おやぢの部屋2
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2018年 04月 12日 ( 1 )
ZACH/Requiem, Vesperae
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Michaela Šrůmová(Sop), Sylva Čmugrová(Alt)
Čeněk Svoboda(Ten), Jaromír Nosek(Bas)
Marek Štryncl/
Collegium Floreum
Musica Florea
SUPRAPHON/SU 4209-2


ボヘミアの作曲家ヤン・ツァハはあまり有名ではありません。なにしろ、最近までは生まれた年まで間違われていたのですからね。正しくは1713年に生まれているのですが、たとえばWIKIPEDIAなどでは1699年生まれとなっていますからね。どうやら、彼の従弟の生年と間違われていたようです。かわいそうに。いずれにしても、子供の頃はやんちゃだったのでしょう。
彼は1730年代にはプラハに住み始め、教会のオルガニストとして働きますが、1745年にはマインツの楽長に就任します。しかし、何らかの事情でそこはクビになり、それ以後はヨーロッパ中を放浪することになるのです。
そんなツァハのプラハ時代に作られた2つの宗教作品「荘厳レクイエム」と、「聖母マリアの晩祷」が、このCDには収録されています。「レクイエム」の方は割と有名ですでに録音されたものがありますが、「晩祷」はこれが初めての録音となります。
「レクイエム」では、4人のソリストと合唱がオーケストラをバックに歌う点とか、伝統的なテキストがそのまま使われているという点では、その半世紀ほど後に作られることになるモーツァルトの作品と同じ形をとっています。作風も、もうすでにバロック時代の様式は薄れ、古典派の様式になっていることも分かります。ただ、「Dies irae」ではモーツァルトは全てのテキストを使っていますが、ツァハはその2/3をカットしています。
面白いのは、あちこちにそのモーツァルトの予兆のようなものが現れていることです。まず、冒頭の「Requiem」の後半「Te decet hymnus」ソプラノのソロによって歌われるのですが、そこにはモーツァルトの未完のハ短調のミサの中のソプラノのアリア、「Et incarunatus est」の中のフレーズに酷似したフレーズが登場しています。
さらに、それに続く「Kyrie」が4声のフーガなのですが、それがそのまま最後の曲の「Cum sanctis」に歌詞だけ変えて使われているというのも、モーツァルトの「レクイエム」と同じです。もっとも、モーツァルトの場合は「Cum sanctis」はジュスマイヤーが補作していますから、これは単に当時の様式に則っただけのことなのでしょう。
実は、このフーガ(もちろん、ツァハのものですが)は、そのままオルガン・ソロのために他の人によって編曲されたものがあって、これが結構有名なのだそうです。そのテーマは半音進行を多用したとても暗いものなのですが、それは少し前、バロック時代には広く知られていた「修辞学(レトリック)」で用いられる「フィグーラ」の一つ「Passus duriusculus(パッスス デュリウスクルス=辛苦の歩み)」に相当するのだそうです。しかも、そこでは1オクターブの中の12個の半音が全て使われているのです。これは、バッハの「ロ短調ミサ」の2番目の「Kyrie」と全く同じことが行われていることになりますね。
これは、1世紀以上後の同じボヘミアの作曲家ドヴォルジャークが作った「レクイエム」の中でも、主要なモティーフとして用いられることになります。
一応そんな暗い雰囲気に支配された曲ではありますが、「レクイエム」全体ではもう少し別の情感も表現されていて、なかなかの多様性が感じられるようです。「Domine Jesu Christe」の中の「Sed signifer」はソプラノのソロですが、オペラのアリアのような華やかなコロラトゥーラのフレーズが入っています。
このソプラノのミハエラ・シュロモヴァーという人は確かな力を持っているようですが、残りの3人のソリストは、発声や技巧の点でやや危なげなところが感じられてしまいます。バスのヤロミール・ノセクという人などは、コミカルなキャラで売っているのでは、とさえ思ってしまう時もありますね。合唱もそこそこの技量はあるものの、なにか無気力で面白味に欠けています。
カップリングの「晩祷」もなかなかヴァラエティに富んだ曲調。ヴィヴァルディの「冬」を思わせるような厳しい曲があると思うと、「Magnificat」では派手な鐘の音などが聴こえてきたりします。

CD Artwork © SUPRAPHON a.s.

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by jurassic_oyaji | 2018-04-12 21:23 | 合唱 | Comments(0)