おやぢの部屋2
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「バラード」という形式です
 「かいほうげん」向けに、ゲーテの「魔法使いの弟子」のオリジナルのテキストを和訳して載せようと思い、ネットを探したら、さる高名なドイツ文学者の翻訳が見つかりました。まあ、そんな権威のあるものですから、これをそのまま使わせてもらおうと思ったのですが、どうも文体は古臭いしところどころ誤訳、とは言いませんが、ちょっと不正確なところも見つかったので、この際だから自分で翻訳してみようと思いました。それだったら著作権などを気にすることは全くありませんからね。
 それで出来上がったのがこれです。
 これは定型詩ですから、きっちり8行と6行で出来た連が全部で7個あります。当然脚韻が踏まれていますが、そこまで考慮すると安っぽい日本語のラップみたいになってしまうので、逐語訳にとどめました。それでも、多分に意訳の部分もありますので、深くは追及しないでください。
お年を召した魔法使いのお師匠様は
今日はどこかへお出かけ!
だから今は先生の霊たちは
おれの命令に従わないといけないのさ
お師匠様の呪文やしぐさ
そしてその使い方はチェック済み
おれの精神力で
お前たちをびっくりさせてやる
溢れろ溢れろ
大きく波打て
目印のところまで
水よ溢れろ
たっぷりの湧水で
泉になるまで注ぎ込め
さあ今度はお前だ 古びた箒よ!
その汚いルンペンのようなぼろ布を着ろ!
おまえには下男あたりがちょうどいい
さあおれの命令を果たせ
2本の足で立ち上がれ
頭を高く持ち上げろ!
急いであそこまで行ってこい
水瓶を持っていくのだぞ!
溢れろ溢れろ
大きく波打て
目印のところまで
水よ溢れろ
たっぷりの湧水で
泉になるまで注ぎ込め
見ろ やつは走って水岸に近づいていく
本当だ! もう水際に着いてしまったぞ
まさに電光石火だ
すぐにこちらに来て水をあける
もう2回目だぞ!
なんと たらいはもう満杯!
あらゆる器がいっぱいだ
水であふれかえっているぞ!
ストップ!ストップ!
おれたちは見届けたぞ
おまえの仕事ぶりを
よくやった!
あっ そうだった! なんてこった!
あの呪文を思い出せない!
ああ 魔法を終わらせる呪文
それは箒を元の姿にもどすもの
ああ やつはめまぐるしく走り回っている!
もうおまえは元の箒にはもどらないのか!
どんどん新たな水を
こっちに素早く運んでくる
ああ あちこちから水が襲ってきて
溺れてしまう
いや これ以上
放ってはおけないぞ
お前を捕まえなければ
いたずらにもほどがある
ああ!でも心配だ
なんて顔つきなんだ!なんて目つきなんだ!
おまえは悪魔だ!
この家全部を水に沈めるつもりなのか?
あらゆる入口から
水がすごい勢いで入ってくる
この邪悪な箒め
これが聴こえないのか!
おまえは元の棒にもどり
また静かに立っていろ
終わりにしたいのだが
そうはさせてくれないのか?
捕まえてやる
おとなしくさせてやる
そしてその古い木材の体を
鋭い斧で二つに裂いてやる
ほら また大急ぎでこっちにやって来た
おれはやつの上に飛び乗るだけさ
このいたずら小僧 すぐに倒れたな
この鋭い刃物をくらえ
やった うまく切れたぞ!
ほら 真っ二つだ!
これでやっと安心できる
一息ついたな
ああ! なんてこった!
二つに割れた箒が
すぐさま立ち上がって
下男になってしまった
それも 前よりでっかいやつに!
助けてくれ ああ!全能の神よ!
二人は走り回る! どんどん水を持ってくる
広間も階段も水浸しだ
なんて恐ろしい水攻めなんだ!
お師匠様! おれの叫びを聴いてください!
あ お師匠様がやって来た!
お師匠様 とんでもない災害です!
霊を呼び出したところ
もはや手に負えなくなってしまいました
(魔法使いの呪文)
「控えおれ
 箒よ!箒よ!
 元の姿に戻れ
 霊として動き回るのは
 目的があって この年老いた魔法使いに
 呼び出された時だけじゃ」
「バラード」という形式です_c0039487_21221677.jpg
 こんな挿絵も見つかりました。確かに箒は「二人」なんですね。
by jurassic_oyaji | 2018-11-11 21:24 | 禁断 | Comments(0)