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Hans Zimmer Live in Prague
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EAGLE ROCK/EVB 335709(BD)


どうしても「ハンス・ツィンマー」と呼びたくなってしまいますが、一応アメリカ式に「ハンス・ジマー」と呼ぶのが慣例になっているので、それに従いましょう。そんな名前でも分かる通り、生まれたのはドイツ、その後ロンドンに移住してさらにアメリカに渡り、今では世界的な映画音楽の作曲家になっている人ですね。
彼の作る音楽は、とても骨太でダイナミックなものから、繊細なものまでかなり幅広いような印象がありました。その中で、生のオーケストラと電子音(シンセサイザー)との絶妙なバランスによる独特なサウンドは、それまでの映画音楽のグレードをワンランク高めたものなのではないでしょうか。
そんなジマーが、2016年にプラハで行ったコンサートの模様が、2017年にBDなどでリリースされていました。
会場は、プラハのO2アリーナという、収容人員18,000人の屋内競技場です。そこを埋め尽くした聴衆の前で、ジマーはオープニングから度肝を抜いてくれました。まずはジマーが一人で現れて「Driving Miss Daisy」のテーマをピアノで弾き始めます。そのピアノも普通のアップライトではなく、もう少し小振りのスピネットタイプのおもちゃみたいな楽器ですから、なんかジマーのサウンドとはミスマッチ。そこに、クラリネット奏者が登場して、デュエットになります。そのクラリネットがすごく上手、あとで調べたらリチャード・ハーヴェイという、やはり映画音楽などを作っている作曲家でした。
さらに、セクシーなボンデージ・ファッションのヴァイオリンが2人と、スケルトン・チェロ(ヤマハ)が一人加わってひとくさりアンサンブルが披露されますが、少しリズム感がタイトになってきたな、と思った瞬間、後ろのカーテンが上がってそこに並んだドラムスとパーカッションがいきなり現れました。
曲は「Sherlock Holmes」に変わり、ジマーはなんとバンジョーを弾きだしましたよ。それが一旦暗転でブレイク、ベースのソロで「Madagascar」のリフが始まり、ジマーは燕尾服を脱いでシャツ姿になり、ピアノに向かいます。そして、そのリフが盛り上がってきた瞬間、さらに後ろのカーテンが上がって、ストリングスとブラス、そしてコーラスが現れました。これには客席も驚いて、スタンディング・オベーションですよ。このメンバーはチェコ・ナショナル交響楽団と合唱団ですって。
それからは、聴いたことのあるジマーの曲たちのオンパレード、オーケストラを駆使した重厚なサウンドから、ほとんどEDMといった感じのテクノ・サウンドまで、幅広いジャンルを網羅したジマーの世界が広がります。
演出も、照明がとても多彩で目がくらむほど。そして、最大の魅力がそのサラウンドのミックスです。いまや、映画のサウンドトラックはサラウンドが当たり前になり、単なるオーケストレーションではなく、しっかり音場まで設計されたアレンジが行われています。時には、それが的確な表現となって、映画全体のコンセプトを伝える大きな要素ともなりえています。そんな「思想」までが、このBDのサラウンド・ミックスでは見事に反映されているのです。
具体的には、オーケストラと合唱はリアに定位、フロントにバンドが広がるという、まるでステージのど真ん中にいるような定位になっています。ただ、ドラムスやパーカッションはシーンに応じて定位が変わり、前からも後ろからも迫ってきます。
スケルトン・チェロは、常にフロントでソリスティックな演奏を繰り広げています。この人は中国系のティナ・グオというチェリストで、クラシックのチェロや、二胡までも演奏します。なんでも、五嶋みどりとトリオを協演したこともあるのだとか。ただ、何カ所か、間違いなくソロを弾いているのに、音が全然聴こえないところがありました。これは音響のミスなのでしょう。
「動く」ジマーを見たのはこれが初めて、かなり老けた外観はちょっと意外でした。でも、このライブのサウンドには圧倒されました(あっとおどろくことばかり)。

BD Artwork © Eagle Rock Limited

by jurassic_oyaji | 2018-06-21 20:17 | ポップス | Comments(0)