おやぢの部屋2
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Mel Bonis, Mendelssohn & Brahms
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William Bennett(Fl)
Lorna McGhee, Emm Halnan(Fl,Alto Fl,Picc)
John Lenehan(Pf)
BEEP/BP42


1936年2月に生まれたイギリスのフルーティスト、ウィリアム・ベネットが、2014年の1月と3月に録音したアルバムです。ちょうど録音をしている間に78歳になっていたことになりますね。78歳!驚きますね。そもそも、そんな歳になってまともな演奏などできるものなのでしょうか。
ベネットの「78歳」は、しかし、信じられないことに、何の衰えも感じられないものでした。このアルバムからは、今まで聴いてきた彼の演奏と全く同質の、芯のある音と確かなテクニック、そして豊かな音楽性が伝わってきたのです。
たしかに、彼の特徴であった鋭角的なビブラートは、多少コントロールが利かなくなっているようなところは見られます。ディミヌエンドで音を小さくしていくと、ビブラートの谷間で音が完全になくなってしまって、ロングトーンが細かい音符のように聴こえたりすることがあるのですね。あるいは、完璧だったピッチに、ほんのわずかの狂いが見られるようなところもないわけではありません。でも、それらは彼の作り出す音楽の中では無視できるほどの瑕疵でしかありません。なによりも、年齢からは考えられないような長いブレスから繰り出される息の長いフレージングには心底驚かされます。
ここで取り上げられている曲目も、とてもユニークでした。まずは、メンデルスゾーンが14歳の時に作ったヴァイオリン・ソナタを、フルートで吹いています。
メンデルスゾーンは、フルートのためのソナタこそ作ってはいませんが、そのオーケストラ作品の中でのフルートの使い方は、例えば「真夏の夜の夢」の中の「スケルツォ」などはとても技巧的でソリスティックですから、この楽器の持ち味を存分に発揮させる術は心得ていたはずです。このヘ短調のヴァイオリン・ソナタも、彼がロンドンに行った時に、有名なフルーティストのチャールズ・ニコルソンからフルート・ソナタにしてもらえないかと頼まれたという逸話が残っているほどです。
すでに、これをフルート・ソナタに直して出版された楽譜はありますが、ここではベネット自身が編曲したものが演奏されています。堂々たる序奏に続く愁いをたたえた第1楽章、端正で、まるでシューベルトのような深みのある歌心が満載の第2楽章、そして、やはりロマン派ならではの愁いが込められた軽快な第3楽章と、ベネットはまさにフルートならではの語り口で、その魅力を伝えてくれていました。
ここにタイトルにはないフォーレの「小品」というかわいらしい曲が挟まって、最近になってその作品が見直されている女性作曲家、メル・ボニのフルート・ソナタです。彼女はデブではありません(それは「メタ・ボ」)。この曲はすでに何枚かのアルバムをここでも紹介していますが、今回のベネット盤の登場で、数少ないロマン派のフルート・ソナタとしての地位をライネッケの「ウンディーヌ」とともに確実にすることでしょう。第2楽章と第4楽章の忙しいパッセージも、ベネットは軽々と吹いています。
そして、やはりタイトルにはないドヴォルジャークの歌曲「わが母の教えたまいし歌」をフルートで演奏した後、ブラームスのコーナーになります。ここからフルートはソロではなく、まずはソプラノとアルトのための二重唱「海」が2本のフルート(とピアノ)で演奏された後に、2本か3本のフルート(とピアノ)で演奏されるピアノ連弾のための「ワルツ集」が続きます。
これも、ベネットの編曲ですが、たまにフルートだけではなくピッコロやアルトフルートが入るのが、バラエティに富んで聴きごたえがあります。それを2人の女子のお弟子さんと一緒に楽しんでいるベネットがすごくかわいいですね。このワルツ、全然知らない曲だと思っていたら、最後の変イ長調の曲が超有名なあの「ブラームスのワルツ」じゃないですか。アルトフルートの柔らかい低音が、とっても粋ですね。
こんなことが出来る78歳になりたいな、としみじみ思ってしまいましたよ。

CD Artwork © Beep Records

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by jurassic_oyaji | 2018-05-10 21:14 | フルート | Comments(0)