おやぢの部屋2
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Doppler Discoveries
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András Adorján, Emmanuel Pahud(Fl)
Jan Philip Schlze(Pf)
Arcis Hornquartett
FARAO/B 108104



このジャケットにはビックリさせられますね。これは、ブックレットにも掲載されている有名なドップラー兄弟のポートレート(↓)を忠実に真似たもの・・・だと最初は思いました。
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しかし、よくよく見てみると、これは元の写真の顔の部分だけを、ここで演奏しているパユとアドリアンの写真と差し替えているのですよ。ジャケットのサイズに合わせて、バックだけ横幅を広げているのが笑えますね。
それよりも、この「ドップラーの発見」というアルバムタイトルの方がとても気になります。なんせ最近CAPRICCIOから10枚にも及ぶ大量の全集がリリースされていて、その中には「世界初録音」がたくさんあったというのに、さらにそれ以上の「新発見」があるというのでしょうか。
たしかに、今回のアルバムではその「新録音」が4曲ある、とされていました。そして、それに関してはここで演奏しているアドリアンが、自身が執筆したライナーノーツの中で詳しく述べています。そもそも、このアドリアンという人はドップラーの研究では定評があって、1960年代から多くの作品を「発見」し、楽譜の出版や録音を行っていたぐらいですからね。エネルギッシュなんですね(それは「アドレナリン」)。
今回の「発見」の最大のサプライズは、「2つのフルートとピアノのためのソナタ Op.25」という作品でしょうね。ドップラー兄弟の兄の方のフランツは、作曲家としてオペラをはじめとして多くの作品を残していますが、「フルートソナタ」というタイトルの作品は聞いたことがありません。そもそも「Op.25」と言ったら、フルーティストのレパートリーとしては「ハンガリー田園幻想曲」に次いで演奏頻度の高いあの「アンダンテとロンド」の作品番号ではありませんか。
アドリアンによれば、そもそも「Op.25」としてフランツ・ドップラーが出版社に送った楽譜は、4つの楽章から成る立派な「ソナタ」だったのだそうです。それを、印刷される前に後半の2つの楽章だけの形で出版して欲しいという指示があり、それに従って印刷された楽譜が「アンダンテとロンド」だったのです。なぜそんなことになったのかはわからないのだそうですが、この部分が弟のカールの作ったものだったからというのが、アドリアンの見解です。
その「第1楽章」は、演奏時間が7分半という、堂々たる作品です。キャッチーなメロディが次々と現れて、とても魅力的、「第2楽章」はかなり激しいテイストのメヌエットですが、中間部のトリオは華麗です。とは言っても、すでに残りの2つの楽章で完結している印象がとても強いこの作品ですから、今更こんなものがくっついても「余計なもの」としか思えません。
「ハンガリー田園歌~2つのフルートとピアノための幻想曲」というのも、初めて音になった作品です。ここでは、有名な「ハンガリー田園幻想曲」の冒頭のテーマがそのまま聴こえてきます。こちらの方が先に作られていたのでしょうか。
もう一つの世界初録音は、1879年にフランツ・ヨーゼフ1世の銀婚式のために作られた音楽劇「祖国より」です。各地の民謡などを集めた楽しい曲ですが、もともとはピアノ用に編曲されていたものを、このアルバムでの伴奏者ジャン・フィリップ・シュルツェが2本のフルートとピアノのためにさらに編曲したものです。ですから、「初録音」は当たり前のことですね。
アドリアンとパユは、親子ほど年が離れているにもかかわらず、そのデュエットはとても息の合った素晴らしいものでした。アドリアンとしては、かつて自分が発見した「2つのフルートのための協奏曲」をERATOに録音した時の相手、父親ほど年上のランパルの姿を、反対側の視点でパユに感じていたのだそうです。というか、実際にそのERATO盤の裏ジャケットになっていたランパルとのツーショット写真をバックに、同じポーズでパユをランパルに見立てた写真が、ブックレットの最後を飾っていますからね。これはもちろん、ジャケットの「コスプレ」と呼応するものです。
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ERATO/STU 71039(↓)
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CD Artwork c Deutschlandradio/FARAO Classics

by jurassic_oyaji | 2019-03-26 20:39 | フルート | Comments(0)