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2018年 05月 26日 ( 1 )
ROSE/Choral Compositions and Arrangements
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Gregory Rose/
Latvian Radio Choir
TOCCATA/TOCC 0482


グレゴリー・ローズという1948年生まれのイギリスの作曲家の、ア・カペラの合唱曲を集めたアルバムです。なんでも、彼は今年生誕70周年を迎えることになるので、自らそれをお祝いするためにこのアルバムを作ったのだとか。なんだか可愛いですね。
録音が行われたのはラトヴィアのリガにある聖ヨハネ教会です。歌っているのはラトヴィア放送合唱団、そして指揮者はローズ自身です。
彼の父親は、教会音楽のフィールドで作曲家、指揮者、教育者として活躍していたバーナード・ローズという人です。グレゴリーは彼の影響で作曲家をめざし、実際に20歳前後の数年間オクスフォード大学のモードレン・カレッジで父親にも師事しています。その父親は1996年に80歳で亡くなってしまいましたが、グレゴリーは生誕100周年記念の2016年に、父親の宗教的な合唱作品を集めて自分が指揮をしたアルバムを、同じTOCCATAレーベルから出しています。周年を祝うのが好きな人なんですね(そういう人は執念深い)。
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そんな経歴から、彼の作風は穏健なものを連想してしまいますが、そうではありませんでした。そもそも、その父親の作品を聴いてみても、普通に教会で演奏するにはかなり尖がった感じがしましたからね。彼はウィーンの音楽院とオクスフォードではシェーンベルクの弟子だった作曲家の教えを受けています。そして、年代的にも第二次世界大戦後の「前衛音楽」の洗礼をもろに受けていて、ケージ、シュトックハウゼン、ライヒといった人たちとは実際にコラボレーションを行っていたこともあったのだそうです。
ここではそんなローズの1972年から2017年までの40年以上に渡る作曲活動のスパンの中で作られた曲を聴くことが出来ます。すべてが初録音です。
その、最も初期の1972年の作品「It's snowing」は、まさにあの頃の「前衛音楽」そのものでした。おそらく「偶然性」の要素もかなり取り入れられているのでしょう。その結果現れたクラスターの響きは、まさにあの時代を象徴するものです。
そのような作風は、1997年に作られた「Fragments for Four」という作品にまで影を落としています。これはもろジョン・ケージ風の「即興音楽」、それぞれのパートがあるフレーズをその場限りの即興で出し合い、予期されない効果を生むという試みです。ただ、そこにはケージのような乾いたテイストはなく、ある意味「きれいすぎる」という印象を持ってしまうのは、やはりローズ自身の内面の変化によるものなのではないでしょうか。
そして、2009年に作られた「Missa Sancti Dunstani」には、明らかにスティーヴ・ライヒ風の「ミニマル」の要素が入っていることが分かります。ただ、それは冒頭の「Kyrie」だけで、それに続く楽章ではもっと「美しさ」が際立ったシンプルさが前面に押し出されるようになっています。おそらく、このあたりから、彼の作風は、様々な現代的な手法を踏まえた上での、適度の抒情性を持った彼なりのスタイルにたどり着いたのではないでしょうか。それは、とても無理のない健全な変化のような気がします。2017年に作られた「Ave Maria」などは、それがとても美しく結実したものなのではないでしょうか。
一方で、彼はそのような「純音楽」とは別の、コマーシャルなシーンでの活躍もあったことが、最後に収録されている何曲かの編曲作品によって知ることが出来ます。彼は、ダイアナ・ロスやリンダ・ロンシュタットなどのアルバムでは編曲を担当、バックのオーケストラの指揮もしていました。
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ここでは、ダイアナ・ロスが2006年にリリースした「 I Love You」というアルバムのために編曲された、ビートルズの「ホワイトアルバム」の1枚目のB面にあったポールの曲「I Will」のア・カペラ・バージョンが歌われています。それは、オリジナルの味をそのまま残した素直なアレンジ、このあたりにはまさに「職人」としての手堅さが覗えます。
そんな、様々なスタイルの作品とアレンジを、この合唱団は見事に歌い分けています。

CD Artwork © Toccata Classics

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by jurassic_oyaji | 2018-05-26 20:10 | 合唱 | Comments(0)