おやぢの部屋2
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WAGNER/Götterdämmerung
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Gun-Brit Barkmin(Brünhilde), Daniel Brenna(Siegfried)
Syenyang(Gunther), Eric Halfvarson(Hagen), Amanda Majeski(Gutrune)
Michelle De Yong(Waltraute), Peter Kálmán(Alberich)
中村恵理(Woglinde), Aurhelia Varak(Wellgunde), Hermine Hasselblöck(Froßhilde)
Jaap van Zweden, Eberhard Friedrich(Chorus)/
Bamberg Symphony Chorus, Latvian State Choir
Hong Kong Philharmonic Orchestra and Chorus
NAXOS/NBD0075A(BD-A)



2015年から始まったNAXOSによる香港フィルの「指環」ツィクルスの録音は、年頭の1月にコンサート形式で行った公演を収録して、同じ年の年末にリリースするという形で制作されてきました。そして、今回の「神々の黄昏」でめでたく完結です。これで、世界で初めて、ハイレゾ・サラウンド録音のBD-Aによる「指環」が完成したことになります(もっとも、映像としてのBDだったら、すでに同様のフォーマットは出ています)。
このレーベルはBD-Aのリリースに関しては、かなり初期の段階から手掛けていたようです。もちろん、それに備えてマルチチャンネルによるサラウンド録音も行い始めていたのでしょう。しかし、ある時期からは、BD-Aのリリースはぱったりと途絶え、この香港フィルの「指環」のツィクルスの途中で、それ以外のリリースは全くなくなってしまいました。ですから、おそらくこの「神々の黄昏」が、このレーベルにとって最後のBD-Aとなるのでしょう。こんなタイトルのアイテムで幕を下ろすなんて、なんて粋な引き際なのでしょうね。
今ではニューヨーク・フィルの音楽監督にもなってしまったヤープ・ヴァン・ズヴェーデンと香港フィルによる「神々の黄昏」のソリストは、これまで同様世界中から旬のワーグナー歌手が集められているようでした。あまり名前を聞いたことがない人もいますが、経歴を見るとそれぞれに立派なキャリアを誇っている人ばかり、なかなかの人がそろっているようでとても楽しみでした。しかし、序幕のノルンたちの歌が終わってメインキャストのジークフリートとブリュンヒルデの登場となった時に、そんな期待は全く裏切られてしまいました。
いや、ブリュンヒルデのグン=ブリット・バークミンは、ちょっと芯の細いところはありますが、逆に力で頑張りがちな今までのブリュンヒルデとは一味違った、とても新鮮な魅力を振りまいてくれていましたよ。問題はジークフリート役のダニエル・ブレンナです。これこそは、もろに力に頼った歌い方しかできない、今のワーグナー業界では全く通用しないどんくさいテノールではないでしょうか。最近では、いくらワーグナーだといっても、ただ声がでかいだけではとても使い物にはならなくなっています。かえって、たとえばフォークトのような全然軽い声でも、十分にワーグナー歌手として人気を得ることができるようになってしまいました(私は嫌いですが)。ですから、もはや最低でもカウフマンぐらいの正確な音程と豊かな表現力がないことには、トップに躍り出ることはできないのですよ。
もう一つ、残念だったのがラインの乙女たちです。既読にならなかったから、ではありません(それは・・・ライン)。この3人は「ラインの黄金」と全く同じキャストですね。そして、日本人の中村恵理さんがヴォークリンデを歌っています。彼女は前回はちょっとディクションで引っかかっていたのですが、今回は完璧に歌っていました。ところが、ヴェルグンデのアウレーリア・ヴァラクが全くの音痴なので、3人そろった時に全くハモらないのですね。これも、今となっては致命的。
でも、それ以外の人たちは、本当にすごい人たちばかりでした。グンター役の中国人、シェンヤンの知的な歌い方はこの役にはもったいないほど、対するハーゲン役のアメリカ人、エリック・ハーフヴァーソンは、地響きのするような深い声です。
そして、この作品だけに登場する合唱団が、とても素晴らしい声と、表現力で迫ってきました。なんたって合唱指揮がバイロイトのエーベルハルト・フリードリヒですからね。
もちろん、オーケストラも文句なし。やはり時代の最先端のワーグナーを聴かせてくれていました。それは、「葬送行進曲」での、決して叫ぶことのない、抑制された中から深い情感を湧き出させてくる演奏を聴けば、よく分かります。そこには、繊細さの中に「翳り」すらも感じることができる、格別な魅力がありました。

BD Artwork © Naxos Rights US, Inc.

by jurassic_oyaji | 2018-12-29 21:19 | オペラ | Comments(0)