おやぢの部屋2
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PAPANDOPULO/Flute Concerto, Harpsichord Concerto, Five Orchestral Songs
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Michael Kofler(Pic), Jörg Halubek(Cem), Miljenko Turk(Bar)
Timo Handschuh/
Südwestdeutsches Kammerorchester Pforzheim
CPO/777 941-2



ボリス・パパンドプロという、とても上手なおやじの楽団のような(それは「パパバンドプロ」)名前の作曲家のアルバムです。
この方は、1906年にギリシャ系の貴族の父親と、クロアチアの有名なオペラ歌手の間にドイツのボンの近くのホンネフ・アム・ライ(現在のバート・ホンネフ)というところで生まれました。しかし、3歳の時に父親が亡くなったため、母の実家のあるザグレブに移ります。
幼少のころから音楽的な環境で育ったパパンドプロは、地元のザグレブ音楽アカデミーを卒業しますが、そこの先生がストラヴィンスキーの知り合いであったことから、この大作曲家に会うことができ、そこでウィーンで学ぶように勧められます。彼は、1991年に亡くなるまでに450曲を超える作品を残しました。
ここで最初に演奏されているのが、1977年に作られた「ピッコロと弦楽オーケストラのための小さな協奏曲」です。これは、確かに演奏時間は15分という「小ささ」ですが、曲の雰囲気もとてもかわいらしいものです。何よりも、このピッコロというちょっと協奏曲とはあまり馴染まない楽器が使われるようになったいきさつが、とてもチャーミングなエピソードとして伝えられています。
ある時、パパンドプロと一緒にコンサート・ツアーに加わっていた若いフルーティストが、この大作曲家が「俺が作った協奏曲に使われていない楽器などないぞ」と豪語しているのを聞いて、勇気を出して「ピッコロのための協奏曲は、ありませんっ!」と言ったそうなのです。パパンドプロは一瞬たじろぎますが、それから数か月たったら、こんな素敵な「ピッコロ協奏曲」を作ってきて、その若いフルーティストに演奏させたのだそうです。
パパンドプロは実はピッコロという楽器は彼の作品の中ではよく使っていて、その特徴は熟知していたのですね。ですから、この曲はまさにピッコロの持ち味を存分に発揮したものに仕上がっていました。
第1楽章では、ピッコロによるまるで鳥の声のような軽々とした感じの、しかし技巧的なカデンツァが何度も現れる中で、それとは対照的な沸き立つようなダンスが登場しています。
第2楽章は、一転して寂しげな抒情性を表に出した曲想、しかし、それもとても技巧的なフレーズが伴ったものです。
そして最後の第3楽章は、まさにイケイケの3拍子のダンス、エンディングではさらにスピードアップして盛り上がります。
ソリストのコフラーは、ピッコロとはとても思えないような正確なイントネーションと音色で、見事にこの難曲を吹ききっていました。ブラヴォーです。
続いては、1966年にドイツのチェンバロ奏者で音楽学者でもあったハンス・ピシュナーのために作った「チェンバロと弦楽オーケストラのための協奏曲」です。これは、もろバロック時代の音楽の模倣によってできているような作品です。第1楽章の「トッカータ」は、まさにバッハの作品を思わせるような自由な楽想でチェンバロが軽快なテーマを披露しますが、その中にシンコペーションが入っているのが、ちょっとモダンな雰囲気を加えています。
第2楽章の「アリア」も、やはりバッハ風の装飾がたっぷりつけられたメロディアスな曲です。その中に、ほんの少し無調感が漂っているのが隠し味でしょうか。ただ、時折ロシア民謡の「トロイカ」の「♪走れトロイカ」というフレーズが聴こえてくるのが気になります。最後にはその「トロイカ」のテーマでチェンバロ・ソロがフーガを弾いたりしています。
最後の「ロンドー」では、骨太な音色が強調されているようです。このCDには何の表記もありませんが、おそらくここではこの当時の楽器「モダンチェンバロ」が使われていたのではないでしょうか。
最後の「5つの歌」は、3つの重たい曲と、2つの軽やかな曲が交互に現れます。その淡々とした歌い口は、なかなか魅力的です。ただ、ブックレットの対訳では、最後の2曲が逆になっています。

CD Artwork © Classic Produktion Osnabrück

by jurassic_oyaji | 2018-12-08 22:27 | フルート | Comments(0)