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C.P.E.BACH/Works for Flute and Piano
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Francesca Pagnini(Fl)
Annibale Rbaudengo(Pf)
VERMEER/40022



VERMEER(フェルメール)という、オランダのとても有名な画家の名前がレーベル名となっているイタリアのレーベルから、こんなCDが出ていました。リリースされたのは今年の6月で、海外のサイトでの価格は15ドルほど(国内のショップでは扱ってないようで)、ですから、そもそもがかつてのNAXOSのような「廉価盤」専門のレーベルなのでしょう。
注目したのは、エマニュエル・バッハのソナタを「ピアノ」と演奏しているというところでした。最近ではこの時代の音楽はそのころはまだなかったそのような楽器を使うことは絶えてなくなっていますから、こういう編成はとてもレア、もちろんフルートもモダンフルートでしょうから、個人的には馴染みがありますし。
しかも、現物を手にしてみると、その曲目がさらにレアなものでした。そこでのオリジナルの「ソナタ」は、とても有名な無伴奏のイ短調の「ソナタ」だけで、それ以外は、「ヴァイオリン・ソナタ」をフルートで演奏したり、オリジナルはフルートとヴァイオリンと通奏低音のための「トリオ・ソナタ」だったものを、フルートとピアノで演奏したりしていたのでした。
調べてみたら、ここでフルートを吹いているフランチェスカ・パニーニというおいしそうな名前の人は、このレーベルでベートーヴェンの初期のヴァイオリン・ソナタを、やはりフルートで演奏していました。そういうことが好きなのでしょう。
とにかく、全く素性のしれないフルーティストだったので、まずはどんな演奏をする人なのかを知るために、無伴奏の「ソナタ」を聴いてみることにしました。何度も聴いたことも、そして自分で吹いたこともある曲なので、細かいところまでよく知ってますからね。
まず、最初の低音の「A」がとても立派な音だったので、このフルーティストは一応正規の教育を受けて、正しい音の出し方を学んでいた人であることは分かりました。確かに、低音から高音まで無理なく芯のある音は出すだけのスキルは持っているようです。ですから、楽譜通りの音が次々と何の破綻もなく出てくるという点では、何の問題もないようでした。
ただ、なにか、ちょっとした「間」の取り方がとても不自然で、何の意味を持っているのか全く伝わってこないんですね。それと、この曲の最初の楽章は、低音と高音で音色や表情を変えないといかにも平板な演奏になってしまうのですが、彼はそのあたりの配慮にも全く欠けているようでした。
続く、テンポが速くなる楽章になると、明らかにメカニカルの面での基礎訓練が不足していることが露呈されてしまいます。ということは、エマニュエル・バッハに必要な疾走感などは、そもそも表現できるスキルがないということになりますね。
こうなると、ピアノ伴奏が入った時にどんなことになるか、逆の意味での期待が高まります。まずはヴァイオリン・ソナタ(Wq 71)です。ピアノの前奏に続いて入ってきたフルートは、まず、無伴奏の時のしっかりした音すらも、かなり怪しいものに変わっていました。ピッチも伴奏と合っていないような気もします。ゆっくりした楽章などでは、息の長いフレーズは切れ切れになってしまって、美しさなどさらさら感じることができないほどのお粗末なものになってしまいます。ですから、このあたりになってくると、もしかしたら、これは「あれ」なのではないか、と思うようになってきました。音痴なのカーネギーホールでリサイタルを開いたりしたフローレンス・ジェンキンス(映画にもなりましたね)のような「あれ」ですよ。
それが分かってしまうと、そのあとの「トリオ・ソナタ」(Wq 143, 145, 150)は「ネタ」としては一級品となります。オリジナルの2つのソリストのうちのヴァイオリンのパートをピアノの右手に置き換えたという編曲ですが、そこでフルートがメイン・テーマではなく伴奏を演奏している時などは、もう腹を抱えて笑うほかありません。まさに「珍盤」です。

CD Artwork © Vermeer

by jurassic_oyaji | 2019-07-04 21:20 | フルート | Comments(0)