先日のオペラ「ヘンゼルとグレーテル」に関するトークの覚書の続編です。原作であるグリム童話と、それを元にしてフンパーディンクの妹のアーデルハイト・ヴェッテが書いた台本との間には様々な違いがあります。それを列挙してみます。まだ、それほど詳しくは調べていないので、いずれ内容は変わることがあるでしょう。
- 父親の職業
グリム:木こり
オペラ:ほうき職人
- 母親
グリム:継母
オペラ:実母(?)
- 二人が森へ行くきっかけ
グリム:継母が提案した口減らしのため。両親が一緒に連れて行って、二人だけを置き去りにする。1回目は失敗。2回目で成功。
オペラ:二人がミルクが入った壺を割ってしまったので、食べるものがなくなり、母親に森にイチゴを取りに行かされる。その後、食料をたくさん持って帰ってきた父親がそのことを聞いて、慌てて二人で森に探しに行く。
- 森の中の出来事
グリム:3日間森の中をさまよう。
オペラ:イチゴ取りの間に道に迷ってしまう。その日の夜に妖精が現れ、眠りに落ちると、その間にまわりで不思議なことが起こるが、二人は気づかない。
- 魔女が死んだあと
グリム:魔女の家にあった宝石などを持って、家に帰る。継母はすでに死んでいる。
オペラ:魔法が解けたため、ジンジャーブレッドに変えられていたたくさんの子供たちが元の人間に戻り、自由になる。そこに、ヘンゼルとグレーテルの両親が迎えに来る。
これは、2005年に兵庫芸術文化センターで上演された時の映像ですが、お菓子の家の後ろに手をつないで立っているのが、ジンジャーブレッドに変えられた子供たちですね。
ま、こんな感じでしょうか。これ以外の所はほぼ同じです。原作はかなり凄惨な話で、魔女だけではなく継母も悪役ですが、オペラではハッピーエンドになっていますね。
そういうことで、クリスマスの季節などによく上演されるようになっているのでしょう。前回挙げた3つの録画の中で、METの場合は、特別に親子連れを招待していたようでした。そして、歌詞もドイツ語から英語に直したものが使われていました。今回ニューフィルが使うKALMUSの楽譜では、表情記号が英語に変えられているのも、もしかしたらそのあたりと関係しているのではないでしょうか。