おやぢの部屋2
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BACH/Mass in B Minor
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Katherine Watson(Sop), Tim Mead(CT)
Reinoud Van Mechelen(Ten), André Morsch(Bas)
William Christie/
Les Arts Florissants
HARMONIA MUNDI/HAF 8905293/94


ウィリアム・クリスティが「レザール・フロリサン」を創設したのは1979年ですから、もうすぐその活動期間は40年になりますね。バロック期の知られざる作品を数多く紹介していましたが、基本的には合唱がメインで、それを補助するために器楽アンサンブルがあったような印象がありますね。これまでに数多くのアルバムをリリースしていますが、それらはほとんどフランス・バロックのレパートリーだったのではないでしょうか。それ以外に取り上げられているのはモンテヴェルディぐらい、ですから、どうやらバッハの作品を取り上げた録音はおそらくこれが初めてのようなのですね。まあ、なんたってシャルパンティエの作品のタイトルをアンサンブルの名前にしているぐらいですから、基本的にフランス・バロック、というのが彼らの矜持だったのでしょう。
ただ、クリスティ自身は、幼少のころからバッハも含めて、バロック音楽全般を聴いていたようですね。それは彼の家庭環境のおかげ、お母さんがニューヨークの教会の聖歌隊の指揮者をしていたのだそうです。彼はバッファロー生まれのアメリカ人、ハーバード大学とエール大学に学んでいますが、後にフランス国籍を取得するのですね。
クリスティは10歳ぐらいの時にそのお母さんの指揮する教会での演奏で、オルガン伴奏による「Gloria in excelsis」と「Et resurrexit」を聴いて以来、「ロ短調ミサ」が大好きになったのだそうです。
そんな、待望の「ロ短調」全曲は、2016年から2017年にかけてのツアーで取り上げられていました。2016年6月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われた「プロムス」でも演奏されていましたね。このCDは、2017年9月にパリのフィルハーモニーで行われたコンサートのライブ録音です。
CDが始まると、まずこの広大なホールのざわめきが聴こえてきます。これは、よくある「ライブ録音」とは言ってもお客さんが入っていない状態でリハーサルを録音して編集したものではなく、まさしく「ライブ」そのものであることが分かります。それは、聴きすすんでいくうちに現れる、ちょっとしたアンサンブルの乱れなどによっても、しっかり確認することが出来ます。もちろん、それらは些細な疵でしかなく、この演奏を支配する生命感にあふれたグルーヴの邪魔になるものでは決してありません。
そう、これは、宗教曲にはあるまじき、型破りなほどに「世俗的」な情感にあふれた名演です。それはクリスティ自身もライナーノーツで語っているように、バッハの作品がそもそも内包している「世俗性」、言い換えれば「人間臭さ」を前面に押し出した画期的な演奏だったのです。
まず、設定されたテンポはかなり速め、そして、先ほどの2曲、「Gloria in excelsis」と「Et resurrexit」のようなそもそも開放的に作られている曲はさらに華やかさにあふれて激しく盛り上がります。クリスティはアリアの時には指揮をせずに、通奏低音のチェンバロを演奏することに専念していますが、これもとても華やかなレアリゼーションを見せていて、心が躍ります。ソリストたちも、トリルなどの装飾は前打音を長く伸ばすというフランス的な表現がとられているので、優雅さはさらに増しています。
さらに、「Crucifixus」のような、本来は暗~い情感が漂うはずの曲でも、合唱はとことん「明るく」歌っていますね。面白いのは、この曲の最後で、ソプラノが最後の小節のひとつ前のD7の和音の7音である「C」を、小節線を越えて伸ばして最後の小節でアポジャトゥーラとして機能させていることです。こんなスリリングな演奏は、初めて聴きました。
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来年の3月には、ロンドンのバービカン・センターで「ヨハネ受難曲」を演奏するという予定があるというよさげな情報を見つけました。クリスティは本気でバッハに取り組むことにしたのでしょうか。おそらく、これも遠からず録音で耳にすることが出来るのでしょうね。とても楽しみです。

CD Artwork ©c harmonia mundi musique s.a.s.

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by jurassic_oyaji | 2018-04-07 20:58 | 合唱 | Comments(0)