おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
2018年 05月 12日 ( 1 )
The Hour of Dreaming
c0039487_20303287.jpg




Lorna McGhee(Fl)
Piers Lane(Pf)
BEEP/BP41


前回のアルバムでベネットと共演していたローナ・マギーのソロ・アルバムです。レーベルは前回と同じベネットのプライベート・レーベルBEEPで、品番も1番違いです。どうやら、このレーベルは代理店がそれほど熱心ではないようで、2014年あたりにリリースされたものが、今頃やっとまとめて何枚かリリースされています。
ローナ・マギーはスコットランド生まれ。スコットランド王立音楽院でデイヴィッド・ニコルソンに師事したのち、ロンドンの王立音楽院でベネットの弟子となります。さらにアメリカのミシガン大学と、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学でも研鑽をつみ、現在ピッツバーグ交響楽団の首席奏者を務めています。
これまでも多くのレーベルから室内楽のアルバムは多数リリースしているようですが、ピアノ伴奏によるソロ・アルバムはこれが最初なのかもしれません。とは言っても、ここで彼女が選んだレパートリーは、ほとんどが元々はフルート以外の楽器のために作られた作品や歌曲などだというところに、彼女のユニークなところがあります。こういうところは、師ベネット譲り?
そもそも「The Hour of Dreaming」というタイトルからして、なんだかおしゃれです。これは、彼女がここで演奏しているレイナルド・アーンの歌曲「L'heure exquise」のタイトルの英訳、日本語の定訳はフランス語の意味をそのまま伝える「いみじき時」ですが、英語ではなぜか「Dreaming」という単語が使われています。
ですから、これだけ見ると、いかにもなそれこそ夢見るようなうっとりする曲が集められているように思ってしまいますが、そんな先入観は実際に彼女のメリハリのあるアグレッシブな演奏を聴くと吹っ飛んでしまいます。
彼女がこのアルバムで中心に据えていたのは、このアーンではなくドビュッシーのヴァイオリン・ソナタでした。このドビュッシー最晩年の傑作を、彼女は1929年に録音されたジャック・ティボーとアルフレッド・コルトーの演奏を聴いて、衝撃を受けたのだそうです。ティボーのヴァイオリンからは、まさにフルートで演奏しているかのようなサウンドが感じられ、実際にフルートのために編曲したくなったのだとか。
それはまさに「フルート・ソナタ」以外にはありえない、と思えるほどの完成度を見せていました。なによりも、時間とともに移りゆく音色の変化の素晴らしいこと。それは、その瞬間の和声の変化までもしっかり感じることのできるとてもカラフルなものでした。
ドビュッシーではもう一つ、オリジナルはピアノ曲でゴールウェイなどにも演奏されていて馴染みのある「La plus que Lent(レントより遅く)」があります。しかし、彼女の演奏は、そのゴールウェイとは全く異なるアプローチでした。ゴールウェイは何よりも流れを重視した包み込むような音楽を提供していたものが、マギーはこの曲のリズミカルな側面に着目していたのです。冒頭のアウフタクトから音にアクセントを付けて3拍子のリズムを強調、そんなまるで「ダンス」のような魅力をこの曲から引き出していましたよ。
そんなことを可能にしたのは、彼女の低音がとてもエネルギッシュなものだったからなのでしょう。その鋭角的なタンギングは、それこそピアノの左手のベースすらもきっちりと表現できるほどの力を持っていました。
そんなタンギングは、ヴァイオリンの超絶技巧を駆使した名曲でも冴え渡っていました。ヤッシャ・ハイフェッツなどの名人が「よっしゃ」と好んで演奏したヴィニアフスキの「スケルツォ」などでは、まさに「舌を巻く」ほどの切れの良いフレーズを満喫できます。
彼女はこの手の曲を本当に楽しんで演奏しているようで、これ以外にもメンデルスゾーン、カゼッラ、マルティヌーなどの作品でも、単なる曲芸技には終わらない、真に愉悦感を伴った名人芸を聴かせてくれています。
それでいて、レガートやロングトーンの美しいこと。こんな無理なく響いてくる高音には、脱帽です。

CD Artwork © Beep Records

[PR]
by jurassic_oyaji | 2018-05-12 20:32 | フルート | Comments(0)