おやぢの部屋2
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2018年 06月 02日 ( 1 )
Seven Words from the Cross
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Matthew Guard/
The Skylark Vocal Ensemble
SONO LUMINUS/DSL-92219(CD, BD-A)


アメリカの室内合唱団スカイラーク・ヴォーカル・アンサンブルの新作です。このSONO LUMINUSも、BD-Aでのリリースを続けている数少ないレーベルの一つです。以前のアルバムを聴いた時にはまだ2チャンネルの再生しかできませんでしたが、今回はDXDのサラウンドで録音されたものを、BD-Aに24bit/192kHzで収録されたサラウンドで聴けるようになっていました。これは、あの2Lレーベルの一連の録音にも匹敵するほどのクオリティでしたので、もうその音に浸るだけで興奮してしまいましたよ。録音会場の教会の残響が程よく加わり、クリアで芯のある豊かなサウンドに体全体が挟まれるよう(それは「サンド」)。
前作同様、タイトルやジャケット・デザインにはユニークなセンスを感じることが出来ます。今回はあの「十字架上の7つの言葉」ですって。
もちろん、こういうタイトルの作品は、古今の作曲家のものがたくさん存在しています。しかし、今回のアルバム名は作品のタイトルではなく、アルバム全体のコンセプトをあらわしたもののようでした。つまり、このアルバムは、アンサンブルの指揮者マシュー・ガードが、「7つの言葉」に呼応する曲を集めて構成した「コンピレーション」なのです。
まずは「言葉」に先立って「プロローグ」というパートが置かれています。ここで最初に歌われるのが黒人霊歌の「Were you there?」です。それは、まるで往年のロジェ・ワーグナー合唱団の黒人霊歌集の名盤で、サリー・テリーのソロによって歌われていたものととてもよく似たアレンジでした。ここでのソロはメンバーのCarrie Cheronという人、重厚な男声のハミングに乗って歌い出した彼女は、とても訓練されたハーモニー感を持つしっかりした合唱をバックに、まるでゴスペル・シンガーのような自由なフレージングで、「クラシックの合唱曲」を超えたオリジナルの魂に迫る歌を聴かせてくれました。もう、これが聴けただけで十分だと思えるような、すばらしい演奏です。
このパートにはもう1曲、アメリカではとても有名で、その聖歌がブラスバンドなどにも編曲されて広く親しまれているウィリアム・ビリングの「When Jesus Wept」が歌われています。この作曲家の作った聖歌は、このアルバムのメインのコンテンツとして、これ以後何度も歌われることになります。
 そんな中で、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンなどという人の単旋律の聖歌も登場します。これは、やはりメンバーのClare McNamaraという人が全曲一人で歌っています。こういう人たちは、合唱の中ではきっちり融け合う声なのに、ソロではしっかりと個性を主張していますから、それぞれに深い味を感じることが出来ます。
後半の「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」になると、プーランクの「悔悟節のための4つのモテット」から「Vinea mea electa(選ばれしわがぶどうの木)」などという、ちょっと毛色の違う曲が取り上げられています。しかし、彼らの硬質な音色による完璧なハーモニーからは、そのフランス的な妖艶な和声の中から確かな訴えかけが伝わってきます。
「私は渇いている」のパートで歌われるのは、前作でも新作を提供していたアイスランドの作曲家、アンナ・ソルヴァルドスドッティルの「Þann heilaga kross(聖なる十字架の上で)」です。現代的なドローンをバックに古代アイスランドの聖歌が流れるという、時代を超えた音楽を聴くことが出来ます。この曲は、まさにこのアルバムの白眉でしょう。
次の「終わった」のパートでは、フィンランドの人気作曲家マンティヤルヴィの、その名も「ウィリアム・ビリングの聖歌によるファンタジア」という、まさにさっきのアメリカの作曲家の曲をマンティヤルヴィが料理した痛快な曲です。
最後に付け加えられた「エピローグ」では、アメリカではゴスペルとしてとてもよく知られている「Just as I am」という伝承歌です。この曲でのDana Whitesideというバリトンのメンバーのソロは、涙が出るほど感動的です。

CD & BD Artwork © Sono Luminus, LLC.

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by jurassic_oyaji | 2018-06-02 20:33 | 合唱 | Comments(0)