The Captains
東芝EMI/TOCT-4920「最後のグループサウンズ」というサブタイトルで往年のグループサウンズの世界を今の世に再現して見せた仙台のバンド「ザ・キャプテンズ」が、このほどついにメジャー・デビューを果たし、あの東芝EMIから、初マキシシングルをリリースしました。この会社の国内盤、特にポップス部門では、かなり長い間例の「CCCD」にこだわっていたものですが、これはノーマルなCDになっていますから、やっと、この問題の多いフォーマットを見限ることが出来るようになったのでしょうか。それはともかく、数年前からインディーズでは活動していたこのバンド、地元では確かなファン層を獲得していましたが、晴れて全国のリスナーの前に姿をあらわすことになったわけです。それがCCCDではないノーマル盤だったのは、何よりのことです。
グループサウンズ、略してGSとは、車に必要な燃料を販売するところ(それは「
ガソリンスタンド」)、なわけはなく、
1960年代に巻き起こった一大バンドブームのことです。ブームのさなかに結成されたバンドは数知れず、中には「ザ・モップス」などという、コアなバンドもありましたが(「月光仮面」好きでした)、メインは何と言っても「ザ・スパイダーズ」、「ザ・タイガース」に代表される、分かりやすいサウンドとファッショナブルな外観を持ったグループでした。今ではとても信じられないかもしれませんが、「ザ・スパイダーズ」のメイン・ヴォーカルだった堺正章は、ミリタリー・ルックに長髪という、まるで王子様のようなファッションで、紛れもない「ヴィジュアル系」タレントとしての魅力を振りまいていたのです。
今年は、その「最初の」GSである「ザ・スパイダーズ」が結成されて
40周年にあたるのだとか。半世紀近くの時を経て忽然と現れた現代のGSは、やはりミリタリー・ルックに身を固めていました。このシングルのタイトル「失神天国」も、「失神」を売り物にしていた「オックス」というGSへのオマージュであることは明らかです(メンバーの赤松愛が歌い出すと、聴いていた少女たちが実際に失神したということです)。曲自体は「どうにも、どうにも、どうにも止まらない」という、山本リンダあたりの持ち歌からの引用がちょっと目障りですが、それに続くあくまでストレートな曲調と歌詞には、思わず引き込まれてしまいます。そして、曲を書き、自ら歌っている傷彦(きずひこ)クンの、ちょっと鼻に詰まったヴォーカル、随所に挿入されたクサいセリフには、「失神」とまでは行かないまでも、何か怪しげな魅力が伴っているのも事実です。
今の音楽シーンに蔓延しているのは、全く日本人の感性とはかけ離れたところにあるヒップ・ホップ系、あのようなガサツで暴力的な音楽に付き合わされるのは苦痛でしかないと思っている人は多いはずです。そこに現れたのが、胡散臭いところはあるものの、私たちの琴線には間違いなく触れるであろう正当派GS、マイナーを基調にした懐かしいコード進行と、限りなくチープなエレキサウンドで怪しく迫られれば、多くの人の共感を呼ぶことは間違いありません。それがどこまで浸透するのか、見守っていきたいものです。