おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
Ein Mädchen oder Weibchen
 「のだめ」も3回目、音楽の使い方も大体読めるようになってきました。1回目こそ知らない曲までも含めての「クラシック」のてんこ盛りには感激したものですが、どうやらこれは普通のドラマで音楽を入れているものが、「クラシック」に変わっただけで、手法は基本的に変わってはいないようですね。つまり、調理のシーンには「アメリカンパトロール」とか、今回のように、悲しいさくらちゃんのシーンではコントラバス版「愛の悲しみ」(ゲーリー・カーでしょうか)のように、誰かの言葉を借りれば「ライトモチーフ」として使われているのですね。
 そうしてみると、モーツァルトのジンクシュピール「魔笛」の第2幕、フィナーレの前の20番のアリア・・・こう書くと、ちょっとかっこいいでしょう?なんのことはない、パパゲーノが「可愛い女の子か可愛い奥さんがいれば、うんと可愛がってやるのに」と歌う、あの有名な曲なのですが、これあたりはさしずめ「千秋の失意のモチーフ」でしょうか。先週初めて出てきたときは、せっかくのだめの分もとアジを2匹買ってみたら、峰くんに食べさせてもらっている現場を見てしまい、思わず魚屋にアジを投げ返すシーンでしたし、今週は久しぶりにミルヒが練習に来たと思ったら、「千秋に任せマース」といって帰ってしまうシチュエーションでしたからね。どちらも、キーワードは「裏切り」でしょうか。
 ところで、この曲、先週も書きましたが、イントロでグロッケンの音が聞こえます。こちらにあるように、楽譜には確かに「グロッケンシュピール」と書かれた部分が、今まではほとんどチェレスタで演奏されていたのですね。それが、オリジナルのグロッケン(つまり、鍵盤の付いたキーボード・グロッケンシュピール)が使われるようになるのはごく最近のことなのです。しかも、それはもっぱら「オリジナル楽器」のシーンで行われていたことで、モダン楽器(つまり、普通のオーケストラ)が使われているCDでこの楽器を聴くことはかなりまれなことでした。しかし、この「千秋のテーマ」に使われているのは、オリジナル楽器で演奏する際の半音近く低いピッチではなく、普通のモダンピッチですから、リンクの一覧表にあったように、そのCDはごく限られたものしかありません。そこで、どれが使われているのか、調べてみることにしました。この演奏、注意深く聴いてみると、ここでしか聴けない特徴があります。それは、間奏の前の最後のフレーズ、
Ein Mädchen oder Weibchen_c0039487_14192136.gif
赤枠で囲った音符で、ちょっと気取って前の十六分音符を短く歌っているのです(あ、バリトンですから、これはヘ音記号です)。「タン、タン」ではなく「タ、ターン」と跳ねているのですね。それを手がかりに「モダン楽器」のCDを片っ端から聴いてみたら、ありました。マッケラス盤で歌っているトーマス・アレンが、見事にこんな歌い方だったのです。声の感じもよく似ていますし、前奏でグロッケンがちょっと走り気味なところもそっくり、これに間違いないな、と思って、念のためテンポを確認してみました。ところが、これが合わないのです。この楽譜のフェルマータの場所までで、約1.5秒、「千秋」の方が早いのですよ。
 そうなってくると、この音源は一体どこから持ってきたものなのでしょう。本当にオリジナル?それだけは絶対あり得ないと思うのですが。少なくとも、歌っているのは日本人ではありませんし。
by jurassic_oyaji | 2006-10-30 23:16 | 禁断 | Comments(1)
Commented by 望 岳人 at 2006-10-31 19:42 x
トラックバックありがとうございました。
グロッケンシュピールがカリヨンだったとは!目から鱗でした。