おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
BEETHOVEN/Complete Symphonies
BEETHOVEN/Complete Symphonies_c0039487_20254489.jpg
Ricarda Merbeth(Sop), Daniela Sindram(MS)
Robert Dean Smith(Ten), Günther Groissböck(Bas)
Philippe Jordan/
Chœrs de l'Opéra National de Paris(by José Luis Basso)
Orchestre de l'Opéra National de Paris
ARTHAUS/109 249(BD)




2009年からパリの国立オペラ座の音楽監督のポストにあるフィリップ・ジョルダンが、このオペラハウスのオーケストラを指揮してベートーヴェンの交響曲の全集を作りました。2014年の9月から2015年の7月にかけてのコンサートの映像を収録した、3枚組のBDです。演奏以外に、指揮者のジョルダンのインタビューがスペシャル・フィーチャーとして加わっています。
そのインタビューでは、彼が若いころにウルム歌劇場でコレペティトゥールを勤めていた時の映像が挿入されていますが、そこではベルクの「ヴォツェック」のオーケストラパートをピアノで弾きながら歌唱指導をしている様子を見ることが出来ます。それは、はた目にはものすごいスキルを要求されるもののように見えます。このような実直な「下積み」の経験が、フランス最高のオペラハウスのシェフを長く務められるポテンシャルとなっていたのでしょうね。
ご存知のように、このカンパニーは主に2つの劇場を使って連日オペラやバレエの公演を行っています。それは、1875年に作られた「ガルニエ宮」と、1989年に作られた「オペラ・バスティーユ」です。したがって、付属のオーケストラも2セット必要になりますから、普通のコンサート・オーケストラのほぼ2倍の団員を抱えています。
このベートーヴェン・ツィクルスの場合、5回のコンサートが収録されていますが、そのうちの4回はバスティーユ、1回はガルニエ宮で行われたものです。
最近ではベートーヴェンはほとんど室内オケ程度の人数で演奏されることが多くなっていますが、ジョルダンとオペラ座のオーケストラはまずは普通のコンサート・オーケストラがとっている編成を採用していました。1番だけはちょっと少なめの12型(12-10-8-6-4と、30人の弦楽器)ですが、2番から8番までは14型(40人)、そして9番ではフル編成の16型(50人)になっています。
さらに、弦楽器の配置も、1番から8番までは下手からファースト・ヴァイオリン、セカンド・ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラと並び、上手の奥にコントラバスという標準的なものですが、9番だけはセカンド・ヴァイオリンが上手に来て、チェロとコントラバスは下手という「対向型」を取っています。もちろん、コントラバスの弓は全員「フレンチ・ボウ」ですね。
管楽器でも、今ではフランスのオーケストラでもなかなかその姿を見ることが出来なくなった「バソン」というフランス式のファゴットを使っている人が、ここにはまだいることが分かります。ただ、収録された5回のコンサートの中で、バソン奏者だけが参加していたのは2回だけ、そして2回はファゴットだけですが、残りの1回では、なんと1番がファゴット、2番がバソンという変則的なシーティングでした。
ジョルダンが使った楽譜は、おそらくベーレンライター版でしょう。9番の第4楽章でヴィオラがテーマを弾き始める時のバックでのファゴット(いや、バソン)のオブリガートのリズムが、ベーレンライター版以外にはない形でしたから。ですから、慣用版にあった明らかなミスプリントはすべて正しくなっています。さらに、ブライトコプフ新版にある5番の第3楽章のダ・カーポも、採用されています。これにはちょっとびっくり。
そのような楽譜によって、快速なテンポで運ばれていく演奏は、まず現代では最も標準的で受け入れやすいスタイルなのではないでしょうか。フォルテピアノからクレッシェンドという「臭い」表現が随所で頻発しているのは、我慢していただきましょう。それよりも、演奏者の中にまでカメラを入れて作り上げられた躍動的な映像には、興奮させられます。1、3、4、5、9番では、40年間首席フルート奏者を務めているカトリーヌ・カンタンの姿も、簡単に見られますよ。3番の大ソロで音をはずしているのは、ご愛嬌。

BD Artwork © Arthaus Musik GmbH
by jurassic_oyaji | 2016-10-20 20:30 | オーケストラ | Comments(0)