おやぢの部屋2
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FINGERGULL/In festo susceptionis sanguinis
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Anne Kleivset/
Scola Sanctae Sunnivae
2L/2L-114-SACD(SACD)




このレーベルの名前の由来がやっと分かりました。「社名」としてクレジットされているのが「Lindberg Lyd」というものなので、それの頭文字が「LL」ですから、「2L」だというのはすぐに分かります。しかし、最初の「Lindberg」が、エンジニアで創設者でもあるMorten Lindbergさんの名前ですから、もう一つの「Lyd」はおそらく共同経営者の名前なのだろうと思ったのですが、インレイやブックレットを隅々まで探しても「Lyd」さんという名前の人はどこにも載っていませんでした。でも、たまたまネットの翻訳機能が世界中の言語と対応しているのを知って、この単語をノルウェー語から日本語に翻訳してもらったら、それは「オーディオ」だ、と表示されましたよ。なあんだ、という感じですね。「2L」は「リンドベリ・オーディオ」という、とてもベタな社名の略語だったのです。
そんな風に社名に「オーディオ」という文字を入れるぐらいですから、このレーベルの音に対するこだわりはハンパではありません。今では最高の録音フォーマットとして多くの人に認知されているDXDで録音された商品を販売したのは、おそらくここが初めてでしょうし、何よりもリンドベリをはじめとするエンジニア陣の耳の良さは群を抜いています。
今回の録音を担当したのは、ベアトリス・ヨハネセンという人。聞いたことのない名前だったので、これまでのアルバムを見てみたら、確かに「Recording Technician」というクレジットで、バランス・エンジニアのリンドベリの下にありました。さらに、彼らが使っている「Pyramix」というDAWのメーカーのサイトには、この二人の写真がありました。
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手前がリンドベリ、奥に座っているのが、ヨハネセン嬢です。かわいいですね。こんな感じで、今まではアシスタントとしてリンドベリの下で修行していた彼女が、晴れてここで独り立ちした、ということなのでしょうか。ここで聴ける澄み切った拡がりの中にある確かな質感は、まさに2Lサウンドの特徴そのものです。
ここで、彼女が録音していたのは、こんな感じのおばちゃんたちです。
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スコラ・サンクテ・スンニヴェというこの女声合唱団は、以前こちらで聴いたことがありました。基本的に単旋律の中世あたりの聖歌を歌うことを専門にしている合唱団、と理解できるのでしょうから、こんなガウンのようなものをまとっているのでしょうが、この押しの強さはほとんど「中世の魔女」の集団といった感じですね。ところが、前回のアルバムもそうでしたが、この時代の歌にはあるまじきとても透明な歌声には驚いてしまいます。というか、こんな写真は見たくありませんでした。
ここで彼女たちが歌っているのは、「指の黄金~主の聖血の祝日」という、13世紀頃に作られた聖歌です。「聖血」というのは、キリストが十字架にかけられた時に脇の下を槍で刺されて流した血のことだそうです。まずは消毒して(それは「清潔」)。その槍は「聖槍」、その血を受け止めた杯が「聖杯」と呼ばれることは、ワーグナーの「パルジファル」が好きな方にはおなじみですが、「聖血」というのは初めて聞きました。
なんでも、かつてノルウェーのトロンハイムにあるニーダロス大聖堂に、この「聖血」が届けられ、黄金の指環に収められたという伝説があるそうで、その「主の聖血の祝日」に行われるミサで歌われたとされる楽譜(ネウマ譜)が、コペンハーゲンのデンマーク国立図書館に保存されていたのだそうです。
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これがその現物の最初のページ。ジャケットにもこの写真が使われています。羊皮紙の両面に、全部で9ページに渡って記されているものを、この合唱団の指揮者のアンネ・クライヴセットが中心になって解読したものが、ここでは歌われています。1分にも満たないものから、長くてもせいぜい4分ほどのアンティフォナ、レスポンソリウム、ヒムヌスといった聖歌の数々、そのあくまで澄み切ったユニゾンからは、なぜかとても現代的な響きが感じられます。

SACD Artwork © Lindberg Lyd AS
by jurassic_oyaji | 2016-01-17 20:03 | 合唱 | Comments(0)