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ARNESEN/Infinity: Choral Works
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John Gunther(Sop Sax)
Alice Rigsby(Pf)
Joel Rinsema/
Kantorei
NAXOS/8.573788


1980年生まれのノルウェーの若手作曲家、キム・アンドレ・アルネセンは、この世代の他の作曲家同様、様々なジャンルの音楽がバックボーンになっています。特に彼が最も情熱を傾けているのが、合唱音楽です。その作風は、彼より10歳年上のアメリカの作曲家、エリック・ウィテカーにかなり近いものがあるね
今まで聴いたことがある彼の大きな作品としては、こちらの「マニフィカート」がとても印象的でした。このSACD(+BD-A)ではノルウェーのニーダロス大聖堂の合唱団が歌っていましたが、アルネセン自身もかつてはここの合唱団のメンバーだったのですね。このアルバムは、2016年のグラミー賞に録音部門のカテゴリーでノミネートされていました。
その時の超リアルなサラウンドのサウンドによって、ピュアそのものの児童合唱の声を味わっていましたから、同じ作曲家の作品をアメリカの大人の合唱団が歌った時にはいったいどんなものになるのかはちょっと不安なところもありました。
確かに、録音の面から言ったら、先ほどの2Lのある意味ぶっ飛んだ音には比べようもない、なんともレンジが狭くて盛り上がりに欠けるサウンドには失望させられました。さらに信じられないことに、この録音では会場のグラウンド・ノイズが派手に聴こえてくるのですからね。とは言っても、そんな怪しげな録音によって聴こえてくるこのデンバーを本拠地に活躍している「カントライ」という合唱団は、アメリカと言って連想される大味なものでは決してなく、まさに大人ならではのクオリティの高い演奏を味わわせてくれました。というより、ここで歌われているアルネセンの曲は全て英語かラテン語なので、テキスト上の共感までもしっかりと伝わってきます。何しろ、このアルバムの中の12曲のうちの4曲が、この合唱団の委嘱によって作られ、これが世界初録音というのですから、作曲家との信頼によって硬く結ばれているのでしょうね、曲によってはソリストが登場しますが、それらは全員この合唱団のメンバーで、それぞれに素晴らしい声ですから、かなりのスキルを持った人たちの集まりなのでしょう。
この中では、2010年に作られた「Cradle Hymn」という子守歌が、ホワイトハウスのあのオバマ大統領の前で歌われた、ということで広く知られているようです。とてもシンプルな分かりやすいメロディの繰り返しで、それぞれに細かくアレンジを変えて楽しませてくれます。これにはピアノ伴奏が付いていますが、ここで聴けるピアノ伴奏つきの曲が、大体同じようなソロでも歌えるような美しいメロディを前面に出したものになっています。
そんな中で、2013年に作られた大曲(演奏時間は50分近く)の「レクイエム」の中の「Pie Jasu」も、ピアノ伴奏で演奏されていました。オリジナルは弦楽合奏にトランペット1本と多くの打楽器という編成で、この曲の場合はソリストが2人用意されていますが、それが1人のソリストと合唱にピアノ伴奏という形に新たに編曲されています。なんでも、最初の「レクイエム」の構想では「Pie Jesu」は入れないつもりでいたものが、ある日突然このメロディが「降りてきた」ので、急遽その中に加えたのだそうですから、これは間違いなく心を打つ音楽なのでしょう。
とにかく、最初から最後まで美しいメロディと美しいハーモニーに彩られた、とてもゴージャスな曲ばかりなので、もったいないことに、ちょっと飽きてきたな、と思った頃、最後から2番目の「Infinity」というアルバムタイトルにもなっている曲になったら、それまでの曲とは一味違うとても厳しい曲調だったので、ちょっとびっくりしてしまいました。何か切迫したような合唱の最後に、ソプラノ・ソロがとても緊張感のある合いの手を入れるというシーンがあるのですが、そのソロはそれまでピアノ伴奏を弾いていた方なんですね。
これは、コンクールの自由曲に使ったら、とても受けるのではないでしょうか。

CD Artwork © Naxos Rights(Europe) Ltd.

by jurassic_oyaji | 2018-03-19 20:38 | 合唱 | Comments(0)