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2018年 03月 08日 ( 1 )
LIVING MUSIC/New Chamber Music for Flute
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Alice K. Dade(Fl)
Scott Yoo, Erik Arvinder(Vn), Maurycy Banaszek(Va)
Jonah Kim(Vc), Susan Cahill(Cb)
Noam Elkies, John Novacdk(Pf)
NAXOS/8.559831


アメリカで現在活躍している5人の作曲家による、フルートの入った室内楽曲を集めたアルバムです。タイトルに「Living Music」とあるように、確かに、これらの作品は、日常の生活の中に何の抵抗もなく溶け込んでいけるような味わいを持っています。
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それはまず、演奏している奈々緒そっくりのフルーティスト、アリス・K・デイドのフルートが、とてもすんなりと耳に入ってくるということが、大きな要因として挙げられます。彼女が使っているパウエルの楽器を無理なく鳴らした伸びやかな音色はとても魅力的です。
1曲目は、1960年生まれのエーロン・ジェイ・カーニスが作った「Air」という、フルートと弦楽四重奏のための作品です。メインとなるテーマはまさに「現代」ならではの甘ったるい癒し系です。そのまま行ってしまえばただのペルトのエピゴーネンになってしまいますが、途中でガラッと攻撃的な音楽に変わるのが新機軸。さらに、フルートのカデンツァを挟んで元の甘い音楽が帰ってくると思いきや、そうではなくとても寂しく終わるのは、一度変わったものは決して元には戻れないことへのメタファーなのでしょうか。
2曲目の「Skipping Stones」という曲を作ったマイケル・ファイン(1950年生まれ)は、これまでプロデューサーとして音楽業界で活躍していた人ですが、なんと63歳になってから妻が癌の宣告を受けことを機に突然作曲を始めたのだそうです。そこで、2つ目の作品となったのが、子供のころに遊んだ「石切り」をテーマにした音楽です。視聴率の悪いドラマが急に終わること(それは「打ち切り」)ではなく、川に平らな石を投げて水面にスキップさせる遊びですね。前の曲にコントラバスが加わったもの、ちょっと不思議なハーモニー感を持った、味わい深い曲です。恐る恐るこの演奏メンバーに楽譜を送ったら、とても気に入られて、こうして録音もされました。
次はノーム・エルキーズ(1966年生まれ)が最初はトラヴェルソとチェンバロのために作った「E Sonata」を、モダン・フルートとピアノに直したものです。ここでは、エルキーズ自身がピアノを弾いています。最初の編成でもわかる通り、3つある楽章の最初のものは、もろバロック風のテイストを持っています。ただ、あまりにも「現代風バロック」を気取った結果、なんともグロテスクなハーモニーになっているのが残念です。次の楽章は、フルートはピッチや音色、あるいは奏法を変えて単音を伸ばしているだけ、というユニークな曲、その間に、ピアノは時にはバロック風、時には無調風と遊んでいます。そして、最後は軽快なスウィング・ジャズで締めくくるという、分かりやすさです。ここでのハーモニーは第1楽章とよく似ています。
4曲目は1965年生まれのジェニファー・マーガレット・バーカーが作った「Na Tri Peathraichean」というフルートとピアノのための曲。スコットランドのグレンコーにある「3人姉妹」という連山のことですが、ここでは3つの曲が、それぞれの山のタイトルになっています。「Gearr Aonach」では、フルートは山に対して何度も呼びかける、ちょっと重苦しい音楽です。「Aonach Dubh」では、岩肌を転がる石の描写でしょうか、とても激しい運動感が聴こえてきます。そして「Beinn Fhada」では、あちこちを眺めまわっているという感じでしょうか、最後には最初の呼びかけが繰り返されます。
最後の「Pavane and Symmetries」は、ダン・コールマン(1972年生まれ)が、最初はフルートと弦楽オーケストラのために作ったものを、ピアノ伴奏に直したものです。優雅な「パヴァーヌ」と、ダイナミックな踊りとの対比が聴きものです。なぜか、このトラックだけ音が引っ込んで聴こえてきます。ちょっとしたマイクアレンジの加減でしょうか。
いずれも、とても穏やかな作風ですし、奏法もたまにフラッター・タンギングが出てくるぐらいで極めてオーソドックスなものに終始しています。まさに、典型的な「今」の音楽ばかりです。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.

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by jurassic_oyaji | 2018-03-08 20:51 | フルート | Comments(0)