おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
BEETHOVEN/Piano Concertos 4 & 5
c0039487_23100634.jpg



Nicholas Angelich(Pf)
Laurence Equilbey/
Insula Orchestra
ERATO/0190295634179


かつて、ロランス・エキルベイは、自身が作った「アクサンチュス」という合唱団とのアルバムをたくさんちゅくって(作って)いました。ですから、彼女は合唱しか指揮ができない「合唱指揮者」だとずっと思っていたのですが、2014年に録音したモーツァルトの「レクイエム」では、なんとその2年前に作った自らのオーケストラ、「インスラ・オーケストラ」の指揮をしていましたね。しかも、そのオーケストラはピリオド楽器を使っていたのですから、驚いてしまいました。
ただ、その時はあくまで主役は合唱団でしたから納得は出来ましたが、今回は合唱が全く入らないピアノ協奏曲、しかもベートーヴェンの「4番」と「5番」という王道中の王道のピアノ協奏曲のオーケストラを指揮しているではありませんか。またもやびっくりです。
彼女も先日のミンコフスキ同様、NAÏVEから ERATOに変わってしまったアーティスト、どちらのレーベルの趣味なのかは分かりませんが、このジャケットにあるそのベートーヴェンの肖像画は、なんかとても爽やかな感じですね。これらの協奏曲が作られたのは1805年から1809年にかけてですから、1770年生まれのベートーヴェンは30代後半、実際はこんな感じの若々しさだったのかも知れませんね(ということは、このブックレットに書いてある通り、再来年の2020年は彼の「生誕250年」ということになるのですね。個人的には、オリンピックよりもこちらの方がそそられます)。
このピアノ協奏曲が作られた時期には、交響曲では「4番」、「5番」、「6番」が作られています。まさに彼の作曲家としての黄金期ですね。当然、この2曲のピアノ協奏曲はコンサートもレコーディングもおびただしい数のものが存在していますから、そこで注目を集めるためには何らかのセールスポイント(「奇策」とも言う)が必要になってくるのでしょう。そこで、エキルベイとピアニストのニコラ・アンゲリッシュは、ピリオド・オーケストラとモダン・ピアノを協演させることにしました。ただ、いくらなんでも現代のスタインウェイではあまりにもアンバランスですから、「1892年に作られたプレイエル」というのを持ってきました。これは、ベートーヴェンの時代の「フォルテピアノ(=ピリオド・ピアノ)」とは一線を画した新しい楽器ではありますが、まだまだ鄙びた音色を残していて、ピリオド・オケとの共演もそれほど違和感がないものなのでしょう。何よりも、「この楽器だったら、ベートーヴェンが表現したかったことが完全に伝えられるだろう」という指揮者とピアニストの思惑が、ここには込められているはずです。
確かに、「4番」がピアノ・ソロで始まった時に、そのなんとも軽やかで輝きのある音には、先ほどの「爽やかな」ベートーヴェン象が眼前に広がりました。そこに入ってくるバックの弦楽器も、こちらはもちろんガット弦のソフトな感触でそのピアノを包み込みます。少なくとも、このあたりまでは音色的にはこの19世紀初頭と19世紀末とのコラボは成功しているかのように思えます。
しかし、「5番」になると、ピアノとオーケストラの間になにか相容れない溝のようなものが感じられるようになってきました。音色はソフトでも、ピアノはメカニカルな面では堂々たる押し出しを誇っていて、まさにベートーヴェンの時代を超えた大きな音楽を作ろうとしているのですが、オーケストラがなんともサロン的なまとまりに終始しているのですよ。特に木管パートの主体性のなさといったら、もう歯がゆくなってしまうほどです。例えば第2楽章でフルートがテーマを吹くシーンでは、ピアノに隠れてそのメロディが全然聞こえてきません。エキルベイは、「大ホールでも通用するようなピリオド・オケ」を目指しているのだそうですが、そもそもそのような用途に対応していない楽器を使っているのですからそれは無理なことだとは気が付かないのでしょうか。

CD Artwork © Parlophone Records Limited

[PR]
by jurassic_oyaji | 2018-10-16 23:12 | オーケストラ | Comments(0)