おやぢの部屋2
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Daniel Powter
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Daniel Powter
WARNER/9362 43224 2
(輸入盤)
ワーナーミュージック・ジャパン
/WPCR-12496(国内盤)


昨年、最も売れた「洋楽」アルバムがこれです。カナダのシンガー・ソングライター、ダニエル・パウターのファースト・アルバムですが、この品番のものはジャケットはそのままで1曲新しい曲を追加した「ニュー・エディション」というバージョンです。国内盤では、さらにボーナス・トラックが1曲加わっています。
最近の「洋楽」シーン、なんか心を打つものが少なくなっているという気がしませんか?しっとりとした歌なんか恥だと言わんばかりの、とんがったビートに支配された息苦しいものが、まさに市場を席巻しているという有り様。もちろん、その主流はヒップホップ、それぞれが自分の好みで音楽を聴くこと自体は一向に構いませんし、ああいう音楽が好きな人のことを非難する気持ちは毛頭ありませんが、シーン全体がヒップホップ一色に塗りつぶされているという今の状況には、ちょっと耐えきれない気がしてしまいます。その尻馬に乗って、「邦楽」でも聴くにもおぞましい日本語ラップが蔓延しているのには、怒りすら覚える昨今です。
そんな中に現れたのが、このダニエル・パウターです。自らピアノを弾きながら歌うパウターの作り出す音楽は、そんな押しつけがましい喧噪とは無縁の、実に爽やかなものです。サウンドの基本はそのピアノを前面に押し出したアコースティックでシンプルなもの、所々に別のキーボードでちょっとした味を加えているあたりが、「今」を感じさせるものの、作り出される音楽はそれこそ80年代以前の懐かしいテイストが漂うものです。そんな、ある意味オーソドックスなアプローチが、全世界のファンを魅了した結果これだけのセールスとなったのでしょう。
シングルカットされて全世界でチャートを賑わしたヒット曲「Bad Day」なども、今時珍しい3分ちょっとの長さしかないというシンプルなもの、その構成もきっちり王道を行くスタイルです。ピアノの弾き語りであっさりAメロ(メージャー)とBメロ(マイナー)が歌われたあと、リズムが入ってそれがもう一度繰り返されるのはお約束、そして、あのキャッチーなフック(サビ)が現れます。2コーラス目はAメロを省いてBメロから始まるというのは、フックを早く聴かせたいという配慮でしょうか。そのあと転調してブリッジが出てくるのが素敵。そして、元に戻って3コーラス目はAメロ+フックで、フェイド・アウトしていきます。
これを聴いて思い出したのがエルトン・ジョンです。そもそもピアノの弾き語りという点である種の共通したイメージが感じられますし、メロディー・ラインやコード進行などどことなく似ているものはありませんか?アルバムの中の「Jimmy Gets High」などは更にエルトンっぽい仕上がりなのではないでしょうか。
もちろん、パウターの声はそんなエルトンの持つアクの強さなど一切ない、軽く爽やかなものです。ちょっとおっかない外観からは想像できない、その、どことなくシャイで憂いを秘めた声には、刺激的なサウンドに疲れ果てた現代人の心を、優しく包み込むような力が秘められているように聞こえます。しんしんと降り積もる粉雪のように(それは「パウダー・スノー」)。
昨年末に来日、東京フォーラムの一番大きなホールでコンサートを行いました。その模様をテレビで見たことがありますが、客席へ降りていって歌ったりするなど、アルバムのイメージとはひと味違った、ライブならではの盛り上がりを見せていました。そこでも見ることが出来た確かなピアノのセンスには、大人の音楽が感じられました。
by jurassic_oyaji | 2007-02-09 19:26 | ポップス | Comments(0)