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ROPARTZ/Petite Symphonie etc.
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Pascal Verrot/
Orchestre de Bretagne
TIMPANI/1C1126



ロパルツという作曲家の名前を知ったのはだいぶ昔、知り合いの指揮者末廣誠さんがこの人の「レクイエム」を演奏しているという情報からでした。なんでも末廣さんはロパルツにはかなりの愛着があるらしく、「レクイエム」に関してはおそらく日本で最も多く演奏をしたことがあるはずだと豪語していましたね。
ロパルツはフランスのブルターニュ出身の作曲家、作品にはその地方の反映が多く見られますが、そのブルターニュの都市レンヌと姉妹都市となっているさる地方都市で、姉妹都市提携の何十周年かの記念のコンサートがその末廣さんの指揮で開かれることになりました。そこで演奏された曲目の一つが、ロパルツの「コロノスのオイディプス」組曲という、CDも1種類しか出ていないようなマイナーな曲でした。実は、このコンサートでは末廣さん自身が司会のアナウンサーの方とトークをするという構成だったのですが、その中で末廣さんはロパルツの曲のことを「とにかく地味~な曲です」と言いきっていました。もちろん、その後で「でも、それがすごく良いんですよね」と付け加えることも忘れてはいません。それが「生」ロパルツとの初対面でした。そこで体験したものには、やはりピクマル(あ、さっきの「レクイエム」の唯一の録音での指揮者です)のCDでは到底味わうことの出来なかった深いものがありました。幸せなことに、そのコンサートではアンコールでもやはりロパルツの「夕べの鐘」という、フルートが大活躍する素敵な曲も演奏されました。実は尻軽女の曲だったりして(それは「夕べの彼」)。
「コロノスのオイディプス」の唯一のCDを出しているフランスのTIMPANIというレーベルは、ロパルツに関しては最も多くのアイテムのリリースを誇っています。それらは殆どが世界初録音となるものばかりですが、1995年に出ていたこのアイテムも、すべて世界初録音、今回品番が新しくなってリイシューされました。この中で作曲者の故郷ブルターニュのオーケストラを指揮しているのが、さっきのコンサートでのオーケストラの現在の音楽監督であるヴェロであるだけでなく、そのコンサートで聴いたアンコール曲までが収録されているのですから、そこにはなにか深い縁のようなものを感じないではいられません。
そのアンコール曲を含めて3曲から成る「鐘の音」という作品だけが、このアルバムの中では初期のものに属します(と言ってもジャケットの「1813年」というのは100年早すぎ)。描写に具体性がありなかなかキャッチーなおもむきですね。フルートソロも、味わいのある豊かな低音を聞かせてくれています。その他の曲はすべて作曲家の晩年に作られたもの、「小交響曲」、「パストラーレ」、「田園のセレナーデ」、「ディヴェルティメント」というラインナップで、ロパルツが到達した透明感あふれる世界を聴かせてくれます。
3楽章から出来ている、ほんの20分ほどの「小交響曲」は、第1楽章や第2楽章で末廣さんの言う「地味さ」が全開となっています。声高にメッセージを伝えるということの一切ない、そこには混沌にも近い和声と旋律が広がります。そこからは、しかし、形には表しがたい不思議な力が心の深いところにやんわりとしみてくるのを感じることは出来ないでしょうか。ところが、第3楽章になった途端に襲ってくる躍動感に満ちたとても地味とは言えない楽想、このあたりの2面性も、ロパルツの魅力なのかもしれません。「パストラーレ」もやはり3楽章形式の実質的には「小交響曲」というべき作品ですが、ここでもフィナーレの意外性がたまりません。そして、溌剌とした「セレナーデ」と、瞑想的な「ディヴェルティメント」という、タイトルを間違えたのではないかと思わせるようなジョークっぽい趣味も、もしかしたらロパルツの魅力の一面なのかもしれませんね。
by jurassic_oyaji | 2008-02-04 22:30 | オーケストラ | Comments(0)