おやぢの部屋2
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レコライでEPをゲット
 以前、こちらで「EP」についてのことを書きましたが、それを今度の「かいほうげん」に転載しようと編集しているところです。丸ごとコピペをすれば出来てしまうので簡単だったはずなのに、その後色々調べてみると、もっと新しいことが分かったりしてきたので、大幅に改訂しなければいけなくなってしまいました。
 まずは、私はこの「EP」というものを実際に手にしたことはなかったので、一度はどこかで入手しようと思っていました。それで、中古レコード屋さんに行けば、その現物が置いてあるのではないか、と考えて、一番手近な「仙台レコードライブラリー」に行ってみたのです。かつては市役所のそばでCDなども扱っていましたが、今では二日町に移転し、完全に中古レコード専門店になっているところです。最近ではクラシックだけではなく、ジャズやポップスも扱っているようなので、もしかしたらEPも置いてあるかもしれませんからね。
 お店に入ってみると、すぐのところにシングル盤を集めたコーナーがありました。でも、それはみんなただのシングル盤のようでしたから、店長さんに「EPは置いてないんですか?」と聞いてみたら、「そこにある分だけですね」とそっけなく答えたので、やはりもうあんな珍しいものは置いてないのだな、と思い、せっかく来たので何か出物はないか、棚をチェックしていました。
 そうしたら、さっきの店長さんが「こんなのならありますけど~」と、奥の方から箱一杯に7インチ盤を入れて持ってきましたよ。「多分、シングル盤でしょうけど」と言ってますが、手に取ってみると、それは紛れもないEPでした。全部クラシックです。
 まずはこんなEMI盤です。
 しっかり「EXTENDED PLAY」の文字がありますね。
 レーベルにも、同じ文字があります。片面に歌が2曲入っているようですね。
 さらに、こんなレーベルのものまでありました。
レコライでEPをゲット_c0039487_22094564.jpg
 ARCHIVですよ。あそこがEPを作っていたなんて、初めて知りました。

 さらに、こんなデータ・カードまで、しっかり残っていました。さすがARCHIV。全部で9曲も入っているんですね。両面でしっかり16分入っています。。おそらく、発売された当時は日本では手に入れることは出来なかったのではないでしょうか。
 こんなのが、1枚どれでも500円ですって。店長さんの話だと、外国から中古LPを箱で買うと、おまけのようにしてこんなEPが付いてくるんですって。
 というわけで、いとも簡単にEPを入手することが出来ました。ただ、前のブログ記事では、ビルボードの英語の記事を読んで、「レコード面の突起をなくして、そこに溝を切った」というようなことが書いてあったので、それをそのまま書いたのですが、実際のEPでは、レーベルの大きさはシングル盤と全く変わっていませんでした。
 これが、シングル盤ですね。確かに、レーベルの大きさ、ひいては、レーベルの縁の突起の部分の場所はEPと変わりません。それを確かめるために、実物のEPを入手しようと思っていたのに、違うじゃないですか。
 ただ、これは3分ぐらいの曲ですから、レーベルの近くまで溝を切ってもやはり5分ぐらいしか入らないだろうな、という気はするのですが、上のEPの溝でも、まだレーベルまでの間には隙間がありますよね。
 そこで、元の英文を読み返してみると、「突起」だと思っていた単語は、どうやら盤面ではなく、溝のことのように思えてきました。それを「薄くする」ということは、あまり深く切らないで、溝の幅を細くすることなのではないか、と。そうすることによって、同じ面積でも溝の本数が増えて結局録音時間も長くなる、ということだったのでしょうね。
 結局、上の2枚だけを買ってきましたが、その「箱」の中にはこの2つのレーベルの外にDGとかTELEFUKNENなどのヨーロッパのレーベルの物がいっぱい入っていましたね。「EPはドイツで作られた」と書いてある古い文献もどこかで見たことがあります。もちろんそれは間違いですが、ある時期ヨーロッパではアメリカ以上にクラシックのEPが作られていたのでは、という気がしてきました。ただ、音質的には到底LPには太刀打ちできないようですけどね。
 そもそも、日本ではEPは作られていたのか、という疑問も、まだ解消できてはいません。ご存知の方は、どうかご教授を。

(11/22追記)
その後、ネットで検索したら、日本で作られたEPの画像がいくつか見つかりました。いずれも、開発者であるVICTORの子会社だった日本ビクターの製品です。少なくとも、1958年から、ステレオ初期の1960年代ごろまでは製造されていたようですね。ただ、他のメーカーのものは見つかりませんでした。
レコライでEPをゲット_c0039487_07212392.jpg
レコライでEPをゲット_c0039487_07213037.jpg


(11/30追記)
こちらに、さらに新情報を掲載しました。
(2023/4/3追記)
こちらに、日本でのEP事情を掲載しました。

by jurassic_oyaji | 2022-11-18 22:05 | 禁断 | Comments(14)
Commented by Shaolin at 2022-11-25 07:09 x
Extended Play 45rpms が日本でも一時期出ていたのは非常に興味深いですね。1938年に米RCA Victorの資本撤退があったものの、戦後も依然として米RCA Victorの技術(やトレンド)をフォローしていたのかもしれません。
一方、例の記事の後半に書いた “Little LP” (7インチ 33 1/3rpm コンパクト盤) は、のちに日本でも広く使われるようになりましたね。
7インチシングル盤(ドーナツ盤)と12インチLPの間として、EP が根強く残った国(英国やヨーロッパ)と、コンパクト盤がジュークボックス用に普及した国(米国)、コンパクト盤が英国の EP と同じ位置付けで普及した国(日本)と、それぞれの歴史の違いが興味深いです。
Commented by jurassic_oyaji at 2022-11-25 07:22
> Shaolinさん
こちらも見つけていただいて、ありがとうございました。
ビルボードの記事にあった
The additional playing time on the disks has been made possible by reducing
the thickness of the land(the raised portions of the disks)
という意味がいまいち理解できなかったので、現物を入手してみました。
Commented by Shaolin at 2022-11-25 10:32 x
はい、記事でご指摘いただいた点 “reducing the thickness of the land (the raised portions of the disks)” ですが、わたしの手元に1950年代のEPがいろんなレーベルのもので100枚くらいありますが、そのほとんどは通常の 45rpm と同様に、レーベル部分の盛り上がりが残ったままです。
元文章を素直に解釈すると、完全フラットまたは盛り上がりが少ない盤、ということになるんだと思いますが、手元の現物では普通に盛り上がりがあるのは気になっていました。1952年最初期に RCA Victor が出した EP が手元に1枚もないので、まだ判断しかねています。
EP 製造時に、この盛り上がりを減らさなくても(カッティングレベルを下げるなどして)45rpm シングルより長時間記録可能と分かってからそうしたのかも、というのも仮説の一つになるかもしれません。またなにか分かったら追記します。
Commented by jurassic_oyaji at 2022-11-25 11:02
> Shaolinさん
ご返信ありがとうございます。私が気になっていたのは、先ほどの引用文の続きで、
thereby permitting more grooves per inch
という文でした。
インチあたりの溝の本数が増えることが可能になる、というような意味でしょうから、
溝の幅自体を狭くすることになり、レーベル面の突起とは関係なくなってくるのでは、
と思っていました。
いずれにしても、最初期のEPはぜひ見てみたいですね。
Commented by Shaolin at 2022-11-27 20:39 x
確かにそうですね、その部分気になりますね。
以下、2022/11/27 現在の拙訳です。

>>>
The additional playing time on the disks has been made possible by reducing the thickness of the lands (the raised portions of the disks), thereby permitting more grooves per inch, and by cutting the grooves farther into the center of the record. In other respects the record is the same as the normal 45 platter.

再生時間の延長は、ランド(盤の盛り上がった部分)の厚さを薄くし、よって1インチあたりの音溝を多くし、また音溝をレコードのより中心部までカッティングすることで実現している。その他においては通常の45回転盤と同様である。
<<<

「盛り上がりの厚さを薄くし」と「gpi (grooves per inch) を増やす」が論理的に対応していないのが不思議な文章ですよね。その後ろの「より中心までカッティングする」とであれば呼応するのですが。

この記事を書かれた人があまり理解されてなかった可能性も留意しつつ、ますます1952年当時の RCA Victor の最初期EP盤を現物確認してみたくなりました。
Commented by jurassic_oyaji at 2022-11-27 21:16
私の場合の解釈なのですが、ネットの英和辞典で検索すると、「land」を「ライフルやレコードの溝」と訳しているものがありました。確かに、ミクロな見方をすれば、「raised portions of the disks」とも合致するのではないでしょうか。
ですから、「thickness of the lands」というのは、そのまま「溝の深さ」と考えることもできます。
いかがでしょうか?
Commented by jurassic_oyaji at 2022-11-27 21:41
すみません。正確には「ライフルやレコードの溝」ではなく、「ライフルやレコードの溝の山」でした。
Commented by jurassic_oyaji at 2022-11-28 11:06
再度、コメントを加えます。
貴サイトで紹介されている動画を見ると、カッティングに使うラッカー盤はセンターまで完全にフラットになっていますから、スタンパーも同様に、グルーヴ以外は何の凹凸もない薄いシートなのでしょう。
ですから、盤面の突起は、プレス機に由来するものとなりますから、センター近くまでカッティングを行おうとすると、プレス機の金型自体を交換する必要があります。それはかなり面倒な作業になるのでは、と思います。
それと、同じ動画ではレーベルの紙を何百枚と重ねてカットしているシーンも紹介されていましたが、レーベルの径が小さくなれば、あのカッターも新たに用意しなければいけません。
あくまで、VICTORはシングル盤と同じ生産ラインでのEPの製造を考えていたのでしょうから、そこまでの手間と投資は考えてはいなかったのでは、という気がします。
Commented by Shaolin at 2022-11-28 13:19 x
コメントありがとうございます。

古典的な書籍である

“The Recording and Reproduction of Sound”, Oliver Read, 1952, p.19, Howard W. Sams & Co., Inc., Indianapolis, Indiana

内で当該用語を定義している箇所を検索してみました。

>>>
The groove itself is that part of the material which is cut or chiseled out of the record.
The land is that part of the disc remaining uncut between grooves.
<<<

ですので、仰る通り「カッティングによって残った盛り上がりを減らす」すなわち「カッティングレベルを下げる」ということになり、全て意味が通じますね。

あの記事を書いた時に、現在のように世界中の過去の資料にアクセスできていれば、このような誤解は生じなかった気がします。

改めてご指摘感謝します。
Commented by jurassic_oyaji at 2022-11-28 16:41
> Shaolinさん
おお。そんな文献があったのですね。これで、すべてが納得できるようになりました。
ありがとうございます。
Commented by jurassic_oyaji at 2022-11-28 16:52
ご参考までに。

http://jurassic.fool.jp/snp/289/ep.pdf

私が参加しているサークル内の会報に最近寄稿したものです。
最後のページに、拙訳があります。
Commented by Shaolin at 2022-11-29 06:54 x
会報拝見しました。非常にコンパクトに要約されていて良い記事になっていると感じました。

また、当方のブログ記事において、今回の経緯と修正について追記しておきました。
Commented by jurassic_oyaji at 2022-11-29 07:25
> Shaolinさん
貴ブログ、拝見しました。
拙ブログへのリンクまで加えていただいてありがとうございます。
「意見交換」の間に、私の方でも様々な情報(例えば、12インチ盤と7インチ盤ではレーベル径が異なること)を得ることが出来ました。
中古レコード店の店長さんでも、「レーベルの大きさはLPもEPも同じですよ」とおっしゃってましたからね。
おそらく、大多数の日本人が知らない事実を発見できたことを感謝いたします。
Commented by Shaolin at 2022-11-29 08:40 x
いえいえ、出典や引用、謝辞を明記するのは当然のことですから(笑)

レーベル径については、現在シリーズ執筆中の「録音再生記録特性の歴史」的記事において、おそらく1、2ヶ月後に触れることになると思います。1920年代の世界初電気録音から順に膨大な資料を読み解きながら書いているので、近々公開する Pt.8 でやっと1942年放送局用トランスクリプション盤の標準規格に辿り着くスローペースですが、じきに戦後に入り、RIAA/IEC策定のいきさつなどに到達すると思います。その際規格としてのレーベル径も出てくるかもしれません(もし定義されていれば)。ではでは。