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Live in Tokyo. 2016
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Denis Bouriakov(Fl)
石橋尚子(Pf)
LIVE NOTES/WWCC-7839


昨日、来日中のフルーティスト、デニス・ブリアコフのリサイタルに行ってきました。2009年にニューヨークのメトロポリタン歌劇場のオーケストラの首席奏者に就任したと思っていたら、いつの間にか(2015年)ロサンゼルス・フィルの首席奏者になっていたのですね。
メイン・プログラムは、なんとチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲をフルートで演奏する、というものでした。以前シベリウスを聴いた時もショッキングでしたが、今回はさらに難易度の高いチャイコフスキー、それが生で聴けたのですから、それはもう圧倒的、聴き終わった後はほとんどめまいがするほどのクラクラとした感じに陥ってしまいましたよ。低音から高音まで全くムラのない響き、どんなに細かい音符でもすべて聴き手に届けることができる信じられないテクニック、彼は間違いなく、並みのフルーティストとは一線を画した高みに到達しているのだ、と確信しました。
その時に会場で販売していたのが、このCDです。2016年の東京でのリサイタルのライブ録音でした。国内盤の新譜はほとんどチェックしていないので、こんなものがあったことをすっかり見逃していました。
この中には、おそらく当日の曲目が、アンコールも含めて全て収録されているのでしょう。ごく普通のフルート・リサイタルで演奏されるような曲が並んでいます。
最初は、かつては多くのフルーティストがこぞって演奏していたヘンデルのロ短調のソナタです。それは、とても端正な中にも、余裕をもってバロックのヴィルトゥオーシティを見せつけてくれるものでした。
そして、シャミナードの「コンチェルティーノ」、サン=サーンスの「ロマンス」、ユーの「ファンタジー」といった「定番」が続きます。もう、それらは、様々のレベルの演奏を耳にタコができるほど聴いてきましたが、まるで次元の違う音楽が聴こえてきます。完璧に磨きこめば、ここまでのものが出来るのかといいう驚きがありました。
そして、おそらくこのリサイタルのメインと思われる、フランクのソナタです。もちろん、これはヴァイオリンとピアノのための作品をフルートで演奏したものですが、ブリアコフの手にかかるともはやフルートのオリジナル曲としてしか聴くことが出来なくなってしまうほどです。これも、競合盤はたくさんありますが、その最上位に置かれるものでしょう。特に、ゆっくりした第3楽章の息も詰まるような緊張感は、たまりません。ただ、このトラックの1:13あたりから数秒間、録音機材のトラブルによるノイズが聴こえます。ライブでの事故ですから仕方がありませんが、何らかのコメント(言い訳)は必要でしょうね。商品ですから、何もしないで良いわけはありません。
ここまでで、もう十分彼の魅力を堪能したと思っていたら、その後にもっとすごいものが待っていました。それは、サン=サーンスが作った「6つの練習曲 Op.52」というピアノのための練習曲集の6曲目「ワルツの形式で」を、ブリアコフ自身がフルートとピアノのために編曲したものです。ここで、ブリアコフは昨日のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と同じ「クラクラ感」を味わわせてくれたのです。フルートでは絶対に吹けないだろうということを、軽々とやっているのですから、もう脱帽です。
その後のアンコールでも、ショパンの「幻想即興曲」をピアノとフルートに編曲して演奏してました。彼の場合は、そのような編曲のスキルもあるのですから、もうなんだって彼にしか吹けないような超難度の曲に仕上げることが出来てしまいますね。
それはそれですばらしいことなのでしょうが、昨日のチャイコフスキーでは、真ん中の楽章があまりにあっさりしていたのには、軽い失望感がありました。これは、シベリウスのヴァイオリン協奏曲を聴いた時にも感じたことです。
そもそも、そういうものはヴァイオリン以外では演奏できないのかもしれませんね。いや、ゴールウェイだったら、あるいは完璧な演奏が聴けたかも。

CD Artwork © Nami Records Co., Ltd

by jurassic_oyaji | 2019-06-11 22:37 | フルート | Comments(0)