おやぢの部屋2
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BRUCKNER/Symphony No.7
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Klaus Tennstedt/
London Philharmonic Orchestra
LPO/LPO-0030



このところ躍進著しいオーケストラの自主レーベルの一つ、ロンドン・フィルによる「LPO」からりリースされたこの正規CD、今までは「RARE MOTH」という海賊盤のレーベルからCD-Rで出ていたものです。しかし、実際に聴いてみると、「正規盤」とは言ってもなんだか怪しげな録音であることに変わりはありませんでした。1984年5月10日のロイヤル・フェスティバル・ホールでのコンサートをBBCが録音したものなのですが、マスターテープはアナログのようです。84年と言えば、レコード業界では殆どデジタル録音に切り替わっていましたが、放送の現場ではまだアナログ録音は残っていたはずですから、それ自体は別におかしなことではありません。しかし、この録音、とても84年に放送局が録音したものとは思えないほど、恐ろしく音が悪いのです。その要因はテープの回転ムラ、まるで安物のカセットテープで録音したような感じで、管楽器の高音などでは完全に音がひずんでいます。さらに、金管のコラールなども、大昔のモノラル録音のような情けない音になってしまっています。極めつけは、第4楽章のちょうど真ん中辺で聞こえてくる、まるで雨が降っているようなノイズです。これは、コンサート会場で聞こえたとは思えない唐突なもので、まるでラジオのチューニングがちょっとずれたときのホワイトノイズに酷似しています。ですから、もしかしたらこれは放送局のテープではなく、それが放送されたものを録音した、「エア・チェック」のテープが使われているのでは、という疑問が湧いてきます。そうでないとすれば、信じられないほど杜撰な保存状態に置かれていた放送局のテープだということになります。クレジットには「修復エンジニア」の名前がありますから、それは「修復」出来ないほどのものだったのでしょう。まあ、言ってみれば、「正規盤」であるか否かというのは単に権利の問題だけなのですから、どんなテープを使おうが全く咎められることはありません。このレーベルには音に関する期待はしない方が良さそうです。
「7番」の場合、「ハース版」であるか「ノヴァーク版」であるかという見極めは、非常に困難になっています。多くの指揮者は、自分で使っている楽譜に他の版の「いいとこ」を取り入れて、ただ聴いただけではどちらの版なのか別が付かないような状況になっているからです。このCDの場合も、ジャケットには「ハース版」という表記がありますからそれが指揮者による指定だと信じたいものです。実際に聴いてみると、確かにベースはハース版であることは間違いありませんが、ノヴァーク版からの流用があまりに多いので、果たしてこれを堂々と「ハース版」と呼んでも良いものか、かなりの逡巡が伴います。実際、すべての音源を版別に網羅したこのサイトではしっかり「ノヴァーク版」として分類されています。
将来、そんな不本意な扱いを受けることなどは知るよしもなく、テンシュテットの率いるロンドン・フィルは、ここでは極めてテンションの高い、息詰まるような演奏を繰り広げています。それは、なにかにとりつかれたような、ちょっと恐ろしいほどの迫力を持ったものでした。中でも、第2楽章こそは、この演奏の白眉に違いありません。後半に現れる長い長いクレッシェンドの息詰まるような高揚感などは、まさにエクスタシーへと向かう長い道のりそのものではありませんか。もちろん、それはノヴァーク版からの引用であるティンパニと打楽器による強打の瞬間に達成されます。その後の果て具合の、またなんと味わい深いことでしょう。もちろん、この楽章の最後は、ホルンが「ワーグナーのテーマ」を吹き終わってから弦楽器がピチカートに変わるという、「ハース版」の形になっています。
by jurassic_oyaji | 2007-12-08 22:17 | オーケストラ | Comments(0)