おやぢの部屋2
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2018年 06月 05日 ( 1 )
BIZET/Les Pêcheurs de Perles
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Julie Fucks(Leïla), Cyrille Dubois(Nadir)
Florian Sempey(Zurga), Luc Bertin-Hugault(Nourabad)
Alexandre Bloch/
Les Cris de Paris(by Geoffroy Jourdain)
Orchestre National de Lille
PENTATONE/PTC 5186 685(hybrid SACD)


ジョルジュ・ビゼーがその36年余の生涯で作ろうとしたオペラ、あるいはオペレッタは全部で30曲近くあるそうですが、実際に完成して上演までされたものはほんの数曲しかありません。とは言っても、遺作である「カルメン」1曲だけでも彼はオペラ作曲家として永遠に語り伝えられることになったのですから、作曲家冥利に尽きるのではないでしょうか。
「カルメン」に次いで(とは言ってもその上演頻度は著しく少なくなりますが)人気がある彼のオペラが、この「真珠採り」でしょう。ただ、もしかしたら、このオペラの中のアリア1曲、もっと言うならそのメロディだけが異様に知名度を誇っている、というせいで人気があるのかもしれませんね。それは、アルフレッド・ハウゼというドイツのコンチネンタル・タンゴのバンドリーダーが、このメロディをタンゴにして世界的にヒットさせたからなのです。
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「真珠採りのタンゴPerlfischer Tango」というその曲が、いつごろ生まれたのか、正確な年代はよく分かりませんが、20世紀中期以降であることは間違いありません。同じように、ヴェルディの「椿姫」の前奏曲を転用した「ヴィオレッタに捧げし歌Hör Mein Lied, Violetta!」というコンチネンタル・タンゴもヒットしましたね。
「カルメン」同様、このオペラも何種類かの楽譜が出ていて、実際に、今まで録音されたCDなどを聴き比べてみると、それぞれに違いが見つかるのだそうです。というのも、ビゼーの自筆稿は現在では誰も見ることが出来ない状況になっているのだとか。このCDではヒュー・マクドナルドという人によって2014年に新たに作られ、2015年に、今ではベーレンライターの傘下となっているアルコア社(!)から出版された楽譜が使われています。これは、1863年に行われた初演の際の指揮者のスコアが元になっているのだとか。ただ、ここでライナーノーツを書いているイェルク・ウアバッハという人は、「自筆稿さえ見ることが出来れば、もっとビゼーのアイディアに近づけるのに…」と言っていますからね。
このオペラは、3幕から出来ていますが全曲演奏しても2時間はかからないというコンパクトな仕上がりです。それこそ「カルメン」のアルコア版のようなオペラ・コミークではなく、全編がレシタティーヴォ・アッコンパニャータとアリアや重唱で歌われるオペラ・セリアの形をとっています。
物語の舞台は古代のセイロン、真珠採りの漁師たちの港町です。人物関係はかなり入り組んでいますが、基本は一人の女性を巡っての二人の男性の「嫉妬」と、「オトコ同士の友情」でしょうか。そこにまわりの人間の思惑も加わってとてもダイナミックなプロットが展開されるという、まさに息を呑むような波乱万丈(というか、荒唐無稽)な物語です。もちろんそこでは、ビゼーならではの甘美なメロディがてんこ盛りですが、それに加えてドラマティックなオーケストラの書法も見逃せません。
これが録音されたのは、2017年、フランスのリールです。オペラのステージではなく、コンサート形式での演奏のサラウンド録音です。歌手たちはステージの手前で歌っていますが、合唱がおそらくト書きの指定に従ってバックステージとオンステージとに移動しているのでしょう。そういえば、テノールのソリストも、遠くから歌いながら前に出てくる、という場面もありましたね。
そのテノールのシリル・デュボアが歌う、タンゴに使われた曲、「耳に残るは君の歌声Je crois entendre encore」は、まさにフランス・オペラならではの甘美なビブラートと女声かと思えるようなファルセットがとても魅力的です。期待したソプラノのジュリー・フックスは、とても多彩な声ですがピッチが不安定なのが残念。バリトンのフロリアン・センペイは、ちょっとおとなしすぎかも。もっとパリパリとかみつくような迫力が欲しかったですね(それは「センベイ」)。あとは、合唱が非力。

SACD Artwork © Pentatone Music B.V.

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by jurassic_oyaji | 2018-06-05 23:37 | オペラ | Comments(0)