おやぢの部屋2
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BRAHMS/Symphonies 1-4, Serenades 1&2
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Mario Venzago/
Tapiola Sinfonietta
SONY/19075853112


なにかと話題の多いスイスの中堅指揮者マリオ・ヴェンツァーゴです。このページでもブルックナーシューベルトを聴いていますし、中にはシャロン・ベザリーの伴奏などという渋いアイテムもありましたね。それぞれ全く別のオーケストラと別のレーベルというのも、彼の幅広い活躍ぶりが反映されています。ブルックナーでは、5つのオーケストラを使ってのツィクルスでしたからね。
そして、今回はそのブルックナーでも起用されていたフィンランドの室内オケ、タピオラ・シンフォニエッタとともにブラームスのツィクルスです。杏仁豆腐にも入ってますね(それは「タピオカ」)。2015年から2017年にかけて4つの交響曲と、それに、2つのセレナードが録音され、それが3枚組のCDとなっています。
このCDのパッケージは、ジャケットにデザインされているのが「計算尺」の目盛りという、意味不明のものです。おそらく、このデザインを考えた人はブックレットに掲載されているブラームスとその周辺の作曲家の生涯や作品を時間軸で並べたリストとの連携を考えていたのでしょう。この中には、そのリストの一部分もそんな「目盛り」の中に散在させていました。ただ、そこでは年号などが本文とは異なったものになっているのが、非常に目障りです。単なるコピペなのにこんなお粗末な間違いを犯し、それを誰も直さなかったというあたりには、かなり杜撰な制作の姿勢が垣間見られてしまいます。物を作る時のこういう細かさは、けっこう大事ですよ。
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一応、そのリストによって、「セレナード」と「交響曲」がブラームスの生涯のどのようなポイントに作られていたのかが分かります。1833年に生まれたブラームスが1860年に完成させたのが、2つのセレナードなんですね。作曲家はまだ20代でした。正確には、「1番」はそれ以前に室内楽の編成で作られていましたが、それをオーケストラ用に編曲したのが、この年になります。
そして、40歳を過ぎた1876年に、初めて交響曲が作られるころになります。
演奏しているタピオラ・シンフォニエッタは、弦楽器が9.7.6.4.3.という、フル・オーケストラの半分の編成です。ブックレットにある彼自身の言葉によると、ブラームス自身が指揮をしたオーケストラのサイズから、この編成を選んだようですね。そして、そこから現在普通の人が抱いているブラームスの交響曲のイメージを一新する、というのが彼の目論見のようなのです。
確かに、モーツァルトやベートーヴェンでは、最近の演奏スタイルの主流はかつての重厚なものからは大幅に変わっています。しかし、それはあくまであまりにロマンティックになり過ぎた演奏を、本来の古典の形に戻しただけのことなので、それをそのままブラームスに当てはめるのは無理があるような気がします。なんたって、さっきのリストで分かるように、彼の生前にはあのマーラーがすでに活躍していたのですからね。
ですから、ここでかなり少なめの弦楽器で、極力あっさり目を目指して演奏しているヴェンツァーゴの演奏からは、壮年期のブラームスの姿は全く浮かんできません。「人数が多くなければできない音楽がある」と言っていた指揮者がいますが、ブラームスの場合はその典型、ここで演奏されている交響曲のどの瞬間も、「もっと弦楽器がたっぷりの響きで聴きたい」と思ってしまいます。「第4番」の冒頭など、もう爆笑もののしょぼさですからね。
それに対して、セレナードは、等身大の若いブラームスが感じられて、とても楽しめました。そんな中でも、「1番」の第4楽章スケルツォのトリオで見せるヴァイオリン・ソロのように、ちょっと油断のできない表現が聴かれるところも満載です。「2番」にはそもそもヴァイオリンが必要とされていませんから、編成的にも何の引け目もありませんし。
ですから、この「ブラームスの交響曲全集」は、おまけの「セレナード全集」があったから、かろうじて面目を保つことが出来たようなものなのです。

CD Artwork © Sony Music Entertainment Switzerland GmbH

by jurassic_oyaji | 2018-08-17 08:47 | オーケストラ | Comments(0)