おやぢの部屋2
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MOZART/Le Nozze di Figaro
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Dietrich Fischer-Dieskau(Conte), Gundula Janovitz(Contessa)
Hermann Prey(Figaro), Edith Mathis(Susanna), Tatiana Troyanos(Cherubino)
Karl Böhm/
Chor und Orchester der Deutschen Oper Berlin
DG/486 3857(CD, BD-A)




モーツァルトの「魔笛」は、ほとんど最初に自分のお金で買ったレコードでした。そのころ世の中で大評判だった、1964年に録音されたカール・ベーム指揮のDG盤で、布張りの立派な箱に入った3枚組のLPセットでした。
それはもちろんステレオ盤でしたが、我が家にはステレオを再生できる装置などありませんでした。当時の庶民の一般的なレコード鑑賞法は、78回転盤を再生する針とLPを再生する針が表と裏についていて、それを回転させてどちらかのレコードを聴くようになっていたプレーヤーを、ラジオにつないで聴く、というものでした。もちろん、モノラルでしか聴けません。
そんな、おもちゃみたいな再生装置でも、そのラジオのスピーカーから聴こえてきた音は、とても素晴らしいもののように思えました。そんな環境で、それこそ「擦り切れるほど」聴いたものです。
ベームが、その次にDGに録音したモーツァルトのオペラが、この「フィガロ」だったのではないでしょうか。それは1968年のことです。その頃になると、自分でコンポーネント・ステレオを買えるようになっていました。ただ、「魔笛」に比べると「フィガロ」はそれほどなじみはなかったので、高いLPを買うよりは、FMで「エアチェック」をした方が安上がりだということで、「FM fan」でNHK-FMでこのLPの全曲放送があることを知り、それをオープンリールのテープに録音したのですよ。
ただ、なんせ、全曲は3時間近くかかるオペラですから、1本のテープには収まりませんから、たぶん、幕の間に解説が入っていたので、その時間にリールを裏返したり(4トラックで、往復でステレオ録音ができる規格です)、新しいテープに替えたりしていたのでしょうね。
そんな苦労までして録音したのに、それを聴き返してみると、あんまりいい音ではありませんでした。もしかしたら、テープの設定を間違えたのか、なんかとてもキンキンとした、高音ばかりが目立つ音になっていたのです。こういうことは、よくありました。テープのグレードによって、録音モードを変える必要があったのですね。
ですから、せっかくの録音も、それ以来聴くことはありませんでした。今では、そのテープはどこにあるのかもわかりません。
その録音がBD-Aでリリースされたと知った時には、そんな昔の苦い思い出が蘇ってきました。ですから、あれは本当はどんな音だったのかを知るためもあって、それを入手してみました。その前に、「魔笛」もやはりSACDやBD-Aになっていて、その音の素晴らしさを知っていましたから、こちらも大いに楽しみでした。
そんな期待は、裏切られることはありませんでした。それは、その、当時のトーンマイスターのギュンター・ヘルマンスがホームグラウンドのベルリン・イエス・キリスト教会で最高のコンディションのもとに録音した成果が、ストレートに伝わってくるものでした。
最も心配していたのはマスターテープの劣化です。確かに、ソプラノの高音あたりではほんの少し歪みっぽいところもありますが、全体としてはとても良好な保存状態を感じさせてくれるものでした。特に、弦楽器の瑞々しさは、最新のデジタル録音と比べても遜色のないものです。
この時代ですから、レシタティーヴォ・セッコでの伴奏に使われているチェンバロは間違いなくモダン・チェンバロのはずですが、ヴァルター・タウジヒが演奏するその楽器は、確かにそのような音に聴こえます。
演奏も、この頃のベームのスタイルである豊かな疾走感が存分に感じられるもので、歌手たちもしっかりその流れに従っている様子がうかがえます。
そんな中で、伯爵役のフィッシャー=ディースカウがちょっとそこにそぐわない存在感を示しているのが、気になります。彼は、誰しもが認める大歌手でしたが、モーツァルトの、例えば細かいメリスマなどはちょっと不得手だったのでは、などと思ってしまいます。そういえば、彼が録音した「ヨハネ受難曲」のアリアのメリスマは最悪でしたね。苦手なものもあったのでーすかう

CD & BD Artwork © Deutsche Grammophon GmbH

by jurassic_oyaji | 2023-06-03 20:31 | オペラ | Comments(0)