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PRAETORIUS/Missa Tulerunt Dominum meum
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Patrick Allies/
Siglo de Oro
DELPHIAN/DCD 34303(BD-A)



1年ほど前に、「DCD 34208」という品番でリリースされたCDと全く同じジャケットで、曲目も演奏家も全く同じBD-Aがリリースされました。そのようなメディアでのリリースは、このレーベルでは初めてのことです。
もちろん、CDは2チャンネル・ステレオだけですが、BD-AではさらにDolby Atmos、Auro-3D、DTS HD MAという3種類のサラウンド音源が加わっています。もちろん、録音フォーマットはハイレゾの192kHz 24-bitです。
ですから、普通だと、サラウンドで録音されたものをミックスダウンしてCDのマスターにしたのだと思ってしまいますが、これはどうもそんな単純なことではなかったようです。そもそも、それぞれのブックレットのクレジットを見ると、録音スタッフそのものが異なっているのですからね。
CDのクレジットはこちらです。

Recorded on 6-8 September 2017 in the chapel of Merton College, Oxford
Producer/Engineer: Paul Baxter
24-bit digital editing: Matthew Swan
24-bit digital mastering: Paul Baxter

それに対して、BD-Aのクレジットは、録音日と録音会場は変わりませんが、

Producer: Paul Baxter
Engineer: Hyunkook Lee
Session Assistant: Connor Millns
192kHz 24-bit editing: Matthew Swan
192kHz 24-bit mixing and mastering: Hyunkook Lee

このように、こちらでは録音エンジニアとして「Hyunkook Lee(イ・ヒョンクク)」という人が登場しているのです。この韓国系の音響学者は、イギリスのハダースフィールド大学の「APL(Applied Psychoacoustics Lab)」という組織で、サラウンド用の「PCMA(Perspective Control Microphone Array)-3D」というマイク・アレイを開発した方です。これは、サラウンドの新化形である「3Dサラウンド」、つまり、平面的に周りから音が聴こえてくるのではなく、もっと多くのスピーカーを使って「高さ」まで表現できるようにしたシステム(「Dolby Atmos」とか「Auro-3D」というのが、その実際のフォーマット)に対応した、マイク・アレイです。すでに、「2L」などの先進的なレーベルでは、そのようなアレイを使った録音を日常的に行っているのは、ご存知のことでしょう。
Hyunkook Leeさんのアレイでは、2Lのように真ん中に1本だけ立てるのではなく、その後ろにさらに何組かのマイクが立てられています。
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これが、その実際のレイアウトです。そして、これが、まさにこのアルバムで実際に使われていたレイアウトなのです。
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この写真を見ると、音源から離れたところにあるマイクの一部が分かります。
そして、興味深いのは、そのアレイの他に、演奏者たちの前に立てられた何本かのマイクの存在です。これは全くの推測ですが、録音スタッフのクレジットがCDとBD-Aで異なっていたのは、そこで用いられていたマイクが異なっていたからなのではないでしょうか。つまり、BD-Aでは先ほどの図にあった11本のマイクによって録音されているのでしょう。2Lのレコーディングの時の写真などでも、マイクはアレイのものしか使われてはいませんからね。それに対して、CDの方はそれ以外の演奏者の前にある8本ほどのマイクによって録音されていたのではないでしょうか。
実際にお互いの2チャンネル・ステレオのモードの音を聴き比べてみると、それは全くの別物であることが分かります。なぜか、CDの方がマイクは近いのにオフ気味に聴こえますし、残響も深め、BD-Aでは、とても生々しい音で、残響はすぐに消えます。
もちろん、そんな素晴らしい録音に、この合唱団は見事に答えた素晴らしい演奏を聴かせてくれました。この「シグロ・デ・オロ」というパトリック・エイリーズに率いられた合唱団は、2014年にデビューしたばかり、これが2枚目のアルバムというとても「若い」団体ですが、それぞれのメンバーはまさに合唱のプロフェッショナルで、伸びのある声と、曇りの全くない美しいハーモニーを聴かせてくれています。
そんな、理想的な演奏と録音で、とても珍しいヒエロニムス・プレトリウス(有名なミヒャエル・プレトリウスとは別人)の、モテット「Tulerund Dominum meum(彼らはわが主を連れ去って)」のパロディ・ミサが堪能できますよ。さらに、別の作曲家のモテットももうちょっと

BD Artwork © Delphian Records Ltd

by jurassic_oyaji | 2019-07-18 22:39 | 合唱 | Comments(0)