おやぢの部屋2
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Great Britain
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Marcus Creed/
SWR Vokalensemble Stuttgart
SWR MUSIC/CD93.342




おなじみ、マルクス・クリード(イギリス人なので、もしかしたら「マーカス・クリード」?)指揮の南西ドイツ放送ヴォーカル・アンサンブルのシリーズです。ある作曲家をテーマにしてその周辺の人も含めたアルバムなどを多数リリースしていましたが、最近ではこんな風に国別のセレクションのシリーズを始めたようです。いずれも、すべてのアイテムに共通する縦に一本筋が入っただけという非常にシンプルなジャケットのデザインが、逆にとても印象的です。
ところが、今まではその縦線に交差する形でレーベルのロゴマークがデザインされていたのですが、このCDではなんだかちょっと様子が変わってとてもすっきりしたような気がします。それは、ロゴマークの長さが「短く」なったせいです。以前は左のように「SWR>>music」というロゴの後に「hänssler CLASSICS」という黄色のバックグラウンドに囲まれたロゴがあったものが、これにはなくなっているのです。つまり、レーベルから「ヘンスラー」という文字が消えているのですよ。これは変すらあ
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コピーライトを見ると、そこからも「ヘンスラー」の文字は消え、代わりに「ナクソス・ドイツ・ミュージック&ビデオ販売会社」という名前がありました。そういうことだったのですね。南西ドイツ放送の管理下にあるオーケストラや合唱団の音源を販売していた「SWRメディア・サービス」という会社は、今までその流通を「ヘンスラー」を通じて行っていたのですが、今年になってナクソスの傘下に入ってしまったようですね。「ヘンスラー」自体も、かつては楽譜の出版が主体の会社で、モーツァルトの「レクイエム」の「レヴィン版」を出したりしていたものが、いつの間にかそれはCARUSに版権が移っていましたから、どうなっているのでしょう。というか、ナクソスはそういう重要なレーベル(フィンランドのONDINEとか)を次々と手中に収めて、さらにビッグになっていくのでしょうね。
レーベルの持ち主が変わっても、クリードたちの斬新な企画に変わりはありません。今回も「合唱大国」と言われているイギリスの作曲家の中でも、例えばジョン・ラッターとかボブ・チルコットといったいかにもなチョイスは慎重に避けた上での、とても魅力的なラインナップを揃えてきました。
最後に収められているのが、かつてのイギリス音楽界の重鎮ベンジャミン・ブリテンの「聖と俗」という、中世のテキストを素材にして作られ未完の遺作となった小粋な小曲集ですが、その「聖」と「俗」という二面性が、この、全曲ア・カペラで歌われているアルバム全体の隠れテーマになっているのではないでしょうか。おそらくそれを意識したのでしょう、時には録音会場を変えてまで(単なる偶然なのかもしれませんが)、そのキャラクターを強調しているのでは、という気がしてなりません。
その「聖」の面が強調されているのが、ジェームズ・マクミランとジョン・タヴナーです。この二人の作品だけは、放送局のスタジオではなく、残響の豊かな教会で録音されています。マクミランの「アレルヤ」は、13声部の合唱がひたすら「アレルヤ」というテキストだけで、まるでタリスの40声部のモテット「Spem in alium」のような壮大な世界を築き上げるという作品です。そしてタヴナーの「シューオン賛歌」は、イスラムのスーフィズムや聖書の「雅歌」などからの引用も加えて、怪しく迫ります。こちらも、最後のクラスターと教会の残響がその怪しさをさらに際立たせます。
「俗」のサイドからは、ピーター・マックスウェル・デイヴィースの「Corpus Christi with Cat and Dog」というシュールなタイトルの、テキストの面白さでは群を抜く、まさに「ごった煮」といった感じの作品と、ジョナサン・ハーヴェイの「How could the soul not take flight」という、こちらは音楽的な面白さ(擬音、グリッサンド・・・)をとことん追求した作品が、言葉と音の明晰さを生かしたスタジオ録音で聴かせます。

CD Artwork © Naxos Deutschland Musik & Video Vertriebs-GmbH
by jurassic_oyaji | 2015-11-07 20:38 | 合唱 | Comments(0)