おやぢの部屋2
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LJOS
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Fauna Vokalkvintett
2L/2l-151-SACD(hybrid SACD)



去年の11月ごろにリリースされていた、ノルウェー語で「光」という意味のタイトルの、クリスマスの曲を集めたアルバムです。当然、その年のクリスマスでの需要に間に合うように、去年の6月と9月に録音が行われていたのですが、あいにくクリスマス前にはなにかと忙しくて聴くことができませんでした。
ここで演奏しているのは、ノルウェーの5人組女声ア・カペラ・グループ「ファウナ・ヴォーカルクィンテット」です。銭湯でライブをやってはいませんが(それは「サウナ・ヴォーカルクィンテット」)。彼女たちはそれぞれ合唱団の指揮者や作曲家、あるいはトラディショナルな民族音楽のアーティストなどと、様々なジャンルから集まってきているようです。
このレーベルは合唱関係では多くの編成のものを出してきていますが、このようなタイプのアンサンブルというのはあまりなかったのではないでしょうか。彼女たちが録音している風景を見てみると、真ん中に立てられたサラウンドのアレイを囲むようにして歌っています。つまり、それを再生すると、聴いている人はあたかも彼女たちに囲まれた真ん中にいるように感じられることになるのですね。この人数だからこそ、そんな親密な体験を味わえるのでしょう。
もちろん、この2Lレーベルのことですから、これは単に物珍しさを狙ってのことではありません。今世紀初頭にDVDオーディオやSACDが登場して、「サラウンド再生」が可能になった時には、いち早くそのフォーマットを支持します。2005年にリリースされたSACDのライナーノーツで、レーベルの主宰者モーテン・リンドベリは「モノラル録音は白黒写真、ステレオ録音はポラロイド写真、サラウンド録音はリアルな肉体」と言い切っていますからね。これは、サラウンドになって初めて、その生々しい存在感を実際に再現できるという比喩なのでしょう。
そして、よりリアルなサラウンドを目指して、チャンネル数も増え、それに従ってメインマイクが設置されたアレイの形もだんだん進化してきました(ハイフンの後の数字はサブウーハーの有無ですから、チャンネル数には関係ありません)。

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↑5.1:1本のアレイの上にフロントに3本、リアに2本のマイクをセットします。
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↑7.1:より緻密な音場を実現させるために、マイクをさらに2本増やします(7.1.4からの合成)。
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↑9.1:上下の音場を再現するために、5.1の上にさらに4本マイクを加えます。
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7.1.4:同じように、7.1の上にマイクを4本加えます。


ということで、現在ではこの「11チャンネル」での録音が、このレーベルで採用している最高のフォーマットになっています。こうなると、もう5.1までしかサポートされていないSACDでは再生できませんから、メディアはBD-Aになります。
しかし、今回はたった5人のアンサンブルということで、あえて「5.0」のフォーマットを採用しています。これで、5人の声は、それぞれ1本ずつのマイクに主に収録されることになりますね。それを再生すると、見事にフロントに3人、リアに2人のシンガーが立っているように聴こえてくるのです。
ここに収録されている2曲目、「Jeg er så glad hver julekveld(クリスマスイブは幸せな気持ちに)」は、こちらに映像がありますから、それを見るとだれがどのパートなのかがよく分かります。まず、全員暗譜なのがすごいですね。
最初にリア左からベース(アルト)のパターンが始まり、それを受けてフロントセンターがソロを歌います。そこにフロント左がベースの裏打ち、フロント右がカウンターメロディを加えます。残ったリア右は、ソリストとのハモリを入れます。
こうして聴いていくと、彼女たちの声は、それぞれに特徴があることがよく分かります。それが、ソロの時とハーモニーの時とでは全く歌い方を変えて、とろけるようなハーモニーの上に個性的なソロが展開されています。
こんな美しい歌声に囲まれるのはまさに至福のひと時、今年のクリスマスまで毎日聴いても飽きないぐらいです。

SACD Artwork © Lindberg Lyd AS

by jurassic_oyaji | 2019-01-15 23:06 | 合唱 | Comments(0)