おやぢの部屋2
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PORRA/Entropia
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Paperi Ta(Rap), Joonas Riippa(Drum)
Aki Rissanen(Pf), Lauri Porra(E. Bass)
Jaakko Kuusisto/
Lahti Symphony Orchestra
BIS/SACD-2305(hybrid SACD)


アルバムのタイトルが「エントロピア」。これは、この中で演奏されている作品のタイトルですが、それはもちろん「エントロピー」にちなんだものだというのは容易に想像できます。寿司ネタではありません(それは、「エンガワ、トロ、ピーマン?」。この言葉は、「熱力学の第2法則」という難しい話の中に登場するタームです。
実際には、このタームはそのような物理学の範疇を超えて、たまに普通の会話の中でも使われることはあります。要は、「エントロピー」というのは「無秩序」の状態を定量的に表したもので、これが増大すると、それだけ「無秩序」になる、ということです。そして、「自然界ではエントロピーは増大する」というのが、この法則です。たとえば、冷水と熱湯を混ぜるといずれはぬるま湯になってしまいます。これは、それぞれ別の状態で秩序を持っていたものが、秩序のないものに変わってしまうことでエントロピーは増大しています。しかしその逆、ぬるま湯から冷水と熱湯を作り出すことはエントロピーが減少することなので、普通はできません。
などと、七面倒くさいことを言ってますが、ここでそんなタイトルを与えられた作品は、「エレックトリック・ベースとオーケストラのための協奏曲」です。つまり、通常はロックやジャズといったポップ・ミュージックとクラシックという全く別の秩序の中にある楽器なりアンサンブルを混ぜることによって新たな無秩序の状態を作り出そうという程度の発想なのですね。別に「コラボレーション」とか言ってみてもその意味は変わらないものを、ちょっと難しく言ってみました、ぐらいのノリなのでしょう。
そんな曲を作ったのは、1977年生まれのフィンランドの作曲家、ラウリ・ポラーです。このアルバムは、彼の作品集、そしてこの方は、なんとあのジャン・シベリウスの曾孫なのだそうです。こんな顔です。
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彼はフィンランドの伝説的なメタル・バンド「ストラトヴァリウス」に5代目のベーシストとして2005年に加入し、現在もメンバーとして活躍しています。しかし、それは彼の音楽活動の一面にしかすぎず、彼の興味はあらゆるジャンルを網羅しているのです。もちろん、それはクラシックにも及んでいて、このようなオーケストラを使った作品まで手掛けています。もっとも、オーケストレーションに関しては専門的なスキルをもったオーケストレーターと共同で作業を行っていますが、彼とはあくまで「仲間」として接していて、このアルバムでもプレーヤーとして参加させています。
「エントロピア」では、ポラーがソリストとしてクーシスト指揮のラハティ交響楽団と共演しています。これはもう、かつての「プログレッシブ・ロック」を彷彿とさせるようなロックとクラシックが高次元で融合した痛快な作品です。
もう一つの「協奏曲」、「ドミノ組曲」は、ドラム・セットとジャズ・ピアノがソリストです。これは意外とおとなしく、3つある最初と最後の楽章は、しっかり記譜されたパターンをピアノが延々と弾いているほとんどミニマル、真ん中の楽章だけドラムスが即興で暴れまわるという曲です。
さらに彼の興味はヒップ・ホップにも及んでいて、アルバムの最初に収録されているのはオーケストラをバックにラッパーが登場するというとんでもないコラボでした。でも、ここでのラッパー、パペリTは、自分で作ったテキスト(「リリック」でしょうね)を淡々と語るスタイルですから、いにしえの「現代音楽」の「シュプレッヒ・ゲザンク」のような味わいが醸し出されています。それを、ポストプロダクションで声を歪ませたりサラウンドの音場を作っていたりしていますから、もうたまりません。BISがSACDをやめないでくれて、本当によかったと思えてきます。
フィンランド語のラップは初めて聴きましたが、なかなか美しいと感じられるのは、日本語のラップがあまりに醜く貧しいからでしょう。
彼のひいおじいさんがこのSACDを聴いたら、なんと言うのでしょうね。

SACD Artwork © BIS Records AB

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by jurassic_oyaji | 2018-03-13 21:31 | 現代音楽 | Comments(0)