おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
BERNSTEIN/Wonderful Town
BERNSTEIN/Wonderful Town_c0039487_21441309.jpg

Danielle de Niese(Eileen)
Alysha Umphress(Ruth)
Nathan Gunn(Baker)
Simon Rattle/
London Symphony Orchetra & Chorus
LSO LIVE/LSO0813(hybrid SACD)


サイモン・ラトルが、現在の自らのオーケストラとともにバーンスタインのミュージカル「ワンダフル・タウン」の新録音をリリースしました。
このミュージカルは、1944年の「オン・ザ・タウン」に続き1953年に作られた2番目のもの、台本と歌詞を書いたのは、前作と同じくアドルフ・グリーンとベティ・キャムデンのチームです。その時に彼らが元にしたのが、ルース・マッケニーという人が書いた自伝的な小説をジョセフ・フィールズとジェローム・チョドロフが脚色した戯曲、「マイ・シスター・アイリーン」です。これは1940年に上演され、1942年には映画化もされています。
その映画で主人公を演じたロザリンド・ラッセルが、このバーンスタインのミュージカルの初演では同じ役を演じています。そのオリジナル・キャストによる録音は、こちらで聴くことが出来ます。
ラトルにとっては、これが2度目の録音となります。1度目はEMIのために1998年の6月に録音されました。彼のバーミンガム時代ですね。ただ、この時のオーケストラはそのバーミンガム市交響楽団ではなく、「バーミンガム・コンテンポラリー・ミュージック・グループ」という名前になっています。
もちろん、この作品は「オペラ」ではなく「ミュージカル」ですから、上演される時のオーケストラは非常に少ないメンバーになるはずです。彼の3番目のミュージカルでバーンスタイン(正確には、オーケストレーターのシド・ラミンとアーウィン・コスタル)が指定したメンバーの人数は31人でしたから、ここでもそのぐらいの人数で演奏されるスコアだったのでしょう。もし、ラトルがそれに近い編成で演奏していたのだとすれば、とても「交響楽団」とは呼べないでしょうね。
しかし、今回の演奏では、「ロンドン交響楽団」という名前がどんどん書いてありますし、「この録音の時のオーケストラのメンバー」という詳細なリストまでブックレットには掲載されています。それによると、弦楽器は12型ですから、ちょっと小振りですが、管楽器は本来のマルチ・リードではなく、きちんと専門の楽器を別々の人が演奏しているようですからしっかり「交響楽団」になってます。ただ、ここで加わっている大量のサックス群とドラム・セットは、元々オーケストラにはいませんから、エキストラが参加していますけど。
物語は、オハイオの田舎に住んでいた小説家志望のルースと女優志望のアイリーンという姉妹が、大都会ニューヨークにやって来て様々な人と出会い成長していくという、まるで「朝ドラ」のような展開のお話です。このミュージカルは2010年に日本でも(日本人によって)上演されていますが、その時の上演時間は2時間半超だったそうです。このラトルのコンサートではどのような形だったのかは分かりませんが、このSACDでは音楽の部分だけが集められて、1時間10分に収まっていますから、それほど長くはありません。とは言ってもその分のセリフがまるまるカットされているのでしょうから、これを聴いただけではそのストーリーの流れはほとんど分からないでしょうね。ここで対訳も何もついていないのは、そのようなことを鑑みてのことだったのでしょうかね。
ですから、このSACDではバーンスタインの音楽をストレートに味わうことが出来ます。全体の雰囲気は、物語のコミカルさを反映してかなり明るい、というかノーテンキなビッグ・バンド・ジャズの世界です。ただ、時折、先ほどの「3番目」のミュージカル、「ウェストサイド・ストーリー」を思わせるようなキレの良いダンス・ナンバーが入っているのが魅力でしょうか。それは、あちらの「マンボ」につながる「コンガ!」と、「クール」の先駆けの「スウィング!」でしょうか。
ルース役のアンプレスは、まさにハマり役ですが、アイリーンにデ・ニースを使ったのはあまりにももったいないような気がします。

SACD Artwork © London Symphony Orchestra

by jurassic_oyaji | 2018-09-18 21:46 | オペラ | Comments(0)