おやぢの部屋2
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Origines
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Duo Kalysta/
Lara Deutsch(Fl)
Emily Belvedere(Hp)
LEAF/LM226



カナダの若い音楽家が結成したフルートとハープのデュオ、「デュオ・カリスタ」のデビューアルバムです。コーヒーを淹れてはくれません(それは「バリスタ」)。
フルーティストの名前はララ・ドイッチュ(という読み方ではないかもしれません)、ハーピストの名前はエミリー・ベルヴェデールです。大学の同級生だった2012年に二人で組んだ演奏にお互いが「化学変化を感じた」ということで、継続してこのメンバーで演奏活動を行うようになったのだそうです。そして、晴れてこのデビューアルバムが、今年の9月にリリースされました。それを携えて、来年には世界ツアーを敢行するのだとか、なんだかロックバンドのノリですね。果たして日本はその「世界」の中には入っているのでしょうか。
二人とも、活動の拠点はカナダ国内で、フルートのドイッチュは2016/17年のシーズンにはヴァンクーバー交響楽団のフルートとピッコロの副首席奏者を務めていたそうです。
彼女たちはこの「オリジンズ」というアルバムタイトルに様々な想いを込めているようです。まず、録音を行った場所が、二人が出会ったのと同じモントリオールだったということ、そして、カナダ人の作曲家の曲が2曲取り上げられているということ、そして、このアルバムがこれから世界に向けて様々な形で羽ばたこうとする二人のスタート地点となるということ、などです。
さらに、フルートもハープも、フランス音楽から強い影響を受けているということで、このアルバムではフランスの作曲家、ドビュッシーとジョリヴェ、そしてカナダ人の作品もやはりフランス音楽がベースになっているものが選ばれています。
まずは、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」です。オリジナルはオーケストラの作品ですが、それをジュディ・ローマンという人がフルートとハープのために編曲したものが演奏されています。フルートはとてもソフトな音色で、ビブラートも必要な場所で必要なだけかけるという、とても清潔な演奏が心地よく伝わってきます。ブレスも長いしテクニックも申し分ありません。ただ、この編曲では、ほとんどのテーマをフルートだけが演奏しているように聴こえてしまうので、ハープの存在感がちょっと薄らいでしまい、アンサンブルとしてはどうかな、という感じになってしまっていますね。
2曲目は、カナダの作曲家マレイ・シェーファーが2011年に作った「フルート、ヴィオラ、ハープのためのトリオ」です。これはもちろんドビュッシーの有名な「ソナタ」と同じ編成ですね。流れるような第1楽章、穏やかな第2楽章、そしてリズミカルな第3楽章からできていますが、当然のことながら、ドビュッシーへのオマージュが各所で聴こえてくる秀作です。それぞれの楽器が持ち味を存分に出せるように作られています。クレジットは何もありませんが、第2楽章ではフルートではなくアルトフルートが使われていて、その独特の渋い音色がとても魅力的です。
3曲目は、ヴァンクーバーを拠点に活躍しているジョセリン・モーロックという人が2005年に作った「Vestertine」という、フルートとハープのための曲です。このタイトルは「夜に開花する植物」のような意味を持っていて、神秘的な雰囲気が漂います。ここでも2つある楽章の1つ目では、最初はアルトフルートで演奏されていますが、ハープのソロの間に普通のフルートに持ち替え、さらに最後はまたアルトフルートに替わっています。
最後は、ジョリヴェの「リノスの歌」を、デュオにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが加わった、作曲家自身による室内楽バージョンが演奏されます。この曲になって、突然それまでの音とガラッと変わってしまうのは、録音場所がこれだけ別だからでしょう。それまでくっきり聴こえていたフルートが、ここではなにか存在感が薄くなってしまっています。それでこの編成ですから、最後までフルートが目立たないまま終わってしまうのが、ちょっと残念です。

CD Artwork © Leaf Music Inc.

by jurassic_oyaji | 2019-09-22 00:04 | フルート | Comments(0)