おやぢの部屋2
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2018年 05月 22日 ( 1 )
SCHUBERT/Oktett
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Isabelle Faust, Anne Katharina Schreiber(Vn)
Danusha Waskiewicz(Va), Kristin von der Goltz(Vc)
James Munro(Cb), Lorenzo Coppola(Cl)
Javier Zafra(Basson) ,Teunis van der Zwart(Hr)
HARMONIA MUNDI/HMM 902263


シューベルトはその31年と10か月余りの生涯で1000曲以上の作品を産み出しました。もちろん、その中で大多数を占めるのは600曲ほどの歌曲ですが、それ以外にも幅広いジャンルで作品を残してくれました。ただ、ロマン派の作曲家の常で、独奏楽器ではピアノや弦楽器のための作品に比べると、管楽器のためのものは極端に少なくなっています。シューベルトよ。管楽器のための「ソナタ」を、そなたは1曲も作っておらぬではないか(江戸時代か)。
確かに、1813年には八重奏「メヌエットとフィナーレ」(2Ob,2Cl,2Hr,2Fg)と九重奏「アイネ・クライネ・トラウアームジーク(小さな葬送曲)」(2Cl,2Fg,CFg,2Hr,2Tb)というマイナーな曲はありますが、普通に多くのCDが出ているものしては、フルートとピアノのための「しぼめる花変奏曲」と、弦楽五重奏にクラリネット、ホルン、ファゴットが加わった「八重奏曲」の2曲しかありません(これらは、1824年の1月と2月に続けて作られました)。ですから、オーボエ奏者と金管楽器奏者にとっては、シューベルトが作ったまともな曲はないということになりますね。
この「八重奏曲」は、クラリネットの名手だったフェルディナント・トロイヤー伯爵からの委嘱によって作られました。彼のリクエストはその頃大人気を誇っていたベートーヴェンの七重奏曲をモデルにしてくれ、というものでした。シューベルトは、そこで同じような楽章編成をとりますが、楽器はヴァイオリンを2挺にしています。
大好きな曲なので、今まで多くの演奏を聴いてきましたが、今回のイザベル・ファウストたちの録音では、全てピリオド楽器が用いられている、というのがポイントです。もちろん、今まで聴いてきたのは全てモダン楽器による演奏でしたから、楽しみです。
ブックレットにはしっかりそれぞれの楽器や製造された年が書いてあります。もちろん管楽器はこの曲が初演された当時に作られた楽器か、そのコピーですね。中でも、お馴染みのクラリネット奏者のロレンツォ・コッポラは11キーのB管と6キーのC管を使っています。聴く人が聴けば、その音色の違いも分かることでしょう。
ファゴットのハヴィエル・ザフラが使っている楽器は「バスーン(bassoon)」と書いてありますが、製作者が「Triebert(トリエベール)」というフランス人なので、「バソン(basson)」なのでしょうね。
この二つの楽器がモダン楽器とは全く別の音色です。バソンは今のファゴットのような存在感は少ない代わりに、見事にアンサンブルに溶け込んでいます。5曲目のメヌエットのトリオで、最初にバソンがソロを吹いて、それがクラリネットに引き継がれるのですが、その違いがほとんど分からないほどでしたからね。さらに弦楽器もガット弦のノン・ビブラート、もう今までとは全く異なる世界が広がります。
もちろん、音色だけではなく、その表現も今まで聴いてきたものとは全然違います。なんと言っても最初に聴いたのが「ウィーン情緒」たっぷりのものでしたから、そんなものとは全く無縁のファウストたちの演奏は、刺激の連続です。いや、基本的に彼らは楽譜に忠実に演奏しているだけなのですけどね。ただ、それこそ「情緒的」なオブラートでくるむようなことは一切せずに、その楽譜の指示を誰が聴いても分かるように演奏していることで、「今まで」とは違ったものが生まれている、という不思議なことが起こっているわけなのですよ。
具体的には、徹底したアクセントの強調とダイナミクスの変化です。特にコッポラの本当に聴こえるか聴こえないほどのピアニシモと、ファウストのすすり泣くようなノンビブラートは、それこそ涙が出てくるほど魅力的です。
ところで、いつも言ってますが、最後の楽章のテーマは、絶対この赤枠の部分が余計です。
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カップリングで、珍しい弦楽四重奏のためのメヌエットをこの八重奏の編成に直して演奏していますが、その編曲がとても素敵です。

CD Artwork © harmonia munde s.a.s.

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by jurassic_oyaji | 2018-05-22 22:54 | 室内楽 | Comments(0)