おやぢの部屋2
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2017年 10月 26日 ( 1 )
L'OPÉRA
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Jonas Kaufmann(Ten)
Sonya Yoncheva(Sop), Ludovic Tézier(Bar)
Bertrand de Billy/
Bayerisches Staatsorchester
SONY/88985390762


カウフマンの最新アルバムのタイトルは「 l'Opéra」。フランス語で「オペラ」ですが、このように固有名詞として使われると「パリのオペラ座」のことを指し示します。このオペラ座を舞台にしたガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」の元のタイトルが「Le Fantôme de l'Opéra」ですからね。
もっとも、「怪人」が出てくるのはその小説が書かれたころの「オペラ座」、シャルル・ガルニエが設計して1875年に完成したオペラハウスで、「ガルニエ宮」とも呼ばれている建物です。今ではパリにはオペラ座は2つありますから、「バスティーユではなく、ガルニエの方」という注釈が必要になってきます。
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ジャケットは、そのガルニエ宮の客席の写真。天井にはシャガールによる天井画も見えますね。ブックレットの裏表紙には、それこそロイド=ウェッバーのミュージカル「オペラ座の怪人」にも登場する大階段の写真もあります。いずれも、その前でカウフマンがポーズをとっている、という構図ですから、これだけを見るとあたかもカウフマンがパリのガルニエ宮まで行って録音してきたのかと思ってしまいますが、あいにく実際に録音が行われたのはミュンヘンのバイエルン州立歌劇場でした。ですから、これらの写真も当然合成です。まあいいじゃないですか。そこまでして「オペラ座」の雰囲気を出そうとしているのですから。
カウフマンと言えば、一応ドイツものを得意としている歌手とはされていますが、イタリアものでも、そしてフランスものでもレパートリーになっていて、それらを収録した映像なども、数多くリリースされていますね。ですから、今回、全てフランスで活躍した作曲家によるフランス語で歌われるオペラだけをまとめたアルバムが出たことに関しては、何の違和感もありませんでした。というより、彼のフランス・オペラをじっくり味わえることに、大いなる期待を抱いていました。
そして、その期待感は、ほぼ満たされました。カウフマンは、まさに彼にしかできないやり方で、これらの作品に命を与えていたのです。
正直、彼のフランス語の発音はネイティヴのフランスの歌手とは比較にならないほど、ゴツゴツとしたものです。ですから、彼の歌が始まると、そこからは「おフランス」の肌触りなどというものはほとんど感じることはできません。それは、バックのオーケストラも同じこと、ド・ビリーの巧みな指揮ぶりでいとも繊細な表情は出しているものの、肝心の木管の音色があくまでドイツ風なんですからね。フルートソロの素っ気なさったら、あきれてしまうほどです。
しかし、聴きすすむうちに、別にフランス語のオペラだからといって、すべてをフランス風に仕上げる必要もないのではないか、という気持ちになってくるのが、カウフマンの凄さです。そう、彼が歌えば、そこからはまさに「国境」を超えた真の音楽が聴こえてくるのですよ。
彼が持つ圧倒的な武器は、その強靭な声です。これさえ聴ければ、まず裏切られることはありません。その上に、彼はこのフランス語のレパートリーでは「抜いた」声を織り交ぜて、対比を明確にした表現を試みています。これは、彼がヴェリズモのようなレパートリーの時に「泣いた」歌い方を取り入れているのと同じやり方なのでしょう。そのあたりの様式による歌い分けも徹底されていて、ここでそのヴェリズモ風の歌い方は決して聴くことはできません。
これで、彼が手がけていないのは、旧東欧やイギリスのレパートリーだけになりました。彼のピーター・グライムズぐらいは、聴いてみたいとは思いませんか?
今回もデュエット曲には豪華なキャスティングがなされています。マスネの「マノン」のタイトル・ロールを歌っているのがソーニャ・ヨンチェヴァなんですからね。せっかくだから、このノーマル・エディションのブックレットにも彼女のポートレートの1枚も載せてほしかったものです。

CD Artwork © Sony Music Entertainment

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by jurassic_oyaji | 2017-10-26 21:02 | オペラ | Comments(0)