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STRAVINSKY/The Rite of Spring, Funeral Song etc.
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Gustavo Gimeno/
0rchestre Phioharmonique du Luxembourg
PENTATONE/PTC 5186 650(hybrid SACD)


グスターボ・ヒメノは、いま最も注目されているスペイン生まれの若手指揮者です。「若手」とは言っても生まれたのは1976年ですから、すでに40歳を過ぎたおっさんですけどね。まだ萎びてはいません(それは「ヒモノ」)。
元々はロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の打楽器奏者として音楽家としてのキャリアをスタートさせたヒメノですが、やがて指揮者に転身、ヤンソンス、ハイティンク、アバドなどのアシスタントを務める中で、彼らから多くのことを学びます。
これまでにロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を始め、クリーヴランド管弦楽団、ボストン交響楽団、ウィーン交響楽団、スウェーデン放送交響楽団、サンタ・チェチーリア音楽院管弦楽団、マリインスキー管弦楽団との客演指揮を果たし、2015年からはルクセンブルク・フィルの音楽監督に就任して、現在に至っています。
彼は2013年に日本でも指揮者デビューを果たしていますが、その時のオーケストラが仙台フィルだというのが、ちょっと興味をひきます。なんでこんな地方オケと、と思ってしまいますが、この時のコンサートは「ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ松島2013」というもので、震災復興のイベントとして、本来はクラウディオ・アバドが指揮をするはずだったものでした。ヒメノはアバドの代役に「抜擢」されていたのですね。そして、ルツェルン祝祭管弦楽団の「代役」が仙台フィル。
ヒメノとルクセンブルク・フィルとのアルバムは順調にこのPENTATONEレーベルからリリースされているようで、これを含めてすでにおそらく6種類のアルバムが出ています。もちろんすべてハイブリッドSACDでマルチ・チャンネルのサラウンド対応です。
今回のアルバムは2枚組で、ストラヴィンスキーの作品集です。このSACDを聴いてみようと思ったポイントは2つ。まずはそのハイレゾのサラウンドで「春の祭典」を聴いてみたかったこと。そして、ごく最近行方が分からなかった楽譜が発見されて話題を呼んだ若いころの作品を、実際に聴いてみたかったからです。
まずは、「春の祭典」です。これはもう、サラウンドで聴かれることを前提にして録音を行ったのではないか(もちろん、セッション録音です)と思わせられてしまうほどの、それぞれの楽器がくっきりと浮き上がってくるクリアな音でした。それは、手を延ばせばその奏者に届くほどのリアリティを持っています。
そんな音像の中で、ヒメノは実に巧みなバランスを保ちながら、それらの音をコントロールしています。それは、「指揮者」というよりは「バランス・エンジニア」の仕事ぶりのようにさえ感じられます。ですから、確かに音響的には非常にエキサイティングな振る舞いが聴こえてはくるのですが、なにか音楽的に感興をそそられることがあまりないのですね。この演奏からは高揚感のようなものがほとんど感じられず、したがってそれによって心が振るわせられることは決してありませんでした。
「春の祭典」より前、1909年に、師であるリムスキー=コルサコフの追悼のために作られた「葬送の歌」という曲は、初演は行われたものの出版はされず、その楽譜は行方不明になっていました。それが、2015年になって改修工事が行われていたサンクトペテルブルク音楽院の図書館で偶然発見され、翌年ゲルギエフ指揮のマリインスキー管弦楽団によって甦演が行われました。録音は2017年の8月にシャイー指揮のルツェルン祝祭管弦楽団によって行われています。今回のヒメノは、それに次ぐ録音でしょうか。
これは、何とも渋い曲で、ワーグナーのような響きがあちこちで聴こえてくる興味深いものでした。
ここまでが1枚目、2枚目になると作曲年代がずっと先になって、「カルタ遊び」、「バーゼル協奏曲」、「アゴン」といったアイロニーあふれるこじゃれた作品が並びます。こちらの方が、なにかヒメノのいいところが発揮できているような気がするのですが。

SACD Artwork © 0rchestre Phioharmonique du Luxembourg/PENTATONE Music B.V.

by jurassic_oyaji | 2018-11-10 22:11 | オーケストラ | Comments(0)