おやぢの部屋2
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2018年 04月 26日 ( 1 )
PASSION
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Fritz Wunderlich(Ten)
Various Artists
PROFIL/PH17015


1930年に生まれて、1966年にまだ30代の若さで亡くなってしまったのが、ドイツのテノール、フリッツ・ヴンダーリヒです。幸い、その「晩年」にはDGなどのレーベルに多くの録音を残したので、今でもその伸びのある美しい声は、素晴らしい録音で聴くことが出来ます。ベームの指揮による「魔笛」全曲盤などは、ハイレゾのSACDもリリースされていますから、彼のタミーノを極上の音で味わえます。
そのような正規のレコード録音だけではなく、コンサートを放送用に録音したものなども、かなりの数のものが残っているのではないでしょうか。それらは、すでに海賊盤っぽいものでは出回っているはずです。もちろん、きちんとライセンスを取って正規盤としてリリースされているものも有ります。
今回は、ふつうヴンダーリヒと言って思い浮かべるオペラやリートではなく、主にバッハの受難曲などという珍しいレパートリーをそのような音源から集めて作った12枚入りのボックスです。何しろ、このジャンルのスタジオ録音盤は、1964年にカール・ミュンヒンガーの指揮するシュトゥットガルト室内管弦楽団とDECCAに録音した「マタイ」ぐらいしかありませんからこれは貴重です。
ここに収録されているのは、「マタイ」と「ヨハネ」がそれぞれ2種類、ヘンデルの「メサイア」と、宗教曲ではありませんが、1955年に録音されたベートーヴェンの「第9」全曲です。これはすでにLPでリリースされていて、そのジャケットのライナー(ジャケットの裏側のこと)がこれです。
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右下に「STEREO」と書いてありますから、リリースされたのは録音されてからかなり経ってからなのではないでしょうか。1955年にはまだステレオはありませんでしたからね。ですからこれはLPを作る時に電気的にモノラル録音をステレオにしたものです。たしかに、よく見ると「ELEKTRONISCHES STEREO」となってますね。
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いわゆる「疑似ステレオ」というやつで、「ブライトクランク」というのもありました(もはやだれも知らないでしょうね)。
これは、このボックスの中では最も古い録音、ヴンダーリヒはまだ24歳の時なのですが、例のピッコロが入るマーチに乗って出てくる彼のソロには驚いてしまいました。それは、例えば今超売れっ子のテノール、某フォークトのように、とても甘く美しい声なのにそこからは何のパワーも感じられないものだったのです。「第9」のこの部分はなんたって勇壮なマーチをバックに歌うのですから、そこにパワーがなければ何にもなりませんね(そういうこと)。
余談ですが、この録音でピッコロはこの部分派手にヘクってます。しかも、ど頭とオクターブ上がったところの2か所も。ということは、これもやはりライブ録音だったのでしょうか。
こんな「貴重」な声は、そんなに長くは続かなかったようで、その2年後1957年の「マタイ」と「ヨハネ」では、あのお馴染みの張りのある声が聴けるようになります。この2曲は、その年のアンスバッハ・バッハ音楽週間に聖グンベルトゥス教会で「マタイ」が7月24日、「ヨハネ」が7月31日に演奏されたもので、あのカール・リヒターがミュンヘン・バッハ合唱団&管弦楽団を指揮していました。フルート・ソロはオーレル・ニコレという豪華版です。ヴンダーリヒはここではアリアを担当、エヴァンゲリストは彼より20歳年上のピーター・ピアーズでした。
もう一つの1958年の「ヨハネ」は、テオドール・エーゲル指揮の南西ドイツ放送管弦楽団のフライブルクでのコンサートのライブで、ここではヴンダーリヒがエヴァンゲリスト、アリアはハンス=ヨアヒム・ロッチュでした。
そして、1962年の「マタイ」は、カール・ベーム指揮のウィーン交響楽団がムジークフェライン・ザールで行ったコンサートです。ここではヴンダーリヒはついにエヴァンゲリストとアリアを全部一人で歌っています。
いずれも、録音はあまりにひどいものですが、その混沌の中でもヴンダーリヒの声だけは豊かに響き渡っています。

CD Artwork © Profil Media GmbH

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by jurassic_oyaji | 2018-04-26 21:01 | 合唱 | Comments(0)