おやぢの部屋2
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GOUNOD/Ave Maria & Messen
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Martin Schmending(Org)
Toralf Hildebrandt/
Jugendkantorei Hösel
ARS/ARS 38 014(hybrid SACD)



グノーと言われて頭に浮かぶのは、やはり「アヴェ・マリア」でしょうか。あのバッハの「平均律クラヴィーア曲集」の最初のハ長調のプレリュードをそのまま伴奏に使って流麗なメロディーを作り上げたという、誰でもご存じの名曲です。ただ、この曲があまりにも有名になってしまったために、作曲家としてのグノーは今では殆ど「一発屋」と愚弄されているのではないでしょうか。
宗教音楽の作曲家としては、21曲ものミサ曲を残していることが知られています。それらは、オペラ作り(「ファウスト」が有名ですね)に忙殺されていた壮年時代には完全に中断されていて、青年期の1839年から1855年までと、晩年の1870年から1893年の間に作られています。これらのミサ曲、1855年に作られた「聖セシリアミサ」だけは比較的有名で録音も数多く存在しますが、その他のものはかなり限られた仲間内でのポピュラリティしか獲得できていないのではないでしょうか。そんな中、たまたまCDショップの店頭で目に付いたのがこのアルバムです。ジャケットを見る限りでは、演奏しているのはどうやら「若い」人たち、ただ、タイトルの冒頭にあの「アヴェ・マリア」とあるのが、ちょっと気にはなります。
実際に詳細なライナーノーツを読んでみると、歌っているのはドイツ、デュッセルドルフの近くにあるラティンゲン・ヘーゼルという街にある学校の生徒による合唱団でした。「4年生から13年生」ということ、日本ではどの辺の学年に対応するのかは分かりませんが、写真で見る限り小学生の低学年から高校生ぐらいまでのメンバー、そして「女の子」も入っています。ただ、レベル的にはこの合唱団はかなりお粗末、とりあえずきれいなハーモニーが聞こえる瞬間はありますが、それが美しさとなって聴き手の耳に届くにはまだまだやるべきことが残っている、という感じです。なによりも男声パートがあまりにも貧弱、パートソロが出てくるところはとりあえず聴かなかったことにしておきましょう。
グノーのミサには、色々な編成のものがあるのですが、ここではこのメンバーに合わせて混声4部にオルガンの伴奏が付くという形で、ゲルハルト・ラーベという人が編曲したものが演奏されています。先ほどちょっと嫌な予感がした通り、これはどうやら「アヴェ・マリア」を含めて、オルガンを伴った教会での合唱の響きをSACDで味わってもらいたいという、かなり「軽め」のコンセプトを持ったアルバムだったのですね。
そんな、ひたすら締まりのない演奏で、1890年に作られた「ミサ・ブレヴェ第7番」と、1855年の「ミサ・ブレヴェ」が続きます。均整のとれたフォルムと、ほどよい甘さを持った魅力的な曲であるのは分かりますが、もっときちんと訓練された団体が歌えば、さらに美しいのだろうな、などと考えながら、1846年という最も早い時期に作られた「ミサ曲第2番」が聞こえてきた時、何か懐かしい思いに駆られるものがありました。「Gloria」の途中で短調になった部分など確かに聴いたことがあります。というより、実際に歌ったことがあるような気がしてきました。それもそのはず、この曲は本来男声合唱とアド・リビトゥムのオルガン伴奏のために作られた曲、男声合唱には珍しいミサ曲として、しっかりレパートリーに定着しているあの曲ではありませんか。懐かしさが手伝えば、どんないい加減な演奏でも思いは残ります。非常に個人的な感慨のみで、このアルバムは存在価値を持つことになりました。
もちろん、なんの因縁も持たない人にこれを勧めることは決してありません。「目玉」であるはずの「アヴェ・マリア」のお粗末な編曲と、ソロを担当しているハルトムート・ロスくんの情けない声は、まさに爆笑ものなのですから。
by jurassic_oyaji | 2006-05-17 20:40 | 合唱 | Comments(0)