おやぢの部屋2
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CHILCOTT/The Angry Planet
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David Hill/
BBC Singers, The Bach Choir, London Youth Choir
Finchley Children's Music Group, The Young Singers
SIGNUM/SIGCD422




人気作曲家、ボブ・チルコットの最新作が収められたアルバムです。一応3つの作品が演奏されていますが、そのトータルの演奏時間が80分27秒という、1枚のCDに入れるには微妙なタイミングなので、2枚組になってしまいました。世の中にはもっと演奏時間の長いCDもあるのに(最長は82分26秒)、あえて値段を上げてまで2枚組にしたのはなぜなのでしょう。しかし、ここに参加している合唱団は非常に人数が多くなっています。団体は全部で5つ、人数にして300人もいますから、その人たちのお弁当代の足しにでもしようと、単価を上げたんかもしれませんね。
確かに、この3つの作品には共通点があります。いずれも委嘱された時には「若い」合唱団が参加することが想定されていたこと、そして、テキストを書いたのは、最近のチルコットのパートナーである詩人のチャールズ・ベネットだということです。このベネットの詩は、非常にわかりやすい言葉で深い情感を表現しているような印象がありますが、そのあたりがチルコットの作る音楽とうまい具合にマッチしているのでしょう。
そんな、テキストの面白さが見られるのが、2013年にウースターで開催された若い人たちの合唱団のフェスティバルのために作られた「世界を変えた5つの日」です。なんとも大袈裟なタイトルですが、それぞれ「1455年3月29日木曜日 印刷術の発明」、「1834年金曜日 奴隷解放」、「1903年12月14日月曜日 最初の有人動力飛行機」、「1928年9月28日金曜日 ペニシリンの発見」、「1961年4月12日 水曜日 最初の有人宇宙飛行」と、一風変わった歴史観が見られるチョイスです。ただ、ライト兄弟が初めて飛行機を飛ばしたのは12月17日のはずですがね。
ここでは、このアルバムのメイン・アーティストであるBBCシンガーズとフィンチリー・チルドレンズ・ミュージック・グループという児童合唱団が歌っていますが、子供たちが加わるのは5曲のうちの「印刷術」、「奴隷解放」、「有人宇宙飛行」の3曲だけです。そこでは児童合唱(アッパー・ヴォイス)は成人のソプラノ・パートと一緒に歌うのではなく、単独で別のパートとして用意されています。それは、掛け合いのような形ではっきりその存在感を発揮、それぞれの曲の個性を作り上げているのです。「奴隷解放」では、その手法で2番から児童合唱が入ってきますが、美しいメロディと「ほんの少しの言葉が、人々を自由にする」という歌詞とがあいまって、感動を誘います。
次の、やはり2013年にモーダレン・カレッジ合唱団のために作られた「春の奇跡」は、本来は高校生ぐらいの「若い」人のために作られたものですが、ここではBBCシンガーズだけで歌われています。自然の神秘を水の流れに託して歌うという、イギリス版「水のいのち」、チルコットのもはやルーティンともいえる卓越したキャッチーな手法が冴えわたります。5つの部分が切れ目なく演奏され、時折グロッケンや小太鼓のアクセントが入って、とても起伏にとんだ曲になっています。ここでも、2曲目の「The Souce of The Spring」などは、信じられないほどの美しさを持っています。
そして、最後は、ここで指揮をしているデイヴィッド・ヒルの委嘱で2011年に作られ、2012年の「BBCプロムス」で初演された「アングリー・プラネット」です。ここでは、全ての合唱団が加わって、壮大なサウンドを披露してくれます。4つの楽章に分かれた大曲ですが、次から次へと性格の異なる部分が現れて、退屈することはありません。ここでも、やはり児童合唱はそれだけで一つのパートとして、とても際立つような作り方をされています。タイトルからも分かるように、環境問題をテーマとしたもの、チルコットにしては珍しいトーン・クラスターのようなものまで登場して、シリアスな一面も見せています。子供たちが鳥のさえずりを模倣しているのが、かわいいですね。

CD Artwork c Signum Records
by jurassic_oyaji | 2015-11-15 21:44 | 合唱 | Comments(2)
Commented by Hippo at 2016-01-20 23:26 x
こんばんは。

自分は合唱曲はあまり聞かないのですが、この記事を読んで聴きたくなりました。ちょっと聴いただけですが、良い感じです、ゆっくり楽しませてもらいます。

ところで、
>ライト兄弟が初めて飛行機を飛ばしたのは11月17日のはず

初飛行は12月17日ですね。
曲名の「1903年12月14日月曜日 最初の有人動力飛行機」は、ライトフライヤー号を飛ばそうとした最初の日が、14日。
操縦ミスで数メートル飛んだだけで墜落、修理して17日の再挑戦で成功します。
ライトフライヤー号初挑戦の日と言うことで14日を取ったののかもしれませんね。(詩の方ちゃんと読んでみないと・・・)

良いCDの紹介、これからも楽しみにしています。
Commented by jurassic_oyaji at 2016-01-21 08:02
Hippoさん、いつもありがとうございます。
「11月」はミスタイプでした。ご指摘ありがとうございました。