おやぢの部屋2
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LISE DAVIDSEN
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Lise Davidsen(Sop)
Esa-Pekka Salonen/
Philharmonia Orchestra
DECCA/483 4883



1987年生まれと言いますから、今年で32歳になるノルウェーのソプラノ歌手、リーゼ・ダヴィドセンのデビューアルバムです。ジャケットには彼女のアー写だけ、タイトルも彼女のフルネームという、まさに「デビュー」にふさわしいデザインですね。なんたって、ルックスが抜群ですからね。太ってませんし(それは「デブー」)。彼女は2018年5月にDECCAとの専属契約を結んでいますが、この破格の扱いからは、この歌手がいかにこのレーベルで期待されているかが分かります。
彼女は、まずはメゾ・ソプラノとしてキャリアをスタートさせたようです。その頃には、「ノルウェー・ソリスト合唱団」のメンバーとして活躍していました。この合唱団は、今ではBISレーベルから多くのアルバムをリリースしていますが、彼女が在籍していたのはその前のようですね。ただ、2016年にリリースされた「As Dreams」というアルバムでは、1曲だけソリストとして参加していました。そのほかにも、DACAPOやCHANDOSといったレーベルからも、彼女が参加したアルバムは出ていました。
その頃にはもうソプラノに転向し、多くのオペラハウスで歌うようになっていました。そして、今年の夏には「タンホイザー」のエリーザベトとしてバイロイト音楽祭でのデビューを飾ることになっています。
彼女のデビューアルバムに選ばれたのは、その「タンホイザー」の中からの有名な2つのアリアと、リヒャルト・シュトラウスの「4つの最後の歌」をメインとした曲目です。というよりは、シュトラウスとの因縁がかなり重視された選曲のようですね。というのも、「タンホイザー」は、彼が1894年にバイロイトで指揮をした演目で、その時にエリーザベトを歌っていたソプラノ歌手に一目ぼれして、その数週間後には結婚してしまうのですからね。
そして、このアルバムで歌われているシュトラウスの歌曲は、その妻パウリーネのために作られています。
さらに、「4つの最後の歌」に関しては、1950年にロンドンで初演されたときと同じオーケストラ、フィルハーモニア管弦楽団がこのアルバムでは演奏しています。その時の指揮者はフルトヴェングラーだったのですが、ソロを歌ったのはキルステン・フラグスタート、ダヴィドセンと同じノルウェーの大歌手でした。
シュトラウスは、この前年に亡くなっているので、この曲を実際に聴くことはできませんでした。タイトルも、「4つのオーケストラ伴奏の歌」だったものが、出版社によって「4つの最後の歌」と変えられてしまいました。実際はこれが「最後」ではなく、もう1曲、このアルバムでも歌われている「Malven」が作られているというのに。
サロネンの小気味よいビートに乗って最初の曲、「タンホイザー」の殿堂のアリアが聴こえてきたときには、まるで、同じ北欧のソプラノ、ビルギット・二ルソンの再来かと思ってしまいました。その声は、ずっしりとした重みがあるにもかかわらず、高い音はいともしなやかに伸びていたのです。そこには、ドラマティック・ソプラノにありがちな過剰なビブラートは全くありませんでした。そんなものには頼らなくても、いくら高い音でも楽々と出せてしまうのでしょうね。バイロイトでは、間違いなく大喝采を浴びることでしょうし、世界中のオペラハウスに立つ彼女の姿は、これからは頻繁に目にすることができるようになるのでしょうね。
シュトラウスの「アリアドネ」の中の「Es gibt ein Reich」とか、オーケストラ伴奏の歌曲を聴いていると、今度は同じレパートリーでよく聴いていたジェシー・ノーマンを思い出しました。ノーマンほどの桁外れのパワフルさこそないものの、表現の巧みさにはとても良く似たところがあるような気がします。いずれのフィールドでも、彼女の活躍は約束されています。
このアルバムでは、バックのオーケストラの木管やホルンが、歌手のピッチとの間にほんの少し違和感があるのが、ちょっとした瑕疵でしょうか。

CD Artwork © Decca Music Group Limted

by jurassic_oyaji | 2019-06-18 07:33 | 歌曲 | Comments(0)