おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
2018年 04月 10日 ( 1 )
WIND CONCERTOS
c0039487_23483352.jpg

James Zimmermann(Cl)
Leslie Norton(Hr)
Érik Gratton(Fl)
Giancarlo Guerrero/
Nashville Symphony
NAXOS/8.559818


アメリカの3人の作曲家がごく最近完成させた3つの管楽器のための協奏曲を、世界で初めて録音したアルバムです。演奏しているのはナッシュヴィル交響楽団、ソリストたちは、全てこのオーケストラの首席奏者たちです。
ただ、2015年に作られたホルン協奏曲はもしかしたらこれが「世界初演」かもしれませんが、それ以外の2010年のクラリネット協奏曲と、2013年のフルート協奏曲は「世界初録音」ではあっても「世界初演」ではありません。というのも、この2曲はそれぞれスウェーデンのクラリネット奏者、ホーカン・ローゼングレンと、フィラデルフィア管弦楽団の首席フルート奏者のジェフリー・ケイナーからの委嘱によって作られていて、初演は彼らによって行われているからです。
ホルン協奏曲を作ったのは、1950年生まれのブラッド・ワーナールという人です。この方は元々ホルン奏者でした。クラシックの団体だけでなく、ジャズのビッグ・バンドなどにも参加していて、後にはLAでスタジオ・ミュージシャンとして映画やCMの音楽で大活躍されていました。ブックレットには彼が若いころ参加していたバンドの中に「ザ・ボス・ブラス」の名前があったので、どこかで聴いたことがあるな、と調べてみたら、こんなところにちゃんと名前がありました。「シンガーズ・アンリミテッド」の1978年のアルバムです。
c0039487_23483478.jpg
c0039487_23483348.jpg
ワーナールは作曲の才能もあり、スタジオでは「ゴースト・ライター」として自作を提供していたこともあるそうです。もしかしたら、このホルン協奏曲は彼自身が演奏するために作られたのかもしれませんね。
古典的な3楽章形式をとっていますが、基本的な作風は「ミニマル」でしょう。第1楽章はタイトルが「Tintinnabulations」とまるでペルトのよう、ご丁寧に実際の「ベル」の連打が象徴的に使われています。そこにオスティナートのリズム・パターンがさまざまに変化して、単純化からは逃れています。「Elegies; Lamentations」と題された第2楽章ではとても静かなたたずまいの中から、広大な風景が広がります。そして、第3楽章の「Tarantella」は、文字通り6/8拍子のリズムの中で、シュトラウスの「ティル」の冒頭のホルン・ソロが登場するようなお遊びも見られます。なにか、才能の無駄遣いのように感じられるのは、気のせいでしょうか。
1958年生まれのフランク・ティケリが作ったクラリネット協奏曲も、やはり楽章は3つですがタイトルが凝ってます。それぞれ、「ジョージへのラプソディ」、「エーロンへの歌」、「レニーへのリフ」となっていて、そのようなファースト・ネームをもつ3人のアメリカの作曲家、ガーシュウィン、コープランド、バーンスタインへのオマージュを表明しているのです。第1楽章は、本当にガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」の冒頭のクラリネット・ソロが引用されていたりします。そのあとは、とても技巧的なフレーズがてんこ盛りでソリストのテクニックが試されるような部分、ここでのソリスト、ジマーマンは、とても上手なのにそれが全然楽しく聴こえてこないのが残念です。第2楽章はやはりコープランドの何かの作品のようなのどかな情景が広がります。隠微な情景ではありません(それは「ソープランド」)。第3楽章はもちろんジャズ。けだるいブルース調の部分は様々な打楽器を使ったオーケストレーションに独特の味がありますが、スウィングが始まると平凡な曲になってしまいます。
フルート協奏曲を作った1955年生まれのベフザド・ランジバランはイランで生まれ育った人です。この曲の中には、彼の母国のイディオムが豊富に詰め込まれています。特に、フルートのカデンツァはまさにオリエンタル・ムードが満載です。ただ、曲全体はほとんどがイベールのフルート協奏曲からの引用のように思われてしまうのは、ちょっと安直。フルートのエリック・グラットンは、そのどちらの要素にもフレキシブルに対応して、多彩な音色と卓越したテクニックを披露してくれます。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.

[PR]
by jurassic_oyaji | 2018-04-10 23:50 | フルート | Comments(0)