まずは、このオランダの団体、「
Dokoor Close Harmony」というところを聴いてみることにしましょう。
本当は、この名前をきちんと日本語で表記すればいいのでしょうが、オランダとか北欧の固有名詞の読み方はかなり不思議ですから、これを正確に発音する自信はありません。「クロース・ハーモニー」は普通の合唱用語ですが。
ですから、「
DCH」と頭文字を並べるのが、最も無難で姑息なやり方でしょう。ダイエット食品会社ではありませんよ(それは「
DHC」)。この合唱団は、オランダのユトレヒト大学の学生による30人ほどの合唱団です。日本だと「〇〇大学混声合唱団」みたいな言い方になるのでしょうね。創立されたのは
1985年ですが、その時からもっぱらジャズやゴスペルなどを中心に演奏する団体でした。もちろん学生ですから毎年メンバーは入れ替わりますが、初代の指揮者ヨハン・ローゼは長い時間をかけてハイレベルの合唱団に育て上げました。
そして、
2008年からは、クリストフ・マカーティが指揮者として雇われます。
1969年生まれのマカーティは、ジャズ・ピアニストとして活躍していましたが、
2005年から合唱の指揮も始めるようになったのだとか。彼によって
DCHはさらに飛躍的にレベルアップがなされました。
この「ご褒美」の
CDは、
2011年9月と
2013年6月の2回に分けて録音されています。ですから、当然この間にはメンバーが変わっているはずですが、そんな違いは全く感じられない、いずれも素晴らしい演奏を聴くことが出来ます。彼らのレパートリーはジャズが基本で、その上にゴスペルや、さらにはヒップホップまでと幅広いものになっているようですが、その前にまず「合唱」としてのクラシカルなトレーニングがしっかりなされているように感じられます。文字通り「クロース・ハーモニー」の一点の曇りもない見事な響きは、「普通の」合唱団よりもしっかりしたものをもっているのではないでしょうか。そして、その上に、今度はあくまで「ジャズ」や「ソウル」のテイストをふんだんに漂わせたソロが加わります。このソリストたちの見事な歌い方は、とても「大学生」が「趣味」でやっているとは思えないほどの、「プロフェッショナル」なものを感じることが出来ます。これは恐るべきことです。
演奏されている曲は、ほとんど知らないものばかりですが、その見事なハーモニーとグルーヴ感には圧倒されてしまいます。そんな中で有名なディジー・ガレスピーとフランク・パパレリの「チュニジアの夜」などは、指揮者のマカーティ自身のアレンジも冴えわたって、まさに感動的です。彼のピアノ・ソロも素敵。
DCHは「ニューヨーク・ヴォイセズ」のダーモン・ミーダーとも交流があるようで、彼が書いた「
Love Psalm」という曲がここで「世界初録音」されています。タイトル通りのしっとりとした「愛の聖歌」が、リズミカルな曲の多いアルバムの中でひと時の安らぎを与えてくれています。
CD Artwork c hänssler CLASSIC im SCM-Verlag GmbH & Co.KG