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BACH & SANDSTRÖM/Motetten Volume2
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Stephan Doormann/
Kammerchor Hannover
La Festa Musicale
RONDEAU/ROP 6152


スウェーデンの作曲家スヴェン=ダーヴィド・サンドストレムは2003年から2008年までの間にバッハの6つのモテット(BWV225-230)を下敷きにして「6つのモテット」を作りました。仕上げはきちんと磨いて(それは「サンドペーパー」)。ですから、それぞれの作曲家が同じテキスト、同じ構成で作った「モテット」を聴き比べてみようと思い立つ人は当然出てきます。そんな一人が、シュテファン・ドールマンというドイツの合唱指揮者。彼は自分の合唱団、「ハノーファー室内合唱団」を率いてその試みを実践し、CDを作ります。
そこで2014年に録音されて翌年リリースされたのが、以前にご紹介したこちらのアルバムです。ただ、2人分の「6つのモテット」、つまり12曲のモテットを収録するのには、CD1枚では無理なので、まず1枚だけを出す時には、2つの選択肢が考えられることになります。1枚に入るのは半分の6曲ですから、同じテキストの曲をそれぞれの作曲家が作ったものを3曲だけ取り上げるのか、すべてのテキストを、それぞれ3曲ずつバッハの作品とサンドストレムの作品に分けるかという選択です。
彼らが取ったのは後者。ですから、そこではそれぞれの作曲家の「聴き比べ」はできませんでした。その結果、バッハはともかく、残りのサンドストレムの曲はぜひ聴いてみたいという願望が募ることになります。そんなリスナーの心理を読んだのか、3年後に残りの曲を録音したのが、この「Vol 2」です。
これで、ジャケットのデザインが良く似たCDが2枚手元に届いたことになります。曲目はもちろんどちらも同じタイトル、曲順も「Komm, Jesu, komm」、「Jesu, meine Freude」、「Der Geist hilft unser Schwachheit auf」、「Fu()rchte dich nicht, ich bei dir」、「Lobet den Herrn, alle Heiden」、「Singet dem Herrn ein neues Lied」、いわゆる「5番」、「3番」、「2番」、「4番」、「6番」、「1番」と、全く同じです。
ただ、前回はサンドストレムの曲はタイトルしかありませんでしたが、今回はきちんと編成まで表記されていました。それによると、バッハは4声、5声、そして8声の二重合唱で、そこにコラ・パルテで楽器が加わっていますが、サンドストレムではそれがもっと細かくパート分けされていることが分かります。最大が「8声から16声までの二重合唱」というものでした。もちろん、ア・カペラ。こうなると、もうリゲティの「Lux aeterna」の世界ですね。
ですから、サンドストレムの「モテット」は、テキストはバッハとは同じでもその音楽は全くの別物に仕上がっています。特に、その細分化された声部によって生み出されるトーン・クラスターの魅力は、一つの聴きどころでしょう。
とは言っても、彼は間違いなくバッハの精神は受け継いでいます。それが端的に表れているのが、コラールの扱いでしょう。バッハの「モテット」の中には多くのコラールが使われていて、それが聴くものに親しみを抱かせるものになっていますが、サンドストレムもそのコラールのテキストの部分は、極力ホモフォニックで美しい和音進行を使っています。
そんなことに気づいたのは、この「Vol 2」を聴いてからでした。「Vol 1」では、バッハでは何かおざなりな歌い方だし、サンドストレムでは技術的なほころびがあちこちに見られたので、そこまで聴き取れなかったのですが、今回は違います。確かにバッハが薄味であることに変わりはありませんが、サンドストレムではものの見事に自分たちのものとして歌えているのですね。
それは、最後の「Singet dem Herrn ein neues Lied」を聴いて、強く感じました。以前のレビューで同じ曲を歌っている別の団体にはとても及ばないだろう、みたいなことを書いていましたが、実際はそれをはるかに凌駕する出来だったのですよ。1曲目のとてつもないメリスマもやすやすと歌っていますし、2曲目では、「コラール」と「アリア」を交互に歌うというバッハと同じ手法が取られていますが、その対比が見事に歌い分けられているのですからね。

CD Artwork © Rondeau Production GmbH

by jurassic_oyaji | 2018-03-10 20:30 | 合唱 | Comments(0)