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REICH/Music for 18 Musicians
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Brad Lubman/
Ensemble Signal
HARMONIA MUNDI/HMU 907608




ライヒの「18人の音楽家のための音楽」の最新録音です。とは言っても、実際に録音されたのは2011年の3月9日から12日までの間、ということはあの「東日本大震災」が起きたまさにその時に録音されていたということになりますから、もう「大昔」です。もしかしたら、こういう音楽をリリースするのはためらわれるような何かが、当時はあったのでしょうか。
今ではライヒの古典的な「名曲」となったこの作品は、文字通り「18人」の演奏家が楽譜には指定されています。その内訳は2本のクラリネット(バス・クラリネット持ち替え)、4台のピアノ、6人の打楽器(3台のマリンバ、2台のシロフォン、1台のビブラフォン)、ヴァイオリン、チェロ、4人の女声(ソプラノ3人、アルト1人)です。これ以外にも、打楽器奏者はマラカスを演奏します。そんな演奏家たちがステージで並んでいるところをデザインしたのが、このアルバムのジャケットです。確かに18人分の「丸い頭」があって、ピアノが4台、木琴らしいものが6台あります。あとは、クラリネットの人は「棒」をくわえていますし、ヴァイオリンとチェロが持っている弓によって区別されているのも、芸が細かいですね。もちろん、ただ手を広げているだけの人はヴォーカルです。
ところが、今回のCDの「音楽家」の数を数えてみると、「アンサンブル・シグナル」というアメリカの若い演奏家が集まって2008年に設立された団体のメンバーが、楽器を演奏する人だけだと16人なので、エキストラで他の団体から応援が加わっているのですが、それが4人もいるのですよ。合計で「20人」ですね。ちょっと多すぎません?
ライヒ自身が加わった最初の録音(ECM/1976年)では、もちろん演奏家は18人しかいません。ところが、メンバー表を見てみるとヴァイオリン、チェロ、クラリネット奏者以外の人たちは、それぞれ別の楽器を演奏したりしているのですね。ライヒ自身もピアノとマリンバを演奏しています。なんと、ヴォーカルの人までピアノに「持ち替え」ていますよ。ということは、このあたりの楽器は、最初から最後まで同じ人が演奏するのではなく、途中で他の人に替わったりするということになりますね。確かに、ピアノなどはほぼ1時間にわたって延々と同じリズムで鍵盤をたたき続けているのでしょうから、そこで緊張を失って演奏が雑になってしまうことを避けるために、適宜「ローテーション」を行うのは必要なことかもしれません。それを、もっと「楽に」するために、もう2人加えたってかまわないじゃないか、という、今回の陣容なのでしょうね。休んでいる間はローションを塗って疲れを取ります。
余談ですが、そのECM盤は、当然初出はLPでしたが、CDの黎明期にいち早くCD化されています。ところが、この頃のCDはろくにマスタリングも行われていなかったものですから、この曲1曲が「トラック1」になっていました。一応連続して演奏されるようにはなっていますが、明らかに14の部分に分かれている音楽ですから、これは困ったものです。たしか、2003年に別の団体が演奏したものがHUNGAROTONからリリースされた時も、同じような途中で切れ目が入っていないマスタリングでしたね。しかし、今ではそのECM盤もリマスタリングが施されて、きちんと14のトラックに分かれています。もちろん、今回のCDもこの形、今までは漠然とビブラフォンのパターンで「セクション」が変わっていたのを認識していたのですが、これでその切れ目がはっきり目で見て分かるようになりました。
そうなってくると、トラック・ナンバーが変わったのを見て、それが新たな「フレーズ」の始まりだと分かり、それがどんどん「成長」していくさまを、つぶさに眺めることが出来るようになります。ここでは、そんな変わり目での演奏家たちの「仕切り直し」の気迫までがまざまざと伝わってくるという、新鮮な体験が味わえます。

CD Artwork © Harmonia Mundi USA
by jurassic_oyaji | 2015-06-18 20:23 | 現代音楽 | Comments(0)