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HAYDN/Symphonies Nos. 31, 70 & 101
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Robin Ticciati/
Scottish Chamber Orchestra
LINN/CKD 500(hybrid SACD)




ティチアーティとスコットランド室内管弦楽団といえば、こちらのように、もっぱら大編成のオーケストラで普通は演奏されるようなレパートリーの印象が強いのですが、今回は室内オケの原点ともいえるハイドンの交響曲を取り上げてくらました。
なんせ100曲以上の「交響曲」を作ったハイドンですから、どの曲を選んだのか、という点は非常に気になります。ここでのティチアーティのチョイスは、「31番」、「70番」、「101番」という、いずれも「ニ長調」で作られた3曲でした。もちろん、そんな調性上の共通項はありますが、この3曲は作られた年代からしても30年近くのスパンがありますから、同じような表情で迫ってくるわけはありません。というより、ティチアーティは良くもこんなにキャラクターの異なるものを持ってきたな、と驚くような、それぞれの「顔」が全く異なるラインナップとなっていました。
最初の1765年に作られた「31番」には「ホルン信号」というニックネームが付けられています。文字通り、ホルンが大々的にフィーチャーされた曲です。そのために、ここではホルンは4本使われています。なんでも、ハイドンの交響曲の中ではこのようにホルンが4本入っている曲は全部で4曲あるのだそうです。よく、「ベートーヴェンは、交響曲第3番でそれまでは2本しか使われていなかったホルンを、初めて3本使った」などと言われていますが、それは真っ赤なウソだったのですね。
このホルンの応酬はものすごいもので、曲の最初から最後までホルンが高らかに鳴り響いている、という印象があります。ホルンが好きな人にはたまらないでしょうね。焼いてよし、鍋でもよし(それは「ホルモン」)。
この曲は構成も後のきっちりした交響曲とは違っていて、最後の楽章がとてもゆったりとした変奏曲になっています。その変奏の楽しいこと、オーケストラの中の楽器がかわるがわる登場して、収拾がつかなくなるほどです。何しろ、コントラバスのソロなんかもあるんですからね。そして最後はホルンのアンサンブルがプレストで乱入して、華々しく終わる、という仕掛けです。
次の「70番」は1779年ごろに完成、なにかとてもコンパクトな感じのする、かわいらしい交響曲です。演奏時間もこの中では最も短くなっています。
そして、最後は1794年ごろに作られた有名な「時計」というニックネームの付いた「101番」です。最初の楽章の冒頭に堂々とした序奏が付くなど、まさに後の「交響曲」の規範たりうるフォルムを持っています。ここで注目したいのは、名前の由来となった、第2楽章でまるで時計のように正確にリズムを刻んでいる楽器がファゴットだということです。それまでの作品では、ファゴットはもっぱら通奏低音としてほかの低音楽器とユニゾンで演奏されるという役目しかなかったものが、ここに来てほかの木管楽器と同様にソロや独立したアンサンブルの一部として活躍するようになっていたことが分かります。
そんな、ハイドンの交響曲の「変化」をつぶさに味わうことのできるこのSACDでは、ホルンやトランペットにはバルブのないものが使われていますし、ティンパニも現代の楽器とは違う鋭角的な音を出すものになっています。もちろん、弦楽器も極力ビブラートを抑えて、そんな「ピリオド楽器」を盛り立てています。
ただ、フルートやオーボエは、モダン楽器をそのまま使っているのでしょう。例えばどの曲でも軽快で技巧的なソロがたくさん出てくるフルートは、完璧な演奏で酔わせてくれてはいるのですが、それがあまりに洗練されていてちょっとほかの楽器とは違和感があるように感じられてしまいます。ちょっと贅沢な不満ですね。せめてもの策としておそらくフルートは木管の楽器が使われているようですが、それはSACDレイヤーでなければ気が付かないのではないでしょうか。

SACD Artwork © Linn Records
by jurassic_oyaji | 2015-08-18 23:28 | オーケストラ | Comments(0)