おやぢの部屋2
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BACH/Mass in B Minor
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Katherine Watson(Sop), Helen Charlston(MS)
Iestyn Davies(CT), Gwilym Bowen(Ten), Neil Davies(Bas)
Stephen Layton
The Choir of Trinity College Cambridge
Orchestra of the Age of Enlightenment
HYPERION/CDA 68181/2


最初このCDを聴いた時に、その音があまりに素晴らしいので驚いてしまいました。エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団の弦楽器の音が、ピリオド楽器にあるまじきエッジの立ったクリアな響きだったのですね。合唱もとても生々しい音で、メンバーひとりひとりの声まではっきり分かるほどのリアリティを持っていました。そうなると、これを録音したエンジニアの名前が気になります。そこでクレジットを見るとエンジニアはデイヴィッド・ヒニットという人でした。確かに、この名前は他のレイトンのCDでも見たことがあります。
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こんな顔、なんかひにっとした感じですね(どんな感じだ)。
調べてみると、驚いたことにこの方はオルガニストで、2005年にロンドンのサウスゲートにあるクライスト・チャーチのアシスタント・ディレクターに就任、その教会のオルガニストも務めていたのです。コンサートではこの「ロ短調」やヘンデルの「メサイア」、デュリュフレの「レクイエム」の伴奏などもしていたそうです。
レコーディング・エンジニアとしての経歴は、その前から始まっているようでした。2002年ごろからは「アシスタント・エンジニア」あるいは「編集」という肩書でクレジットが現れるようになっていて、本格的に「レコーディング・エンジニア」として独り立ちするのは2006年ごろからのようです。それから現在まで、すでに200枚以上のCDの製作にかかわっています。ヒニットは、まさに超売れっ子のエンジニアとオルガニストとして二足のわらじで大活躍をしていたのでした。
彼の名前がクレジットされているレーベルはこのHYPERIONが最も多いようですね。そのほかにNAXOSとかSIGNUMなども見当たります。もちろん、彼の「本職」である(どちらが本職かは分かりませんが)合唱関係の録音が大部分を占めています。その際にプロデューサーとしてクレジットされているのが、多くの場合エイドリアン・ピーコックという、かつてはバス歌手として活躍されていた人です。
実は、このピーコック/ヒニットというチームは、2013年にも同じHYPERIONレーベルに今回と同じ「ロ短調ミサ」を録音していました。それはこちらの、ジョナサン・コーエン指揮の「アルカンジェロ」のアルバムです。今回の録音が2017年ですから、たった4年で同じ制作チームが同じ曲を別の団体で録音していることになります。もちろん、いずれも同じピリオド楽器による演奏ですが、今回はコーエン盤に比べると各パートの人数は大幅に増えていますから、そんな違いが同じエンジニアの手によって比較できることになります。これはなかなか興味深いこと、さすがは合唱大国であるイギリスならではの快挙ですね。まだまだCD業界も捨てたものではありません。
以前、レイトンがバッハの「ヨハネ」を録音した時には、合唱は彼が主にかかわっている2つの団体のうちの「ポリフォニー」の方でした。その後、「クリスマス・オラトリオ」を録音した時には、もう一つの団体、「トリニティ・カレッジ聖歌隊」になって、今回も同じ「トリニティ」です。この2つの合唱団はいくらかその持ち味が異なっていたようで、こちらの方が比較的穏健のような印象がありました。
今回も、そんなスタイル自体はそんなに変わってはいないような気はしたのですが、例えば「Gloria」の最後の「Cum Sancto Spiritu」や「Credo」の最後の「Et expect resurectionem」では、そんな穏健さをかなぐり捨てたハイテンションな姿も見られます。
ソリストでは、ソプラノのキャサリン・ワトソンがとても豊かな表現力を披露してくれています。たとえば「Laudamus te」の中の歌詞「adoramus te」の最初の「a」の歌い方がまるで溜息のように聴こえるのが、とてもセクシーです。彼女がカウンターテナーのイェスティン・デイヴィスと一緒に歌う「Et in unum Dominum」では、イェスティンの淡白さもあってその奔放な表現は浮き出ています。

CD Artwork © Hyperion Records Limited

by jurassic_oyaji | 2018-03-15 20:59 | 合唱 | Comments(0)