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MOZART, MYSLIVEČEK/Flute Concertos
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Ana de la Vega(Fl)
English Chamber Orchestra
PENTATONE/PTC 5186 723(hybrid SACD)


まるで平野ノラみたいな太い眉毛のこの女性は、オーストラリアでイギリス人とアルゼンチン人の両親の間に生まれたフルーティスト、アナ・デ・ラ・ヴェガです。ブックレットの中の彼女自身の言葉によると、彼女はそれまでフルートのことも知らず、クラシックのコンサートに行ったこともなかったのに、ある日たまたま両親が家でかけていたレコードでジャン・ピエール・ランパルが演奏したモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」の第2楽章を聴いた時、「わたし、フルートが吹きたいっ。パリに行って、ランパルさんの弟子になるわ。」と両親に告げたというのです。
結局、彼女がパリのコンセルヴァトワールに入学した頃にはランパルはすでに亡くなっていましたが、ランパルの高弟のレイモン・ギオーのもとでフレンチ・スクールの後継者となるべく学ぶことになるのでした。
彼女が一躍注目を集めたのは、2010年にイギリス室内管弦楽団とヨゼフ・ミスリヴェチェクの「フルート協奏曲」を演奏したロンドンのコンサートでした。ミスリヴェチェクはチェコで生まれ、イタリアでオペラ作曲家としての名声を確立した作曲家です。モーツァルトとも親交があり、モーツァルト自身も彼のことを高く評価していました。彼が作った唯一のフルート協奏曲は、すっかり忘れ去られていましたが、ヴェガはパリにいたころにわざわざチェコまで行ってその楽譜を探し出したのだそうです。
このコンサートの模様はBBCのラジオでも放送され、各方面で絶賛されたそうです。その同じメンバーで、2016年にセッション録音を行ったものが、このSACDです。ただ、これが世界初録音というわけではなく、1988年にブルーノ・マイヤーが録音したものが、Koch-Schwannレーベルから1989年にリリースされていますけどね。
ミスリヴェチェクは、モーツァルトよりも20歳ほど年上でした。ですから、その様式をモーツァルトも取り入れていたのでは、と言われています。実際、以前聴いた彼の受難曲からは、モーツァルトそっくりのテイストを感じることが出来ましたからね。
今回のフルート協奏曲は、第1楽章などはモーツァルトというよりはその一世代前の前古典派の音楽のように聴こえます。なんとなく、モーツァルトのお父さんのレオポルドが作ったとされるカッサシオン(おもちゃの交響曲)に似たようなフレーズも現れますし。しかし、2楽章あたりは、紛れもなくモーツァルトと同質の和声とメロディ・ラインが感じられるのではないでしょうか。今では楽譜もBÄRENREITERから出版されていますから、これからはどんどんこの曲をコンサートやレコーディングで取り上げる人が出てくるような気がします。その時には、このアルバムのようなモーツァルトの作品とのカップリングがよく行われるようになることでしょう。
こうして、新しいレパートリーの嚆矢となったヴェガの録音ですが、彼女の演奏に関してはあくまで珍しい曲をきっちり音にしただけ、という印象以上のものを感じることはできませんでした。というか、そもそも「前座」として演奏されているモーツァルトの協奏曲が、なにか聴いていて物足りないのですよね。両端の早い楽章は確かにテクニックに破綻はありませんが、なにかおとなしすぎてお上品な演奏にしか聴こえません。そして、真ん中の楽章が、なんともイマジネーションに欠けているな、という気がするのですね。
モーツァルトのト長調の協奏曲のその第2楽章ではオーケストラにもフルートが入るのですが、そこでは、そのオーケストラのフルートの方が、ソリストより明らかに音楽性が感じられるのですね。ここでは、かつてカラヤンがベルリン・フィルのメンバーをソリストにしてモーツァルトの管楽器の協奏曲を録音した時の、アンドレアス・ブラウ(ソロ)、とジェームズ・ゴールウェイ(オーケストラ)の場合とまったく同じことが起こっていたのです。

SACD Artwork © Pentatone Music B.V.

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by jurassic_oyaji | 2018-07-14 20:40 | フルート | Comments(0)