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BACH/Harpsichord Concertos Vol.3
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Trever Pinnock, Marieke Spaans, Marcus Mohlin(Cem)
Katy Bircher(Fl)
Lars Ulrik Mortensen/
Concerto Copenhagen
CPO/777 681-2




バッハのチェンバロ協奏曲のうち、2003年ごろに第1集、2005年に第2集として、ソロ・コンチェルトを録音していたモーテンセンとコンチェルト・コペンハーゲンが、2011年と2013年に残りの2台、3台、4台のチェンバロのための協奏曲を録音した2枚組CDがリリースされました。チェンバロを弾いているのはもちろん指揮者のモーテンセンですが、今回はそこに彼のロンドン時代の師、トレヴァー・ピノックというビッグ・ネームが加わっています。
これらのチェンバロ協奏曲は、すべてライプツィヒ時代に作られたもので、ほとんどのものは1730年代の作品です。つまり、かつては「宗教曲の時代」とされていたライプツィヒ時代では、聖トマス教会のカントルとしての「本業」には、バッハ自身は必ずしも満足してはおらず、責務であった毎週のカンタータの演奏でも1730年代になるともはや新作はほとんど作らず、他人の作品を使ったり過去に演奏したものの再演でお茶を濁すようになってきます。
そして、このころから彼が熱心に取り組んでいたのが、「カントル」ではなく「楽長」としての活動です。ライプツィヒにはテレマンが創設した「コレギウム・ムジクム」という、プロの音楽家や学生などが集まった演奏グループがあり、ゴットフリート・ツィンマーマンという人が店主を務めるコーヒー店で毎週コンサートを開いていましたが、バッハは1729年にそこの「楽長」に就任するのです。このコンサートはツィンマーマンガ亡くなる1741年ごろまで続けられました。
そこでバッハが演奏したのが、いわゆる「コーヒー・カンタータ」として知られるBWV211や、「フェーブスとパンの争い」というサブタイトルのBWV201といった世俗カンタータや、ケーテン時代に作りためた多くの作品と、それらを含めた以前の作品を装いも新たに作り直した作品群です。このCDで演奏されているのも、そのようにして生まれた複数のチェンバロのための協奏曲です。2つのヴァイオリンのための協奏曲BWVBWV1043を作り直したBWV1062や、元のオーボエとヴァイオリンのための協奏曲の形に復元(オリジナルの楽譜は消失しています)されて演奏されることも多いBWV1060などは、オリジナルの形とともに有名になっていますね。
中には、4台のチェンバロのための協奏曲BWW1065のように、ヴィヴァルディの4つのヴァイオリンのための協奏曲を作り直したものなどもありました。これらの協奏曲では、もちろんバッハ自身と、彼の息子たち、さらに弟子たちが加わって和気あいあいとした中で演奏が繰り広げられていたのでしょう。このCDでも、ピノックを始めとしたソリスト同士の丁々発止のやり取りは、そんな雰囲気が伝わってくるような楽しげなものでした。
その他に、フルート、ヴァイオリン、チェンバロのための協奏曲BWV1044も演奏されています。これも、第1楽章と第3楽章はクラヴィーアのための「プレリュードとフーガ」BWV894、第2楽章はオルガンのためのトリオソナタBWV527の第2楽章が編曲されたものです。ここでフルートを吹いているのが、この間の「ロ短調」でも素晴らしいソロを聴かせてくれたイギリスのフルーティスト、ケイティ・バーチャーです。なんでも彼女はあのジェームズ・ゴールウェイから大きな影響を受けて、最初はモダンフルートを勉強していましたが、大学を卒業するころにバロック・フルートに目覚めたのだそうです。
彼女の演奏からは、この楽器の演奏家にありがちなストイックなところは全く見当たらず、もっと開放的なパッションを感じるのは、そんな経歴のせいかもしれませんね。現在はこのコンチェルト・コペンハーゲンの正規メンバーですが、以前はマクリーシュのガブリエリ・コンソートの首席奏者も務めていました。たしかに、「マタイ」でもソロを吹いていいましたね。この協奏曲でも、3つのソロ楽器だけで演奏される第2楽章は絶品です。ブックレットの写真を見ると、彼女は別嬪です。

CD Artwork © Classic Produktion Osnabrück
by jurassic_oyaji | 2016-02-02 23:37 | オーケストラ | Comments(0)